見出し画像

「この町いいな」は、人生とともに移りゆく。

移住。なにか一大決心をしないと行動に移せないもの。そんなイメージがある気がします。そのイメージは、いつのまにか「移住=“失敗できないもの”」になってしまう。

他でもない僕が、そう思っていました。そのイメージから、本当の意味で自由になったとはまだ言えません。でも、少しずつ。「暮らす場所探しも、試行錯誤していいものなのかもしれない」と思える余地が増えてきました。

傍から見たら“失敗”だと捉えられそうなことでも、そこから得たもので新たに考えたことがある。そんな思考を残してみたいと思います。

初めての移住

2022年3月、僕たち夫婦は初めての移住を経験しました。埼玉県草加市(東京に15分くらいで出れる郊外都市)で生活をしていた僕たちは、岐阜県は飛騨市に移住することに。

きっかけは、飛騨の素敵な企業さんと知り合えたこと。元々、「東京はなんだか息苦しいよね」と思っていたふたりだったので、地方移住には前向き。その企業さんも良い人たちで、「ここで働きたい」と思い、移住を決断しました。

飛騨の地で、新しい生活を始めるんだ…!理想の暮らしをつくっていくんだ…!

そう意気込んでいたものの、数ヶ月で想いはポッキリと折れてしまうことになります。

暮らしを作る余白がなかった。

折れてしまった理由はいくつかあるのですが、大きなところでいうと「暮らしに対して受け身だったから」だと思っています。

移住したら、生活が変わる。そんなことはありません。暮らしは自分で作っていかないといけないし、自身の手でつながりは広げていかないといけない。動かないと、なにも変わらないんですよね。

けれど、僕は新しい仕事に順応することで精一杯。なかなか動くこともできず、結局は平日5日間働いて、休日は身体を休めるという、いままでと変わらない暮らしぶり。

あれ、畑とかしたかったんじゃなかったっけ…もっと人とのつながりが欲しかったんじゃなかったっけ…

そう思うものの、身体は動かない。これはもちろん、働き方と自分の望む暮らし方が合っていなかった、というのも大きいです。だからこそ、暮らしと向き合って動くことができなかった。

結局、働き方の折り合いも付かなくなってしまって、離れることに。“働く”が端緒だった移住なのに、その“働く”がなくなってしまった。飛騨にいる意味がなくなった瞬間でした。

第二フェーズ

そんな“失敗”のような経験をした僕たちですが、実は先日2回目の移住をしました。いまは、長野県佐久市に住んでいます。佐久に決めた理由はいくつかあるのですが、飛騨での反省を経て、「暮らし」にフォーカスした意思決定ができたと思っています。

まずは、畑。佐久には「コミュニティ農園」を運営している人がいて、希望者には畑のやり方を教えてくれるとのこと。この農園の人と知り合えたことは大きく、農ある暮らしの一歩目として良いのでは…?と思えたんです。

ふたつめは、チャレンジできる場所がいくつかあること。例えば日替わりカフェの店長を募集していたり。東京に出やすい場所なので、知人のイベントに顔を出すことができるようになったり。「やってみたい」がいくつかありつつも、ビビリな僕たちなので、そろりそろりと足を前にすすめる環境があるのかも、と感じたことは大きかったかもしれません。

…などなど。前回と比べると、今回は「暮らし」に根付いた選択。もちろん、この意思決定が芽吹くのは数ヶ月、数年後なので、様子見の時期ではありますが、いまのところ移住して良かったと思っています。

「この町いいな」は移りゆくもの

前段で、「一歩目」という言葉を書きました。あくまでも一歩目として良さそうな町を選んだだけで、二歩目、三歩目をどの町で踏み出すかは決めていないんです。

移住って、その町に骨をうずめる覚悟、みたいなイメージがあるかもしれません。でもきっと。人生のフェーズによって、町に求めるものは変わるのだから。何度も何度も、住む場所を変えてもいいのかもしれません。

「この町いいな」を考えることは、「自分がどう生きたいのか」を考えること。

望む暮らしだって変わるし、働き方だって変わるし、子供が生まれたら生活自体も変わるし。人生の移り変わりとともに、「この町いいな」も移りゆくのだと思います。

言葉にすると当たり前のこと。でも僕にとっては、2度の移住を経て気付いたこと、

この気付きを言語化できてから、少し肩の力が抜けたような気がします。移りゆく「この町いいな」を、人生の節目節目で楽しみながら、漂うように生きていけたら。

雄大な浅間山を眺めながら、心からそう思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 あなたが感じたことを、他の人とも分かち合いたいと思ってくださったら、シェアいただけるととっても嬉しいです。 サポートは、新たな本との出会いに使わせていただきます。