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悪魔と天使

N「自分の中に悪魔と天使がいて、そいつらがささやきかけてくる、、、
というような事ってのは誰にでも起こる事かと思います。チャネリングとかね、そんな難しい話じゃなくて。ダイエット中だけどこれ食べたい、、、」

悪魔「食べちゃえよぉ~おいしぜぇ~」
天使「ダメよ、ちゃんと目標立てたもの、知ってる、あなたはここで食べちゃうような子じゃないわ」

N「とかなんとかいうやつね、これはそんな、だれにでもある、どこにでもある、珍しい事もないお話でございますよ」


初子「もう駄目だ、もう駄目だ。やってもやっても私に才能なんかないんだ
死にたいマジ死にたい。みんななくなればいいんだ。そうだ!みんないなくなればいいんだ!そうだ!もう嫌だ~!!」

初子「…そうよね、せめて…。せめてあの娘がいなくなればいいんじゃない?そうすれば私が舞台に立てるのよ、そういう物よ。これだけスキルとセンスを磨いてきたのに、万年わき役ってどういう事よ。こんな、出たって出なくたっていいような役。くっそ!」

初子「あの娘が舞台に立てなくなれば、、、、あの娘が舞台にたてなくなれば、、、!?」

悪魔ミュージック【1】IN

悪魔「おうぉう、なかなかいい心構えじゃないかぁ~。ちょっと聞かせてもらったよぉ~」

初子「え?あ?あ~!?やばぁい、、、私悩みすぎてなんか変なもの見えたぁ!!」

悪魔「変なものとか、言うなよ、、、」

初子「あ、そうですよね、そうですよね!失礼しましたごめんなさい!天使さんに向かってそんな言い方しちゃいけないよね」

悪魔「、、、天使!、、、ではない、、、。むしろどうしてそう思った!?
この風体だよ?真っ黒ずくめでこのなんていうか、デスメタルメイクに黒い革パンツにチェーンな感じのインナーに黒マントとか諸々ついてておまけにこの素敵な角がついてて天使?天使なの?」

初子「え?空から降って来て宙に浮いてて羽根があったら、、、天使じゃない!?」

悪魔「雑だね!大分、雑だね!でもそうじゃないのとりあえず!悪魔!覚えて帰ってね!僕悪魔!どうぞよろしく!」

初子「あ、どうも。よろしく、なんか勘違いしちゃってすいません。、、、ってやばくない!?悪魔とかやばくない!?私とり殺されるの!?ごめんなさい!ごめんなさい!なんかごめんなさい!でも私ちょっと呪っただけですよ!そんな事、万人がするじゃないですか!ちょっと、ほんのちょっとです。もうしません!ほんとすいません!」

悪魔「おちつけ!まず落ち着け、私はとり殺したりしない。だいたいの人間が勘違いしているが、私たち悪魔はお前の願いをかなえる為にいるんだよぉ~。それに君にはとても素晴らしい才能がある。賢いんだよ~?僕はそれを見込んで声をかけたんだぁ~」


初子「才能が!?ある、の、、、?私に、、、?」

悪魔「そう~。とても素敵な才能だよぉ~。君は今【あの娘が舞台に立てなくなれば、、、、!?】と言ったね?そう誰もが気づく事じゃない~。君の言う通り、あの娘が舞台に立てなくなっちゃえばいいんだよぉ~。じゃあここで君に一つテストをしよう~。あの娘が舞台に立てなくなるには?どうしたら良いかなぁ?」

初子「風邪、、、?風邪とか引いて熱とか出しちゃえばいいんじゃない?」

悪魔「甘い!それでは発熱しながら必死で舞台にたってしまうんじゃないのかなあの娘は、、、。むしろ頑張った~的な声を~もらったりなどぉ~?
よし、もう一声行こう!君はあの娘を舞台に立たせない為に何が出来るかなぁ?」

初子「私、が出来る事、、、靴に画鋲とか入れて足を怪我したら出れないんじゃないかしら!?」

悪魔「(凄いセンスがない、、、!規模がちっさい!しかもベタだ、、、!そして風邪よりインパクトが落ちている…!でもここは一つ持ち上げてっと)さすがだ!さすがじゃないか!人を呪う才能に満ち溢れている!それではやってみよう、君の夢の為に、、、ね?☆」

初子「私の、夢の為に」

悪魔「そう☆」

初子「じゃあ、よろしくお願いいたします!」

悪魔「うん?」

初子「え?私の願いを叶えてくれるんですよね?呪いの代行?的な?」

悪魔「え?ううん?僕ほら物理的な実態無いからそういうの出来ないよ?」

初子「え?できないの?」

悪魔「うん、そういうんじゃないんだなぁ。なんていうのかなぁ、そう、コンサルティング!?悪事コンサルティングって感じ?うんうん」

初子「あ、なるほど、うん、、、うん~?なんかいまいち納得いきませんけど」

悪魔「ともかくね、最初の一歩が肝心なの。悪事ってね、誰でも出来る事じゃない。でも、君は願ったんだ!彼女よ消えろ!それが才能!君の願いに僕は応えたんだ。さぁ、始めよう?美しい悪事の道を!僕と一緒に一歩ずつ、頑張っていこう!」

初子「はい!わかりました頑張ります!えっと、、、あの、、、お名前うかがっても良いですか?」

悪魔「うん、悪魔だよ?」

初子「あ、いえいえ。犬のぽち、とか、猫のミケとかそういう感じで悪魔の〇〇ってあるでしょう?」

悪魔「なんか例えが著しく気に入らないけど。だから悪魔、僕の名前はア・クマ。アの後に点がついてクマ。これでア・クマ。悪魔のア・クマです」

初子「あ~!クマさん!」

悪魔「あ、それよくない。それやめてもらおうかな?僕がクマさんだとどこからともなくはっつぁんがやって来て、くまさんはっつぁんのくだらない話が始まってろくなことにならない。なんかそんな予感がしてしまうんだよ」

初子「あ、、、、私、、、、初子。初めてに子供の子と書いて、はつ、、、こ」

悪魔「あ!はっつあん!もう!だから!そういうの!もうぉ!」

N「と、そんなわけで。でこぼこコンビ、くまさんはっつあんの【ライバルを陥れて自分がスターダムに立とうプロジェクト】が開始いたしました。才能があるという言葉に目のくらんだ初子は、根がまじめでございますからくまさんの言う通りにプロジェクトを進めにかかります」

初子「よぉし、、、稽古場に忍び込んだぞお~!…っていうかなぜヒトミちゃんはこうして稽古靴を置いていくのかねぇ。だいたいさぁ、そろえて置いていかないじゃん?稽古場を使わせてもらってるって感謝がさ、ないじゃん
なんでそんな人がそういうさぁ、、、」

ヒトミ「はつ、、、こ?」

初子「ひぃいい!!!」

ヒトミ「私台本忘れちゃって、、、」

初子「あ、そうなんだ」

ヒトミ「なにやってるの私の稽古靴握りしめて」

初子「あ、いや、ほら、いまみんなの靴そろえてたの!  みんな置いて帰っちゃうし放り出しちゃうし、、、。ヒトミちゃんもよくないよ~!持って帰ってファブリーズするとか。ちゃんとさ、稽古場綺麗に使おうよ。つかわせてもらってるっていう(ってなんで私説教始めちゃったんだろ)」
   
ヒトミ「、、、そっか、、、そうだよね。そういうとこちゃんと気づいててはっちゃん凄いなって思う。私、自分の事でいっぱいいっぱいで…。今日も、なんか稽古に投げやりになっちゃって。靴も台本も放り出しちゃって。なんか、ちょっと気持ち切り替わった。はっちゃんありがとう!!」

初子「ええ!いや!なんかそんな!うん!頑張ろうね!」


初子「…違う!なんか違う…!そういうんじゃなかったんですごめんなさい…こんなはずでは!」


悪魔ミュージック【2】IN

悪魔「いいのです、失敗は誰にでもあります(剣幕で)でも次はまじめにやってくださいねぇ!こっちも遊びじゃないんでぇ!!」

初子「すいません、、、ところでクマさん今日はどうして上半身だけでお越しなのですか?」

悪魔「それはね、君と周波数が合わなくなっちゃったからだね。話を聞くに、結果、君は善行を積んじゃったからね?最初は君、ドロドロに彼女を呪い始めてたから僕の声が聞こえたんだね。でもほら、なんかこう、良い人っぽく?なっちゃったじゃん?結果論だけどね?うんうん?…で~!!?どうするのぉ~!このままいい人ぶっちゃう~!ぶっちゃうのぉ~!?それなら僕消えちゃうけどぉ~!それに君は願いを叶えられないままなんとなく良い人で終わっていくんだ。彼女の陰に…隠れて…ね?」

初子「いやぁ!!消えないでくださいくまさん!!私まじめに呪います!
まじめに悪の道を進みます! あくのぎょう、悪行に専念致しますからぁ!」

悪魔「よぉし!よく言った!それでは新しいミッションを二人で考えよう。大丈夫、僕が付いているよ、、、」

N「というくまさんの優しい囁きにほっとしながら二人であれやこれやと悪事の相談でございます。そうして次に考え出しましたのが、、、」

初子「こんなことで良いのかなぁ?台本盗んだってコピーしちゃえば手に入るし、さほど痛手とも思わないんだけど。私の能力を考えたらこんなもんだろう。まずはジャブから始めようと言われたら…まぁそうかなぁ…」

初子「まさかそんなうまくいくはずがと思ったら案の定またヒトミちゃん台本忘れてってるし。あの人本当にやる気あるんだろうか…。わ!しっかも順番めちゃくちゃだし…。なんなん、ほんとなんなん…。なんでこんな人がしゅやk」

ヒトミ「あれ?またはっちゃん!?」

初子「ぶふえぇええええ!」

ヒトミ「今日もみんなの後片づけ?」

初子「あ、うん!そうなのぉ~!ほら、こうして台本忘れる人も出てくるし! ってヒトミちゃんのやないかぁ~!…順番、整えといたよ。主役イロイロあるかもしれないけど、だれにでも出来る事じゃないんだよ。そこのとこr」

ヒトミ「そうかも!そうかもしれないけど。それがプレッシャーなんだよ!辞められたらどんなに良いだろうと思う!はっちゃんみたいにお芝居やってても苦しまずにやる方法だってあるのにって思う…。あ、ごめん…勝手なこと言って」

初子「そうか…そうかもしれないね。私も理解が足りなかったかもしれない。こっちこそごめん。でもそれが台本を、こんな風に雑に扱う言い訳にはならないと思うよ。はい、直しておいたから、順番」

N「初子はそう言い終えるとヒトミの胸に押し付けるように台本を渡した」

初子「私が苦しんでないように見えたんだとしたら。いったい彼女はどんなに苦しんでたんだろう。でも実際私は苦しかったよ、苦しかったよクマさん…。私は今度ばかりは本当に、本当に彼女を呪うよ、クマさん」

悪魔ミュージック【3】IN

悪魔「おぅ、そうだな初子。君の心の傷に見合うだけの呪いを明日の夜かけよう」

初子「っていうか、クマさんどこ?」

悪魔「ここだよ、たぶん俺が瞬きしてると見えないな」

初子「はぁああ!いたぁ!!!でも目しかない!目しか見えない!今これまで史上最上級に悪魔に見えます!きめぇえええ!」

悪魔「キモイとか言うな、お前がまた無駄に善行を積んでしまったからこんな事に。台本とかなんでそろえてやっちゃうんだよ!」

初子「それはもう条件反射です!」

悪魔「どうすんだよ、、、」

初子「今度は、本当にやる…明日の夜は本番の前日。衣装に細工して彼女が舞台に立てないように…する。今度は手加減なし」

悪魔「その意気込みを俺も今一度信じよう」

N「そんなわけで初子は一世一代の悪行に手を染めます。衣装に針を仕込んで彼女を傷つけ、且つ、衣装が一瞬にして破けるような仕掛けをかけようと
意気込んで舞台の楽屋へ忍び込んだわけでございます」

初子「今度こそ、、、、」

N「そうして、舞台直前」

ヒトミ「はっちゃん、ありがとう!今回の舞台ではっちゃんに支えてもらって。私色々目が覚めた。もう一度気合入れなおして行ってくる!行ってくるね!」

初子「いってらっしゃい…。頑張って…。応援している…。本当に…。誰よりも」

N「舞台は…無事終わりました。何事もなく。滞りなく。初子の仕掛けは
失敗したのでしょうか?いえ、初子は、結局仕掛ける事すらできなかったのです。」

初子「ごめんねクマさん。私頑張ったの。針もって…衣装に仕込もうと思って…ハサミも持って行った…切り込み入れようと思って。でも、結局さぁ
彼女の衣装がほつれてるの見たら…持ってた針で押さえて縫っちゃって。持ってたハサミで出てる糸切っちゃって。私何一つ役に立たなかった…もう悪事の一つさえ出来ないんだ。やっぱり、才能なんか…悪事でも、芝居でも、無かったんだよ。ただのクズだよ私…」

悪魔ミュージック【4】IN
  

悪魔「なるほどな…。ところではっちゃん、今のお前に俺はどう映っている
   どんな風に見えている」

初子「え??えっえっ???見えないよ!見えないよクマさん!声しか聞こえない!私のせい!?私のせいなの!?ごめん!ごめんよ!…私、クマさんいないと寂しいよ!頑張る、何か、悪事、頑張るから…。そばに…そばにいてよクマ公!!!」

悪魔「いい心がけだぁ。俺はなぁ、人の失敗には肝要だ。失敗こそが妬み、嫉み、欲望の温床だからなぁ。」

悪魔「しかし!これが本当の最後のミッションだ!これ以上善行を積まれたらもう俺の声すら聞こえないだろうからな!今度のミッションは俺が決めてやろう!いいか初子!」

初子「はい!」

悪魔「これからお前は俺と一緒に世界征服をするのだ!お前の色でこの世界を彩るんだ!!この世界をお前のセンスで塗りつぶしてやるんだ!そのためには歌も踊りも学んで一流の舞台人になれ!徹底的にだ!いいか!」

初子「はい!!」

悪魔「そのためにはまず一気に海外へ飛べ!そうだな、手始めにフランスに飛べ!芝居人には教養も必要だ芸術の本場をその目で見て来い!お前なら出来る!」

初子「はい!私行きます!クマさんと一緒なら!ほぁあ!!クマさんの姿が戻って来たぁ!目、上半身、そして全身…!っていうか最初よりむしろバージョンアップしてるぅ!」

悪魔「おうよ、てめぇの腹が決まったからだな」

初子「私行きます!憧れのパリへ!」

M:オーシャンゼリゼIN

N「こうしてクマさんはっつあんの珍道中は、なんとヨーロッパはフランスまで飛んでいったわけです。この後初子は海外公演などをこなし。苦労をしながらも世界に羽ばたいていきました。世界中から愛される初子。悪魔のクマさんの言う通り、彼女の世界征服大成功です。さて、悪魔のクマさん。
果たして彼は本当に悪魔だったのでしょうか?その答えはもしかすると…
神さえもあずかり知らぬことかもしれません。めでたし、めでたし。」

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