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広島協奏曲 VOL.3 もののふの妻 (11) ストーカー

  ストーカー

 カウンター業を続けているある日、視線を感じる。
 まわりを見渡し、その視線の主が警備員だと知る。
 背が高く、整った顔立ち。なによりも制服姿。【悪くは無いけど、、、いい人かどうか、、、試してみる価値あり?、、、】
 「あの人、、、あの警備員、、、新しい人?」同じカウンターにいる同僚に聞いた。
 「え、どれ、、、、あ~、あの人。ううん、先月まで第一ターミナルだったらしいよ。」顔見知りの様な返事。
 「へ~、詳しいのね。」少し、嫉妬した。【何で知ってんの?】
 「うん、半年くらい前にね、合コンしたのよ。3対3で、、、高城さん、誘ったけど用事があるって言ってた日だよ。」
 「あ~そう。気が落ち込んでた時ね、、、ふ~ん。」AVを引退しようかとしていた頃だった。
 「またセッティングしようか?、、、話しても良いよ。」
 「……うん、頼もうかな、、、誰かと、男の人と喋りたくなって来てるし、、、」
 「分かった。また、連絡するね。高城さんて、美形でモテそうだけど、浮いた噂って無いよね~、、、良いんじゃない。」
 職場での評価は、身持ちが堅いで通っているらしい。実態を知られれば、180度変わると思うが。

 その男は、金藤 健(かねとう たける)と言った。
 セッティングして貰った飲み会の最中は、それぞれが違う相手と盛り上がっていた。
 一組が連れだって席を立つ。残り二組、それぞれ席を立ち、それぞれが二次会へと行った。
 由里亜と健は、その夜は接点なしに終わった。
 翌日からも視線は感じる。健の目当ては昨日の持ち帰り相手の同僚かと思ったが、今日はその同僚は違うシフト。
 視界に入る健の顔をちらちらと見る。
 左の口角を上げ、笑っているように見える。なにか違和感を感じる。【何?、、、】

 数日後、仕事終わりの従業員通用口に金藤健の姿を認めた。
 「お疲れ様。」知らない仲では無くなった由里亜は、愛想笑いの笑みを添えて挨拶をする。
 「あ、高城さん。ちょっと良いですか?」健が呼びとめる。
 「……何でしょう?」顎を引き、少し見上げるように答える。昼間の違和感が、警戒を呼ぶ。
 「晩飯、行きませんか?」やはり少し笑みを浮かべてる。左の口角が上がっている。癖なのかもしれない。
 「……良いですよ。でも、明日もあるので、遅くまでは無理です。」健の笑みに何かあるのかも、、、確かめておきたい。という気持ちがそう返事をさせた。

 知っている店があるからと、三軒茶屋まで来た。創作料理のお店に入る。
 薄暗い店内。テーブルの上からのスポットライトだけが明るい。椅子に座ると、ようやく相手の顔が分かる程度。
 料理は健に任せる。由里亜は健の真意を聞き出そうと、話を始める。
 「先日はありがとうございました。あれから○○さんと二次会へでも行かれたんですか?」
 「ん?、、あ~○○さんね、、、いえ、行きませんでした。また、今度って事で、、、」
 「え~、、、金藤さん、○○さんと良くお似合いでしたよ。てっきり上手く行くって、思ってました。私、、、」
 「俺、付き合いとか結婚とか理想があって、それに会わない人とは深入りしない様にって思ってるもんで、、、」
 【ん?何言ってんの、、、深入りって、、、何を言ってるの、この人。】
 「どんな理想ですか?聞いてみたいです。」【理想と○○さんと、違う所って、、、何?】
 「まあ、それは良いじゃないですか、、、楽しみましょうよ。食事を、、、、」笑みを浮かべてる。左の口角が上がっている。

 学生時代の事、仕事の事、将来の夢などを話した。
 趣味の話になり、健の趣味を聞いた。
 「動画を取り、編集してアップしてるんです。で、それを販売してて、、、」健、下を向いてるが笑ってる。
 「どう言った動画ですか?今、流行りのソロキャンプとかですか?」そう言った途端、嫌な予感がした。
 「……高城さんも出演されませんか?俺の動画に、、、是非、、、」
 「出演、、、って、、、」【もしかして、、、、、ナンパ、ハメ撮り、、、中出し、、、?】
 「お礼はしますよ。AV一本分にはなりませんが、、、、クリスタルさん。」金藤健の顔が満面の笑みに変わった。
 「……」【何で、、、、、、何で、知っとるん?、、、、DVDを見た?買った?、、、関係者?】

 ゾッとした。
 違和感の正体が分かった。私の芸名を知っている。なおかつ、趣味がハメ撮り、個人投稿の販売とは、、、。

 ストーカー特有の危なさが、気持ち悪い。

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