びじゅチューン! 私的極小ネタ図鑑 #26
〈文字顔〉の系譜
「アルノルフィーニ夫妻のベルト防衛戦」の歌詞係について
一昨日(2021,7,26)、今月の「びじゅチューン!」新作として発表された「アルノルフィーニ夫妻のベルト防衛戦」の歌詞係は、西洋美術の作品の作者として、初めて顔が文字で表現された!
歌詞係の顔については、下の1万字を超える狂気の自由研究記事に詳しいのだけれど、
画面右下で歌詞をカードで提示する歌詞係は、元の美術品の作者が務めることが多かった。
そして西洋美術の場合、作者には肖像画があるためだろう、みんなちゃんと顔が描かれていたのだが・・・・
↑ モナ・リザと歌詞係の作者 ダ・ヴィンチ
この作品で、初めて歌詞係の顔がこうである↓
そう、顔が名前をつづった文字で表現されている。
今までこの手法は、すべて日本の、作者の肖像が残されていない美術作品を元にした楽曲だけだった。
そして、彼らは日本人ゆえ顔は漢字表記。
↑「アイネクライネ唐獅子ムジーク」「ツボのツボマッサージ師」「夕暮れ、浄土堂ショー」「松林ズ」 ほかにも多数あり。
そしてその流れを受け継いで、日本の現代のクラブのスタッフの顔がアルファベット表記されている例が一つあるだけだった(「電気さえあれば」)
が、とうとう、ヤン・ファン・エイク、フランドル人だけにアルファベットの顔で登場だ。
Wikipediaでヤン・ファン・エイクを見ると、肖像として一応この画像が出るのだけれど、
『ターバンの男の肖像』 (ヤン・ファン・エイクの自画像の可能性がある)
と解説があり、本人と確定できないので、文字での登場であろう。
でも、ターバンとか鼻の感じとかだいぶ引っ張られているw
曲の2番では、元の作品の奥、画面中央にかけられた鏡によって不思議な世界が繰り広げられるのだけれど、
その鏡には、作品には描かれていない人物が映っており、鏡の上の壁には「ヤン・ファン・エイクここにありき 1434年」と書かれているのだそうだ(拡大してどうぞ)。
番組の井上涼氏による解説だと、画家本人が登場する先駆け的作品なのだとか。(文字での登場?それとも鏡の中の人物もヤン・ファン・エイク?)
自己顕示欲は強いみたいですね、ヤン・ファン・エイク。
でもはっきりと自画像と分かる作品は残っていない・・・
今ふと思いついて【西洋画 最古の自画像】で検索をかけたところ
フーケはミニアチュールとして1450年に自画像を描いた。 ヤン・ファン・エイクの1433年に描いた『ターバンの男の肖像』が自画像ではないとすれば、現存する西洋美術の絵画で最古の自画像ということになる。
Wikipediaの概要に出てきた(太字は読む猫による)。
どうやらそれまで自画像を描くという文化自体がなかったことになる。
惜しい、ヤン・ファン・エイク!
「ターバンの男の肖像」をはっきり〈オレ様〉としておけば!!!
作品の鏡の中に映り込んだ人物も、その上の言葉と合わせて考えるとやはりヤン・ファン・エイクでは?
一つの根拠として、歌詞係の登場のしかたに注目してみよう。
まず、もう一度動画で最初の歌詞係登場シーンをご覧になってほしい↓
動画で見るとなんだかくねくね変な動きをしているのだけれど、それを静止画でコマ割りしてみると・・・
なんと歌詞カードの中から本人登場。
貞子?!
これは曲の2番のアニメーションでミセス・アルノルフィーニが鏡の中に入ってしまい世界の境界線があいまいになるように、逆に作者は鏡の中から出てきていることを暗示しているのでは?
穿ちすぎかw
でもこの登場の仕方は「びじゅチューン!」の中でもかなり独特だから、あながち妄想とまで言い切れないと思う。
するとやっぱり、鏡に描き込まれた人物は作者ヤン・ファン・エイクと考えていいのではないか。
ともあれここまで思わせぶりにしといて、はっきりとした自画像を残しそこね西洋最古の自画像作者の称号も得そこなった、ちょっと残念な画家、ヤン・ファン・エイク。(歌詞係のくねくねした動きは、歌詞カードが変わるたびにずっと繰り返される。ご苦労様なことである)
さらに個人的に気になるのは、鏡の上の文字の日本語訳「ここにありき」の「き」だ。
「き」は過去を表す助動詞、しかも自分が直接体験した過去を表す助動詞だ。
とすると、「今オレ様はここにいるぜ」ではなく「オレはかつてこの部屋にいたんだぜ(そしてこの絵を描いてやったんだぜぇ)」となる。若干スギちゃんが入ってしまった。
作品が仕上がって、後の世にまで作品も残しオレ様の存在をも伝える気満々、「ここにあり!」という現在形の登場宣言より自己顕示欲の強さを感じるw
ちなみにミセス・アルノルフィーニと対戦するクマは「民衆を温泉に導く自由の女神」や「鮭ミラーボール」に登場しており、レフェリーは「紅白梅図屏風グラフ」の梅あゆみである。
私的極小ネタ図鑑のマイルール
・DVDBOOKの中で井上さんが触れられていることは取り上げない。解説はDVDBOOKも参考にする。
・登場人物は他の作品にも様々出るので、基本的には取り上げない。本当に一瞬のチラリ登場は、うれしすぎて取り上げるかもしれない。
・すんごくみみっちいどうでもいいことを中心に取り上げる。
びじゅチューン! 全作品はこちら↓
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