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不当解雇と戦った話

私は、今はフリーランスでお仕事を頂いている立場です。
これまでに、アルバイト、契約社員、正社員、派遣社員、個人事業主、業務委託とひと通りの働き方を経験してきました。

かなり前の話にはなるのですが、正社員をやっていて不当解雇に合い、戦った時のお話を簡単に書いておきたいと思います。
細かく書くと本当はもっともっと色々なことがありましたが、かなり省略しています。
それでも少々長いです。

もし労働問題で悩まれている方がいらっしゃったら、少しでもご参考になれば幸いです。


問題の会社の背景

規模は社員5~6人のとても小さな会社でした。
詳細は書きませんが、制作のディレクションを行っているため社員はほぼディレクターさん。
制作部分は協業パートナーさんが行うという、まぁよくある形式です。
ちなみに、社長は過去にも一度、前会社を解散させた経歴があります。
※入社当時もちろん知りませんでした。

経緯

私は事務とアシスタントの募集で入社しました。
ディレクターになる気持ちは無い、アシスタントの業務と事務を担うということで念押しして合意のうえで入社しています。
社内清掃から現金管理、マニュアル作成、市場調査、パートナー契約・管理、制作作業アシスタントなど庶務雑務まで含めてディレクション以外をすべて担当しました。
思えば、採用の段階から「採用にします、今この場で入社するか否かを返答してください」という即決を迫る電話でしたので、よくない会社だと感じながら受け入れてしまわず、思い切って最初に引くべきでした。(反省)

入社から半年ほど経ったある日、「昇給します」と通知があり、その通知から2か月後に月給が1万円上がりました。
私にとっては「半年で1万円判断はかなり早いなぁ」と思いつつ、昇給を断る理由はないのでここはそのまま普通に受け入れました。
補足ですが、社内背景として、福利厚生の一環で日頃から社内イベントのようなもの(会社経費で夕食に行ったりそのまま二次会まで付き合ったり、ゲームのような企画をしたり)も多く、個人的には「そういうお金があるなら給与に反映してほしい…」という気持ちが強くあり、昇給するほうに向かうならまぁ納得と感じた面があります。

いざ昇給となった月に、「経営状態が悪いので整理解雇の可能性あり。回避のために全員で努力するように」と社内通知がありました。
そしてその翌月(昇給した次の月)、「あなたを整理解雇します」と言われました。

もう少し細かく書くと、実は昇給の前月には、新たなディレクター社員を募集し、採用決定しています。
私が整理解雇と通知された月に入社しています。
これは完全に私の想像ですが、ディレクターを入れたからなんとか自分(社長)に都合よく事務を切りたかったのでは?と思っています。
その証拠に、通知の場で「自分も一晩よく考えたんだけど」と言われたことを覚えています。
整理解雇を一晩の考えで決定するなんて正気じゃありません…。

だいたいの流れはこんな感じです。
 1. 昇給するとの通知あり(月給1万円の昇給)
 2. 新たなディレクターを募集、採用決定
 3. 昇給の月、社内に「経営状態悪化、整理解雇の可能性」通知
 4. 昇給の翌月、ディレクター入社、同月に私の整理解雇の通知
この間、3か月。
なんと雑なんだろうと呆れました。
小さすぎる会社だから仕方がない、と思われるでしょうか。
それでも会社を経営する立場で、経営手腕も無く、ただしい手続きを踏まず自分のワンマンな意思ひとつで不当解雇をしてよい理由にはなりません。

整理解雇の通知について

社長からの口頭での整理解雇の通知でした。(月の下旬です)
「解雇」は決定であり、他の選択肢は与えないとのこと。
しかし、退職日の通知がありませんでした。

これは話にならないと感じ、その場で私からは次のように返答しました。
・解雇に合意はしないことを明言しておく、こちらは退職届も出さない
・会社都合の解雇通知を出すこと、日付を当日にすること
・1ヶ月分の解雇予告手当を出すこと

ちなみに社長から「解雇予告手当とは何?」という質問がありました。
そんな基本のキさえご存じなかったのですね…。
説明したところ、社長から以下の提案がありましたのでここは当然受け入れました。(当たり前のことですね)
・当月、翌月の給与を満額で支払う

通知後の対応

会社へ出社しなくなって以降、離職証明書などの必要な書類が届きましたが、その中に「退職合意書」なるものも一緒に入っていました。
そして離職票はなぜか、昇給前の金額になっていました。
解雇に合意しないと言ったにも関わらず一方的に合意書を送り付けてきたり、金額も合意内容と異なっていたりということで、私はそれらを会社に返送しました。

その後、社長とは別の役員と電話で少しやりとりをしましたがその詳細は省略します。
最終出社日に話した内容と明らかに対応が異なっていることなど含め、社長がきちんと対応できないのであれば役員であるあなたがフォローすべきではないかと。
しばらく役員とのメールもしましたが、結論として、役員も出来るだけのことをやろうとなさったのだと思いますがまぁこの会社の社長とお付き合いしてきているということで、私からは同じ穴の狢に見えました。

労働基準監督署への相談

もちろん、労基署へも行っています。
まずは自宅の最寄りで話をしましたが簡単な内容に留まり、その後、会社の管轄の労基署へ足を運びました。
労働基準法に十分抵触するであろう会社の内情を説明し、契約書等の書類写しも提示しました。

以下のような内容は、労基署の取り扱い範囲になるとのことです。
・36協定を結ばず、みなし残業xx時間を給与に含んでいる
・xx時間以上の残業をしている社員に対しても残業代の支払いがない
・そもそも勤怠管理を行っていない

私が相談した内容のうち、以下の点は管轄外のためどうにもできないと言われました。
・履歴書を社内で全員に回覧する等、個人情報の扱い方に問題がある
・整理解雇にあたっての回避努力が不十分

この相談の後は私は労基署のお世話になっていませんが、あまりにも小規模な会社のため放置された可能性が高いのではないかと思います。


青年ユニオンについて

実は、この不当解雇問題のさなか、青年ユニオンに携わっている友人にも少し相談しています。
友人が遠方にいた都合で、私の住居から近いところを紹介してもらって電話相談してみたりしました。
結果としては、こちらの青年ユニオンであまり良い対応はしていただけず、私にとってはよい方向へは進められませんでした。

ですが、団体交渉は労働者から申し入れがあると応じなければ不当労働行為に当たるということで、おそらく会社側は応じざるを得なくなるようです。
当然一人ではなく労働組合の方が同席して話を進めてくれると思われますので(友人談)、困った時に相談してみるというのはひとつの手段だと思います。
なお、私が相談したところは「電話のみ、来社相談はやっていない」とのことでした。

「青年ユニオンとは」というところのご参考までに。
相談される際にはお近くにある青年ユニオンを調べるのが良いと思います。


弁護士への依頼

これは最終手段です。
ここまでで疲れ果てていることもあり、諦めて次へ行くほうが建設的と思われる方が大半でしょう。
しかし、社長があまりにも経営者として無知なこと、法に触れる行為を堂々と行っているほど非常識であるという現実を一度きちんと知ってもらうべきだと思ったことから、私は諦めずに弁護士さんに相談しました。

まずは無料相談から応じていただけるところ、かつ労働問題の実績があるところを探しました。
会社からも遠くないところで見つけて、訪問しました。
弁護士さんの見解としては「一人で労働審判やっても勝てる案件です」とのことでした。
※弁護士をつけるとお金がかかりますし、一人で労働審判される方もおられるそうです。

参考として、労働審判と裁判について。

私はこの会社のことでこれ以上動くのがもう心身ともに辛かったこともありまして、一人で労働審判という対応は諦め、そのまま弁護士さんへ依頼しました。
依頼して以降は、弁護士さんと会社側の代理人として依頼を受けたという弁護士さんとの間で対応していただきました。
私はこちらの弁護士さんと、電話とメールで連携。

最終的に、社長の無知によって解雇手続きに不備があったことなど諸々認めていただきました。
・未払い状態の給与と合わせて解決金を支払う
・こちら宛に謝罪文を出す
おおむねこういった内容で解決として進めていきましたが、ただ経営状態が思わしくないことは事実ではあるので(後先考えずに昇給したり新たに採用したり、経費で遊んだりするからそれはそうでしょう)、解決金は分割でということになりました。

途中で金額面で減額要請を受けたりもありました。
そこは私では客観的な判断が難しい部分もあったのですが、弁護士さんとして「労働審判になった場合の解決金としては3~6か月分程度が一般的で、ここに未払いの給与分は含まれないことから、先方提示がやや低すぎる印象」というご見解のアドバイスがありました。
おかげで妥当な金額を提示していただきつつ、それを踏まえて私も自分の主張を堂々とでき、落としどころを見つけることができました。

分割ではきちんと最後まで支払われるかがかなり重要な懸念点でしたが、分割払いの実効性を高めるため、公正証書を作成してもらうことを条件としました。
これも弁護士さんのアドバイスです。
・未払い給与+解決金の分割支払の和解に応じる
この提案と実行を以て、一応は和解したというのが事の顛末です。

ちなみに、謝罪文はとても謝罪するような文章ではなかったので会社へ返却出来ますか?と弁護士さんに提案しました。(笑)
本当は書き直しを依頼したいくらいでしたが、労力を使うだけ無駄だと思い諦めました。
弁護士さんからは、「万が一何かの役に立つこともあるかもしれない、少なくとも今回の退職でこちらは悪くないと客観的にも証明できるので、このまま自分が預かるということでどうか」とご返信いただき、おっしゃるとおりそのまま弁護士さんへお任せすることにしました。

公正証書について

公正証書を作成するには実印が必要です。
手数料などもかかります。
作成時のご参考までに。

私が作成していただいた内容には、主に以下のようなものが盛り込まれていました。
・社長が通知した解雇についての撤回
・「会社都合で労働契約を解約する」ことに合意する
・会社から私へ解決金を支払うこと
・解決金の支払い方法、支払期限、既に支払い済みの金額、残金
・支払いを怠った場合の遅延金
・支払いを怠ったら即時強制執行となることを承諾

その後の話

弁護士さんへの支払いについてですが、着手金と、公正証書などでかかっている実費を先に支払いました。
実費については当時、1万円ちょっと。
弁護士報酬は、解決金の金額と弁護士さん報酬見積もり次第だと思いますので、弁護士さんを探す際にHPなどでおよそいくら程度が見込まれるかは想定しておいたほうが良いと思います。(最初の相談時にも聞きましょう)
また、今回は解決金が分割になったことから弁護士報酬についても分割でよいかと相談し、弁護士さんにも応じていただけました。

後は、決まった期日に会社から私への支払いがあるかを確認し、確認できたら私から弁護士さんへ報酬を支払う、ということを繰り返すだけです。
幸いにも最後まで滞ることなく支払われ、終了となりました。
弁護士さんに無料相談 ⇒ 分割で報酬金の最終支払い完了まで、およそ7か月程度でした。

この会社だけではなくその他の要因もあるんですが、私はすっかり会社というもの、また人事という側面にアレルギーを持ってしまい、二度と社員で働きたくない…と改めて思うようになりました。
雇用されても、できるだけ直接雇用ではなく派遣社員のように「雇用主と勤務現場が異なる」形態になるようにしています。
よって私は長いこと色々な派遣会社、派遣先で勤務しています。

それはそれでメリットだけではない、リスク、デメリットもあります。
自由がある分、そこは自己責任だと思っています。
もう会社というものにできるだけ所属したくない…というところが根底にありますので、これからも可能であればフリーランスを続けられたらなぁと思うのでした。

いい人もいるし、そうでない人もいる。
仕事は特に、タイミング、縁というものの力も大きいです。
私は周りから「仕事運がないね」と何度か言われたことがありますけど、それでもこうやってなんとか生きています。

もし悩んでいることがあってここを読まれた方、挫けないでくださいね。
自分が一方的に悪いなんてことはないですから。
低空飛行の時は落ちていていいと思います。
いつかまた上がろうと自然に思える日が来ると思いますよ。





TOP画像ご提供元:https://note.com/ia19200102/

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