見出し画像

【短編小説】 回想 巨乳 妊娠 薬草


 とあるテーマパークのトイレ前。
 高校生らしき男子が、目の前を歩く女性を暫く目で追い、こう友人に大声で話しました。
 「俺さあ、努力しない人って嫌いなんだよね。」
 目で追っていた女性は肥満体型でした。
 《肥満 = 努力を怠っている。》
 という物差しが、彼の頭に中にはあるようです。
 誰しもが一度は罹る、中二病です。
 自分の基準に合わない事象は、何かしらの不足不備不十分で起きるとでも思ってたのでしょうか。

 その男子と同じ様な物差しを、24歳の俺は持っていました。
 そう、、、、中二病罹患者だったと思います。
 今でいう、ルッキズムの症状なのではと思います。
 (使い方が正しいのか間違っているのかわかりません。お許しください。)

 20歳で就職した会社の、東京足立区にある営業所に俺は、勤務していました。
 営業所には所長や先輩所員、同年代の所員、事務員合わせて7名いました。
 事務員さんはほぼ2年毎に入れ替わり、24歳頃には茨木県から毎日通う1歳下の女の子でした。
 彼女は、体形や髪型は森公美子さん(オペラ歌手)、顔は藤田ニコルちゃん(当時にはいませんでしたが)。喋りは思ったことをすぐ口にする毒舌家。
 良く先輩所員と衝突してました。「生意気な事、言うな!」「何偉そうに!」
 俺とは年も同じくらいだし、俺の話す事にもコロコロ、キャッキャッ、ガハハハと笑ってくれるところが嬉しくて、仲良くして貰っていました。
 仲良くして貰っていたと言っても、恋愛にはなりません。もちろんHな事にもなりません。

 そうなんです。当時の私は中二病に罹患していて、スレンダー、ショートカット、仕事の出来る女性が理想だったのです。
 目の前に好意を抱いてくれる人が居ても、理想の女性が現れれば捨てる事になる。だとしたら手は出すべきでは無いと思っていて。
 何者にもなっていない、ビッグにもなれそうもない、途轍もなく勘違いしていた、、、、そんな一山いくらの男だったにも拘らず、誘いもしませんでした。
 新入社員歓迎会、暑気払い、営業成績目標達成祝賀会と未達反省会、忘年会、新年会、花見、、、、営業所で飲み会がある度に彼女は参加します。
 「帰るの面倒臭い!、○○君、泊めてぇ~」と、初っ端から、積極的でした。
 「休みの日、何してんの?、、、自分でカイてばっかりじゃダメじゃん。」と、宴の席で発言する彼女に、笑って「うるせえわ。ほっとけ。」と返していました。
 他の所員からは「くっついちゃえよ。あのオッパイ、良いじゃん。」と背中は押されます。「良いすよねえ、あれだけのもんて滅多にないすよね。」と、笑っていました。
 ある時、所長から朝礼で、、
 「○○さんは、〇月で退社します。結婚されます。お腹には3か月のお子さんもいます。」
 驚きました。ショックでした。何かを盗られた感があります。自分のモノじゃねえのに、、、。 
 「良かったじゃん、お嫁にして貰って。」と、昼の休憩時間に彼女に祝辞を述べました。
 「…….羨ましいじゃろ、悔しいじゃろ、、、、エへへへ。」と、少し睨まれた気がした後、そう答えてくれました。

 それから一月後に飲み会がありました。彼女も参加しています。
 話題は彼女の旦那さんになる人の話、馴れ初め、決断した理由、、、
 「自動車整備士で、10歳上で、前の車を修理に出して、、、ドライブに誘われて、彼の車GTRだったの。300万位するって話してて、、、、そしたら子供が出来ちゃってさ。
  彼に相談したら、産んでほしいって、、、、でも私まだ若いし、育てられるかどうか分かんないって言ったら、一人で育てるんじゃない。俺も育てるんだってゆうからさ、、、
  とかなんとか言っちゃって結局さあ、仕事が忙しいとか稼いでるのは俺だって言うに決まってるしね、、、、めんどくさがりになるんだよね、男ってさ、、、」
 周りの所員は、「楽しちゃえよ。」「旦那も子供とおんなじなんだから。」とか慰めやら煽てやら、彼女もそれに乗っていつもの様に下ネタ連発してました。
 「彼ったら直ぐ上にならせるのよ。ガニ股するのきっついし、スクワットは膝に悪いしさあ、バックの時、お尻が邪魔で届かへんって失礼な事を言うのよぉ~、ちゃんとお尻広げて剥けよって話よねぇ~。」
 いつもの様に、大爆笑の宴ではあったのです。
 ただ一つ違ったのは、
 「○○君、今夜は泊まるよ。明日さあ、家まで送ってってよ。」
 と、お開き後に俺の腕に彼女が絡んできて、無理やり引っ張られて夜の闇に消えた事でした。

 俺のアパートに一緒に帰った彼女は、途中のコンビニで買ったビールを開け「プっファ~、、、」と一口。
 おもむろにハンドバックから煙草を取り出し「……ふ~、、、」と一服。
 「みんなの前でさ、身重でお酒ガンガン飲めないじゃん。煙草も体に悪いだ、お腹の子に良くないだってうるせえし、、、」
 俺は既にしこたま飲んでいて、何を言っていいか分からないし、「好きにすれば良いじゃん。」と返すくらいしか出来ませんでした。
 それからは彼女は彼氏の愚痴ばっかり話していました。
 【俺にどうしろと、、、、】とは思いながら、「そうかあ、、そうだよね、、、、勝手だよな、、、、」と適当に相槌を打っていました。
 会話が途切れる。手持ちぶたさも出る。間が空く。気まずくなる。

 「こんなんあるだけどさ。」
 俺は得意先の一つから貰った、乾燥させた植物の葉を細かく切り刻み、煙草状にしてあるものを、テレビの下にある箱の中から取り出しました。
 遊技業や娯楽産業、夕方から深夜まで営業している飲食店、美しい女性が接待してくれる密着型店舗とか得意先には、それらしいところが多数ありました。
 その中の一人から「楽しくなるものあるよ。譲ってあげても良いよ。」と手渡されたものが、一本残っていたのでした。
 もちろん謝礼は渡しました。その額は内緒です。
 「何?、煙草?、、、、フィルターないじゃん、、、、へえ~、、、」彼女の目が輝いています。

 二人で回し飲みしました。
 妊娠している女性には良くないかもしれないとは思いましたが、興味津々の笑顔の彼女を見て、自分を納得させた気がします。
 って言うか、その頃の俺には善悪の判断や正邪、自分を律する高尚な精神などまだまだ出来てはいなかったのだと思います。興味や好奇心が暴走する年齢だったのです。酔っ払ってはいたし、、、、。
 「きゃはははっ、、、」
 「ウワハハハ、、、」
 「そいでさ、、、ガハハハ、、、」
 「何それ、、ブハハハハハ。」
 笑いが止まりません。何が可笑しいのか分かりません。何も考えられなくなってきてます。
 「ほらほら、、、半勃ちっ。ガハハハハハハハ。」
 「アハハハハ、、、爺さんみたい。キャハハハ。」
 金属製のパイプ(鉛筆キャップの細い方を切ったもの)で、最後まで嗜んだ二人はベッドに横たわり、暫くの間、笑っていました。
 「なあ、、、、乳、揉んで良い?、ハハハハ。」
 「ヤダあ~、、、フフフフ。」
 俺は彼女のシャツを捲り上げていました。ブラも上にズリ上げていました。両手で揉みながらしゃぶっていました。
 「やっぱしでけぇ〜や、アハハハ。」
 「キャハハハハ、、、くすぐったぁ~い。」
 スカートも捲り上げました。パンツをズリ下げました。指を添えます。動かしてみます。顔を近づけます。
 「くっせぇ~、、、、たらこスパの匂いだっ、ハハハハハ。」舐めまわします。
 俺はズボンを脱ぎ、パンツも脱ぎました。
 「あっ勃ってねえ、ふにゃふにゃだ~、、、役に立たねえ、、、、、、ギャハハハハ。」
彼女は咥えてくれたものの、、、、
 「なんでなの~、、、ワハハ、あははは。」
 
 結局それ以上の事にはならず、二人とも寝落ちしました。

 翌日、近くのロイヤルホストで食事をして彼女を送りました。
 自分の車は持っていました。その日は日曜日でした。国道を茨木方面へ走らせます。
 車中の会話は弾みません。
 『幸せになれよ。』、
 『結婚って、辛抱だって誰か言ってた。』、
 『どんな子が生まれるのかなぁ~、お前の子なら、絶対可愛いよなぁ~。』
 そんな事、言えません。そんな”褒めて煽ててオーラ”を、彼女は出していない様に思えたのです。
 「もしさあ、、、俺と付き合ってたら、、、、、どうなってたかな。」
 『そんな事、こんな時聞くなよ。』って声が聞こえたような気がしました。
 「ダメだったんじゃないの?、○○君って何したいのか言わないし、分からないし。」
 「そうだな、、、自分でも分かんねえし。」
 彼女はしばらく、黙ったまま窓の外を見ていました。
 「あ~あ、、、上手く行かないねえ、人生って。」
 その言葉に何の反応も出来なかった、俺でした。

 それから運転中俺は、昨日からの彼女の行動やそれに纏わる事を考えていました。
  彼女は、この結婚が嬉しくないんだろうか、、、好きな人と一緒になれるのは嬉しい事じゃ無いんだろうか、、、彼は好きな人じゃないのかもしれないな。
  子供がお腹に居るというのに、お酒は飲みたいから飲むんだろうか、煙草も吸いたいから吸うのだろうか、あの葉っぱも良くないものと分かっていて、進んで嗜んだのは何故だろう。
  乳を揉み、アソコを舐めまわす俺を拒否しなかったのは、、、、部屋に泊まったからなのか、、、それくらいじゃお腹の子に影響は無いと思ったのかな。
  そもそも外泊する事、言ってきたのだろうか、黙ってきたんだろうか、、、

 お腹の子の父親、彼との結婚を無かった事にしたいって言う気持でも、、、あったんだろうか。

 分からない。彼女の考えている事が分かりません。
 聞けば話してくれるのだろうか、、、、話してくれない気がしたのです。
 
 おんなの気持ちが分からない。

 分かったとしても、、、、その時の俺は、彼女に何もしてあげられなかったと思います。

 なんせ、身分不相応な高望みばかり考えている、中二病罹患者だったのですから。
 別な選択肢を選んでいたら、、、と思う時もあります。
 でも、、、、幸せな結末が予想、想像、妄想できませんでした。


 あ、そうそう。葉っぱを乾燥した煙草みたいなものは、あれから二度と手を出しませんでした。
 何故なら、、、、役に立たない、勃たないと思ったからでした。


 (これはあくまでも、短編小説です。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?