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保護猫《さん》とウチの《まる》 ④

《さん》去勢手術を受ける の巻

その① その② その③は ここから


7月末、素直で抱かれるままにウチの子としてケージに収まった《さん》。

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心配事は二つ。病気と、可能性は低いがよその飼い猫かもしれないことだ。

保護した日は日曜日だったので、翌月曜日、さっそくまるかかりつけの獣医さんに診てもらった。

一応保護した野良猫という前提、飼うなら室内なので去勢するという方向だけれど、すぐというわけにはいかない。

その日はノミ・ダニ・フィラリア・お腹の虫をいっぺんに駆除する薬をさしてもらい(便利な世の中になりましたね)、薬の効果が行き渡る2週間ほどを待機する。その間に市役所に去勢手術補助申請をし、申請が通ったら手術の日取りを決め、その時に猫白血病やエイズの血液検査とワクチン接種もいっぺんに行うこととなった。

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血が出ていた後ろ足のケガも診てもらったら、生爪がはがれていた。薬を塗っても舐めてしまうし、爪は生えてくるから特に処置はなし。
皮膚糸状菌症という皮膚病の心配もしていたが気持ちが焦って聞くのを忘れてしまっていたけれど、診察でも何も言われなかったし、保護した日に濡れタオルでさんを拭いた時も毛がごっそり抜けたりハゲがあったりということもなく、どこもかゆがったりしていない。埃や泥で汚かったけれども、病的な不潔さは全くなく、全身きれいな毛におおわれているので心配しないことにした。

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耳の中は本当にきれいなピンク色で、《まる》が家に来た時の方がよっぽど大変だった。そう、まるも保護猫で、耳の中は耳ダニで真っ黒だったのだ!

まるについてはまた別に詳しく書こうと思うが、要するに《さん》は、立派に成猫、生後1年半から2年ぐらいのオス猫として現役バリバリでw、ノミやらダニやらをはねつけるぐらいの体力を備えた健康優良児っぽい猫だった。

《さん》を診てくれた獣医さんはオットの高校時代からの友人で、さんを評してこう言った。
「立派なドラ猫の顔をしてるよねー」

・・・・ドラ猫?・・・・ドラ猫・・・まあねw

↓ ドラ猫

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ちなみに診察されている時、さんは素直な性格そのままに爪も牙も立てることなく、怖がってはいたけれどいい子で診てもらっていた。
それなのにw

オス猫として、たぶんたくさん恋をしたりライバル猫と争ったりしたのだろう、オス猫ホルモンがビンビンに出ているのだそうだ(5月ぐらいにも発情して雌猫を求めて徘徊していた)。そのため、顔の横にグッと肉がついて張り出している。

岩合さん好みの猫、というやつだ。(「世界ネコ歩き」参照)

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言われてみればその通り。顔は下に続くスリムな胴と同じ幅がある。まるに比べてだいぶ顔が大きい。そして首回りがぐりんぐりんに堅く引き締まって、「持ち手」がない。まるの首回りは柔らかくて皮がよく伸び、重いけれども持ちやすいのだ。

↓ 八等身美人のまると、かつてよくウチを覗きに来ていた立派な雄猫君。ドラ猫顔の例。

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思わず「顔でデカいからや」と、フジモンの台詞を言ってみた。

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そうか、立派なオス猫顔というのはそうやってできるのか。
ドラ猫顔w

もう、さんの顔を見るたびドラ猫というパワーワードがよみがえり、笑いもこみ上げる。そして「顔デカいからや」と言ってしまう。

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(本人も言ってる、ように思う)

センセーは《まる》を初めて診たときも、私たちから見たら小さくていたいけな生後3カ月ほどのかわいい三毛猫でしかなかったまるを、「激しい猫だから」と言った。
こんなきゃわいい子猫に何を言うとるねん、と、その時は思ったが間もなく、まるが本当に「激しい猫」だということが露呈し始め、センセーの見立ての正しさを我々はよく知っている。

現在《さん》は穏やかで甘えんぼの素直ないい子だが、食べ物に関してだけはドラ猫ぶりを遺憾なく発揮している。
キッチンのゴミ箱をふんふんと嗅ぎまわるさんの姿を見て、私とオットは「ドラ猫~」と言いながら笑ってしまう。

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↑ 似合わん! ドラ猫〜‼︎

本題に戻ろう。

健康そうに見えるとは言え猫白血病やエイズ、ノミやダニの心配もやはりあるので、2週間後ぐらいにやってくるであろう手術までさんにはケージの中で我慢してもらい、まるもケージがある和室には入れない。

まあ、まるは自分からは決して近づかないだろうけれど。

そして、もう一つの心配事、よその子かもしれない疑惑・・・
最初のガリガリの痩せ具合と被毛の汚さ、怪我は治療されていないし、5月ぐらいから近所で聞く話でも「野良」である。
しかし人間に対して素直だし、ケージのトイレもその日から何の問題もなく上手に使うし、撫でられたがり屋さんだ。人に飼われている…?

保護した後もさらに近所に話をし、ツイッターなどを確認し、張り紙や市役所への迷い猫の届け出をチェックしたりしたが、さんを探しているとかさんが飼い猫だという情報はどこからも出なかった。(後にに分かるが、さんも人間誰に対してもフレンドリーなわけではなく、知らない人にはすごく用心深かった。)

拉致監禁とか、誘拐とか、窃盗とか、このまま去勢してしまうと器物損壊とか(いや、生き物!)、不穏な言葉が頭をよぎりまくっていたが、どうやら心配しなくてもよさそうだ。

その間に去勢手術の補助申請も無事に通り、さんの手術は8月12日水曜日に決まった。

7月いっぱいは梅雨で涼しかったので、和室は窓だけを開け、他の部屋との仕切りは閉めておいた。さんもその方が落ち着くだろうし、まるにもさんの気配をできるだけ感じさせないようにした。

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そして梅雨明け。一気に暑さがやってきた。我が家の1階はできるだけエアコンなしで過ごすため風通しを良くするようにできている。和室と、廊下やリビングの仕切りも開け放ち、ケージのさんがまるからも見えるようになった。

しかし予想通り、というか予想以上。まるは和室に近寄るどころか、さんが視界に入るエリアには決して足を踏み入れようとしなかった。

さすがは絶対女王《まる》だ。
女王は、さんの存在自体を「ないもの」として過ごされることを決めたらしかった。
他の猫の存在は許さない。

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↑ 見ざるの構え

絶対女王《まる》は、絶対に、他の猫が、イヤなのだ。
いや、もう家にいるんだけどw

まるにはこの夏、精神的に負担をかけたと思う。けれども夏の日中はたいてい2階の一番涼しいところで寝て過ごすのがまるだから、時期的に良かったと言えるかもしれない。
彼女とさんがどう折り合っていくのかは、また別に詳しく書く。
今もまだそれは過程の半ばで、ゴールがどこなのかは誰にも分からない。

とにかくさんは1階和室でひんやりシートと凍らせたペットボトル、扇風機で頑張る。まるは2階のいつものお気に入りの場所で(エアコンは嫌い)と、住み分けながらさんの手術の日を待った。

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そしてその日。開院一番でさんを入院させ、昼前にはセンセーから電話があった。

無事に手術が終わったこと。
猫エイズや猫白血病の血液検査はマイナスだったこと!!

一番の心配はさんにエイズや白血病があり、まると隔離しながら飼わなければならないことだった。ずっとずっと、病気がないように毎日祈っていた。
病気だった時の方策もいくつか考えてはいたけれど、やはりどれも欠点があった。

しかし!しかししかし!

晴れてさんは健康な体。折り合いの良し悪しはともかくまると問題なく同居できることがわかった。

私は拳を握りしめ、何回もガッツポーズをし、電話を切った後踊り回った。

「明日は刺身じゃ~!!!」

翌8月13日木曜日。
朝一でさんを迎えに行き、「よく頑張ったね」といっぱい撫でてご褒美のチュールをやり、様子を見る。痛み止めが効いていることもあってかとても元気で、いつも通りご機嫌、ドライフードもボリボリと食べてトイレも普通にしている。

その日は大事を取ってケージで過ごしたさん。晩にはマグロの刺身とビールでさんのお祝いである。主役のさんとまるにももちろん刺身を与えた。

さんは何でもおいしそうに食べるが、お祝いマグロもあっという間に食べた。まるはというと、不機嫌そうに一口ふた口食べて、「ケッ」という感じで刺身を残し、さっさと2階に行ってしまったw

まあ普段からそんなに刺身も好きではないし、別にいつも通りなのだが、「あんなヤツの祝いの刺身なんか食うもんかい、めでたくなんかねーよ」という気分がよく表れた態度だった。

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まるが残した刺身はさんがおいしくいただいた
( ̄▽ ̄)


こうしてさんは飼い猫としての条件を全部クリアし、翌日いよいよケージから一歩を踏み出すことになるのである。


続く

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