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保護猫《さん》とウチの《まる》 ⑤

絶対女王《まる》とは の巻


前回までは こちらから
その① その② その③ その④

不妊手術と、ウィルス性の病気の有無の確認を無事終え、先住女王《まる》との同居が可能になった保護猫《さん》。

しかし彼の道のりは遠い。迎え撃つ女王《まる》が強敵だからだ。
いったい陛下はいかなる猫であらせられるか?

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私もオットも、広い田舎の実家でそれぞれがのびのび猫を飼ってきた。が、結婚してから夫婦で猫を、しかも室内飼いするのは初めてだ。
しかしその条件がなくても、まるは我々二人どちらから見ても、「変わった猫」だった。

甘えたい気持ちはあるけれど甘えるのが下手。うれしい気持ちを表すのが下手。撫でられるより自分から毛づくろい?に行くタイプ。

くつろぐまるをなでる。いきなり頭を触ることを嫌がるので、手の匂いをかがせ、ふた撫でくらいは目を細めてくれる。けれどもまるは、撫でられるより自分から親愛の情を示したがる。

2回ぐらい目を細めて撫でられた後、私の手をガシッと前足で抱え、激しくぺろぺろする。ざりざりざりざり・・・・

手を全面的にまるにゆだね、したいようにさせておく。すると気分が高まって、カプカプと甘噛みを始める。そしてだんだん激しくぎうぅぅ・・痛い痛いイタたたた…。
まるに言う、「ガブンはいらないー」。するとガブンをやめてぺろぺろに戻る。(ちなみによく顔もざりざりしてくれるが、これは結構痛いぜまるよ、うれしいけれど)

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甘えたくないわけではないが、人の手に自分を委ねることができない。自ら行く!そして途中から〈まるの牙:攻撃力500〉が発動する。
もちろん本気ではない、本人は「甘噛み」のつもりだ。↑ホントかよ?

その④で書いたが、獣医さんから「激しい猫」だとレッテルを貼られたまる。私はまるは愛情を受けるのは下手だけれど愛情をたっぷり持っていて、その表現方法も激しい彼女なりのものなのだ、と思っている。

それ以外にも、滅多に喉を鳴らさなかったり猫の踏みふみができなかったりと、「うれしい」の表現がとても下手だ。(踏みふみができない子は珍しくはないけれど)。

ちなみに最近まで野良猫として大きくなった《さん》は、すぐゴロゴロいうしふわふわ毛布の上で熱心に踏みふみするし、お腹だって撫でさせてくれる。

今までにない謎猫まる。結論から言うと、まるは幼い頃から、猫とも人とも関わり方が中途半端だったのだと思う。

成育歴を簡単に書く。

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まるは生後1カ月ほどで親元を離れてしまったらしい。お腹を空かせヨロヨロだったところを人に餌とダンボールの家をもらい、戸外で他の大きな野良猫と競合しながらそれを守り通したのだと思う。
餌と家をくれた店舗(夜は別にある自宅に帰ってしまう)は我々の古くからの友人の店で、まるをずっと気にかけてくれたから小さな子猫でも生きてこられたのだろう。友人たちや店のお客さんにも時間がある時にはかわいがられていた。

しかし、基本は戸外で生きる野良猫。まだ親元を離れるには早すぎる時期に母親や兄弟猫とのきずなを失くし、かといって安心して心を預けられる特別な人との出会いもない状態で数ヶ月を過ごし、彼女は我が家にやってきた。

オットが友人の店に行き、一目惚れしたのだ。
友人は寒さに向かう時期だったからとても安心したし喜んでくれた。引き取りに行って見た彼女のダンボールの家は丁寧に作られ、きちんとした餌が清潔に保管され、できる限りまるを大切にしていたことが見て取れた。

大事にしなければ・・・

決意を固め、我々はデレデレで目をハートにしながら家でごはんをあげてみた。するとそのかわいい小さなネコチャンは、「うなり食い」をした!うれしさのあまりの「うにゃにゃにゃ」という鳴き食いではない。
ガウーガウーと自分の餌に近寄る者を威嚇するためうなりながらご飯を食べている。
そしてついでに、我々夫婦のパスタの匂いを嗅いで、ガウーとうなったw

これはあんたのマンマじゃないよ 苦笑

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生後1カ月で母親の手を離れ、かといって人間との絆も中途半端だったまる。厳しい条件を2カ月ほど、小さな体で生き抜いてきたことがわかるご飯の食べ方だった。

まるは獣医さんに診てもらって生後3カ月ぐらいだということと、「激しい猫」だという診断をいただいたのだった。

ついでに言うと、前にもちょっと書いたが耳の中は耳ダニで真っ黒、センセーに洗浄してもらい、ノミもお腹の虫もいたから退治してもらい、今でも「ノミ・ダニ・ムシの三重苦の伝説」として語り継がれている。

見た目はものすごくかわいい美猫だが、苦労人?であり、愛玩には向かない難しい猫なのだ。

ご飯のたびにうなり食いをするまるを見て、さぞかし大人の猫からも厳しい目にあってきたのだろう、と脳内で勝手なまるのストーリーを作っていたのだが、もらってから半年ほどたった5月の晴れた日に初めてまるを庭に出して遊ばせていた時のことだ。

お隣のキジトラちゃんがやって来て、小さなまるは彼女を発見し、しっぽをピンと立てて無邪気に嬉しそうに駆け寄っっていった。

あれ?大人の猫にも可愛がられたりしてたのかな?と意外な思いで見ていると・・・

・・・まるはキジトラちゃんに思いきり怒られた。シャァァァー、無礼者!!

!!

全身の毛をぼふぼふに逆立てて、まるは必死の形相で駆け戻った。
その日以来、まるは他のどんな猫も、絶対嫌い、な猫になった。
まぁ、やはり生まれ持っての性格や生育歴が大きいと思うのだけれど。

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実はお隣のキジトラちゃんも絶対女王気質で、散歩の途中に「あそぼ」と毎日寄ってくる近所の柴犬君の鼻面に本気の猫パンチを炸裂させたりして、まるの師匠、というか現在のまるの激しい気性を完成させてくれた存在だw

お隣のキジトラ女王によって完成された「何もかも絶対イヤ、特に他の猫の存在は絶対許さん」という《まる》

対するは野良ながら、猫社会で円満な社会性を身に付けたジェントル&マイルドなドラ猫《さん》

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いよいよケージなしでの同居が始まる・・・


続きます


🐾 🐾 🐾 🐾 🐾

ここからは余談

実はまるが来てから8年ほどの間に、私は3回ほど大きく取り乱して泣きわめいたことがある。
その時、まるは普段絶対しないことをした。

最初の時まだ小さかったまるは、ベッドに突っ伏して泣く私の背中に乗り、にゃーにゃー鳴きながらパーカーのフードや袖をくわえて引っ張ったり、前足で髪の毛を触ったり、ずっと私の周りを何とかしようとウロウロしていた。後の2回もまったく同じ。

・・・もちろんオットも心配してくれた。そしてまるがそんなふうにしてくれるのに、いつまでも取り乱してはいられない。だんだん心に渦巻いていた様々なことよりも、背中に乗るまるの感触や動作に気持ちが向いて、私は我に返ることができた。

オットに照れながらゴメンと謝り、まるにも「心配かけてごめんね」と抱き上げて思いきり頬ずりをした。もうその時にはまるは、心底迷惑そうにしていたけれど。

オットは私の心に抱える苦しみを知っているから、取り乱したときにその気持ちに寄り添ってくれる。(なんでそうなったかはちょっとずれて理解することが多いので、「ちゃうねん、今泣いているのはそういうワケやない」と、急に関西弁で内心思うのだけれどそんなことはどうでもいい。私が悲しみ苦しんでいる、ということに寄り添ってくれることがありがたい。

ましてや人間でもない猫のまるが、私の苦しみにあんな反応をするとは思わなかった。
自分より何倍も大きなイキモノが泣きわめいている。普通なら恐怖を覚えたりパニックになったりするものではないのか。

それなのに果敢に、その大きなイキモノの背中に乗り、どうしたしっかりしろとでも言うように体のあちこちを引っ張ったりさすったりしてみる。

これを尊いと言わずして何というのだろうか。(もちろんオットの気持ちも尊い笑)

こんな小さな生き物が、たった1匹で、全く違う種の大きなイキモノたちと一つ家の中、互いに気持ちを通わせながら暮らしているなんて、奇跡としか言いようがない、と、私は思う。

私はもうあまり取り乱したりしない。
歳月の癒しもある。まるに心配をかけないように感情の爆発をセーブできるようになったことも大きな理由だろう。

で、今時々私は、まるに構ってほしくてまるの前でウソ泣きをしてみることがある。
しかし女王陛下は一切我関せず、冷たい目でこちらを見ながら悠然と毛づくろいなどをなさっているのであった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただきありがとうございます。楽しんでいただけたなら嬉しいです😆サポート、本と猫に使えたらいいなぁ、と思っています。もしよければよろしくお願いします❗️