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認知から推奨まで。MARKETING4.0

マーケティングの父とも呼ばれるコトラー教授の名著「コトラーのマーケティング4.0-スマートフォン時代の究極法則-」を読み直しました。

そこで改めて感じたことや個人的に学びの多かったポイントを簡単にまとめてみました。

マーケティング4.0のコンセプト

今回のマーケティング4.0の原著の副題は「Moving from Traditional to Digital」であり、本書はデジタル時代のマーケティングを主題とし、ソーシャルメディアの登場による、顧客同士の繋がりがもたらす消費者へのパワーシフトが背景にあります。

そんなデジタル時代・経済における本書のコンセプトが下記

顧客を認知から推奨に進ませることを究極の目標とする。

ということ。(購買がゴールではありません!)

それに伴い、5Aというカスタマージャーニーのフレームワークが提唱されています。

AWARE(認知):ブランドを知る、思い出す、他者から聞かされる
APPEAL(訴求):ブランドに引きつけられる、検討対象にする
ASK(調査):調べる、他者にアドバイスを求める、比較する
ACT(行動):購入する、製品を使う、サービスを受ける
ADVOCATE(推奨):そのブランドを使い続ける、再購入する、他者に推奨する

決して上記の段階を直線的に消費者は進むわけではないが、いかに顧客に認知から推奨まで進んでもらうかが命題になっています。

これは昨今多くの企業で取り入れられている指標、NPS(ネットプロモータースコア)的な観点も含まれ、今後商品がよりコモディティ化していく中でいかに顧客のロイヤルティを高めていくかが重要ということだと思います。

その上でマーケターは売上をゴールにすることなく、推奨までを目標としたカスタマージャーニーを描くことが求められてます。

これに関してはクチコミをはじめとしたUGCの力が大きくなり、自分自身の購買を振り返っても友人・知人の推奨が絶大なのは身を持って感じていることでもあります。

一方、この推奨について。個人的経験では、NPSなどの調査だけではなかなか課題が掴みづらく、実際の施策や行動に繋げづらいと感じる部分もありました。

そして本書ではこの5Aというカスタマージャーニーに則った、測定指標が提唱されています。

購買行動率(PAR)とブランド推奨率(BAR)

PAR(購買行動率):企業が自社を認知している人々を購買行動に「コンバート」することにどれくらい成功しているかを測定する。

PAR=購買行動をとる人の数/認知している人の数

BAR(ブランド推奨率):企業が自社を認知している人々を忠実な推奨者に「コンバート」することにどれくらい成功しているかを測定する。

BAR=自発的に推奨する人の数/認知している人の数

例:市場に100人いる場合、ブランドAを自発的に想起する人は90人、そのうち購入する人は18人。その場合、ブランドAのPARは18/90で0.2(20%)。ブランドを推奨する人は9人だとすると、ブランドAのBARは9/90で0.1(10%)となる。

上記を見ていくことで、企業は市場の中で自分たちのブランドを認知している人を顧客に変え、さらには熱心な推奨者に変えることがどの程度成功しているかを定量で知ることができます。そしてこれはマーケターがマーケティング活動の生産性を測定するのに役立つ指標となるのかなと思います。

またこのPARとBARの利点として、分解すると色々なことが見えてきます。

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まず購買行動率であるPARは市場シェアをブランド認知率で割ることで算出できるので、マーケターはブランド認知率を高めたら市場シェアがどれくらい伸びる可能性があるかをおおまかにではありますが、推定できるようになります。

またBARを分解すると、

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5Aのどの段階でボトルネックが発生しているかを把握し、適切な対応を打つことができ、マーケティングの生産性を高めていくことがでいるというものです。

実際の現場においても、自分たちの施策がどういった課題に対してのものか関係者で共通認識を持ち、課題ドリブンで進め、数値で把握していくことはデジタル時代では一層求められていることだとも思います。

ただちょっとここの数字どう取るんだ?!とか頻度は?!とか色々悩ましい部分はあるので、ここは試行錯誤かなと思っております。(知ってて損はない指標だとは思います)

「ワオ!」を生み出すブランド

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ここまで少々小難しいことを記載していたのに最後は「ワオ!」です(笑)

ワオ!とは、顧客が言葉にできないほどの喜びを経験している時に発せられる表現であり、それは予期せぬ驚きから生まれます。

そしてこのワオ要因こそが最終的に顧客を推奨に進ませるものであると語られてます。

喜び、経験、エンゲージメント

そして顧客視点では企業の提供するものには3つのレベルがあると。

喜び:顧客のニーズやウォンツを満たす製品・サービスの開発、提供
経験:製品・サービスに加えて魅力的な顧客体験。
エンゲージメント:顧客と個人的なエンゲージメントを築き、顧客に自己実現お手段を与える。

これらを持って、企業やブランドはワオ!を意図的にデザインし、顧客を認知から推奨へ建設的に導き、顧客とのインタラクションを喜びから経験、エンゲージメントへと創造的に高めていけるかということが最後に述べられています。

これからますます消費者のパワーは大きくなっていくと思います。

そんな中でブランドはどう生き残っていくか。その為にはファンを増やし、ファンにはよりファンになってもらうしかありません。そしてファンにはブランドの伝道師(推奨者)になってもらうことがこれからのマーケティングには必要です。

久しぶりに読んだ本書。さすがのコトラー先生で新たな気づきや示唆が得られました。定期的に読み返したい1冊です。

ありがとうございました。

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