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木の札の百人一首とばあちゃん

5月27日は百人一首の日

下の句かるた(しものくかるた)は、北海道で遊ばれる独特のかるた遊び。百人一首歌がるたの一種である。読み札は一般的な百人一首と同じく歌人肖像・名・和歌が書かれたの札を用いるが、読み上げるのは下の句のみであるためこの名で呼ばれる。取り札はホオノキなどの木製で、独特な書体の変体仮名で下の句が書かれている。「板かるた」とも呼ばれている。

Wikipediaより

北海道の百人一首はちょっと変わっている。
小倉百人一首が有名だけど、北海道は「下の句のみ」読み上げていくもの。
しかも、紙ではなく木札。

このカルタを教えてくれたのは母方の祖母だった。



大きなザルに冷たく締めた素麵をたっぷり乗せて、
その上に氷も乗せちゃって、
「食べちゃいなさいっ」という大きな声の元に
まずは子供たちが集まってくる。
BGMはテレビから流れる高校野球。
ラッパの音を聞いただけで汗が噴き出すような午後。

子供達全員、かわいいピンクの浴衣に
金魚の尾ようなふわっふわの赤い帯。
なれないゲタに四苦八苦している私。
従妹達全員でお出かけ、盆踊り大会。

寝る前には誰がばあちゃんの横に寝るか、で
いとこたちと大喧嘩。
ばあちゃんは「暑いから一人で寝たいなぁ」とつぶやくも
大勝利をおさめた私の横で眠るのが夏の習慣だった。

1年にたった1回しか行かない祖母の家は、
子供の私にとって、宝石箱をひっくり返すよりキラキラした日々なのだ。

祖母はよく子供たちと遊んでくれた。

その中で教えてくれた百人一首。

下の句をばあちゃんが読み、子供たちが一斉に手を伸ばす。
といっても、両家の初孫である私が最年長。
2歳年下の従妹をはじめ、幼稚園年長さんぐらいの従妹達だから
札など全く取れないのだ。

ばあちゃんはいつもちっこい子の味方をしていた。

一人っ子の私は「誰かに何かを譲る」ということが
生活の基盤にない為、それが悔しくて悔しくてたまらない。

「なんでよぉっ!!そんなのズルじゃんっ!!」
と、何度も言うけど、「まぁまぁ、いいじゃない」と
ちっこい子の肩を持つのがどうしても許せない。

従妹達は全員、祖母の家から車で10分ぐらいの所に住んでいて
好きな時に会える。
でも、私は1年に1回しか会えない。
お盆の二泊三日ぐらい、祖母の愛情全てをまるっと独り占めしたとて
、誰に文句を言われるというのだ。

私はその悔しさを百人一首にこめることにして
めちゃくちゃ練習をした。

相手が幼稚園に通っているからといって、それがなんだ。
ばあちゃんが味方をして札を取らせるなら
私が先に取ればいいだけのこと。

はいはい、私に札を取られて悔しいと泣けばいいさ。
もっと泣けばいいさ。
ふん。
そんなの知るか。
だって、ばあちゃんが味方しているなんてズルいじゃん。

従妹達への嫉妬心から練習に練習を重ねた結果、
いつしか私は叔母達も負かすほど、
親戚で一番、百人一首が強くなっていた。



小倉百人一首が一般的だ、と知ったのは
「ちはやふる」という漫画だった。
漫画の登場人物の中には北海道出身の子もいて
慣れない「小倉百人一首」にやっぱり苦戦していた。

いやぁ、わかる。わかるよ。
北海道民にとって百人一首は、下の句が全てだもんね。

「北海道下の句カルタ」は、
競技カルタではなく
(*北海道では下の句カルタの大会が開かれてます)
一般的な小倉百人一首でもない。

それでも私にとっての百人一首とは、
祖母の愛情を独り占めにしたくて
「ちくしょー」と思う気持ちと、
真夏の太陽にジリジリに焼かれ、
砂利道を走って転んで母と叔母達に怒られ、
仲良しの従妹達と過ごしたかけがえのない日々が
交差していく特別なものなのだ。


ああ、そうそう。

『天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ』

この木札が好きだったなぁ。
「乙女」って大きく書いてあるからわかりやすかった。

・・・。
上の句って、こんなんだったんだ。
今、初めて知ったわ。

まぁ・・・北海道民だからね。
下の句がバッチリであれば、
い、い、いいと思う・・よ。
うん、うん。

天国で会ったら、ばあちゃんと百人一首で遊びたいな。

ねぇ、ばあちゃん。

ムキになって札を取ることもなく
ちっこい子に譲ってあげられるよ。

私も大人になりました。

でも、また隣で寝てもいい?
それだけは死守するわ。

そう。大ゲンカしてもね。


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