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私的逸品 #11 岡本太郎の『顔のグラス』

本当に気に入った私的逸品の第11弾。「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」のCMでも有名なキリンのロバートブラウンのノベルティ、岡本太郎の『顔のグラス』です。

私的逸品 #8 海洋堂のソフビフィギュア『太陽の塔』でも紹介の通り私は岡本太郎が好きです。『顔のグラス』はそんな岡本太郎好きにはたまらないアイテム。上野の東京都美術館で開催されていた岡本太郎展で現物を観て、どうしても欲しくなりオークションサイトで購入。

キリンビールがアメリカのシーグラム社と提携してキリン・シーグラムを設立。『顔のグラス』は同社のウイスキーのブランド、ロバートブラウンのノベルティとして1976年頃に配布されていたようです。企業とアーティストとのコラボ商品やノベルティは数多くありますがそうした中でも『顔のグラス』はトップレベルで高い完成度ではないかと個人的には思っています。岡本太郎氏の「顔は瞬間瞬間の発見だ。どんなモノにも顔がある。グラスの底に顔があったて良いじゃないか!」の言葉の通りグラスの底には太郎氏の作品の特徴でもある顔のモチーフが入っています。透明なグラスの底の部分に配置することでグラス全体のシルエットはシンプルにしながら『顔』の強い存在感があります。存在感のバランスが絶妙です。『顔』の部分は凹凸があり精巧なレリーフになっています。よく見ると彫り込まれた部分にはザラザラしたテクスチャがあったりして妥協のない作り込みが伝わってきます。

『顔のグラス』には初代と2代目の2種類があり、両方とも手に入れることができました。グラスの基本的な形状は一緒ですが『顔』が異なります。初代のグラスは直線的で大きな鼻と吊目が特徴的、ウルトラマンのようにも見えます。何となくですが男性的なイメージを感じます。『太陽の塔』の背中部分にある過去を表す顔「黒い太陽」がモチーフだと言われています。

2代目はグニョグニョとした有機的な形状の鼻と長いまつげ、大きな瞳が特徴です。こちらは何となく女性的。『太陽の塔』の腹部分にある現在を表す顔「太陽の顔」がモチーフになっているらしいです。グラスで飲み物を飲んだ際に傾けるとグラスの底の顔と向き合う構図になる仕掛けも面白いです。太郎氏は「触れて感じられるものこそ芸術だ!」とも述べています。生活の中で使い、観て、触れることのできるグラスは岡本太郎氏の芸術の哲学を良く感じられるのではないかと思います。

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