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おたねさんちの童話集 「シロクロパンダ」

シロクロパンダ
 
パンダコロコロ、シロクロパンダ。あっち、キョロキョロ。こっち、キョロキョロ。
めずらしいこと、だ~いすき!
ふか~い森のずっと奥、ころころ太ったま~るいパンダ!
どこの森でも、だいたいね。パンダさんは人気者!森一番の人気者!
でもね、でもね。聞いてよね!
ここのパンダはちょっとヘン。なぜだかみんなに嫌われて、たった一頭で暮らしてる。シクシクシクシク泣いてはいないのだけれども……。たったの一頭で暮らしてる。あっち、キョロキョロ。こっち、キョロキョロ。
めずらしいこと、だ~いすき!ふか~い森のずっと奥、たったの一頭で暮らしてる。
いっしょにいてたら、たのしいよ!だって、いっつもあっちへキョロキョロ。こっちへキョロキョロ。いっしょにいてたら、可愛いよ!ころころ太ったパンダ!白くて黒くてま~るいパンダ!
なのに、どうして不思議なパンダ。なぜだかみんなに嫌われている。
なぜだか知ってる?聞いてよね!
この間も、こんなことがあったんだって!
パンダコロコロ、シロクロパンダ!あっちへキョロキョロしてたとき、誰かがケンカをしてたんだ。ぷんぷん!ぽんぽん!ケンカをしてた!たぬきのポンタとポンキチとポンスケがぷんぷん!ぽんぽん!ケンカをしてた!
そこへコロコロやってきた!シロクロパンダがやってきた!
ターヌキさん!ターヌキさん!どうしたの?
おもしろいことだ~いすき!シロクロパンダがやってきた!
聞いてヨ!聞いてヨ!シロクロパンダ!
誰が一番いい音か!僕ら三匹のハラツヅミ!誰が一番いい音か!
ぽんぽこぽんぽこ!大きな音は、やっぱり大きなポンタのタイコ!
ペンペンペンペンポンポココ。いろんな音が出せるのは、やっぱりユカイなポンキチさ!
いやいや一番きれいな音色、いちばん優しいポンスケさ!
パンダコロコロ、シロクロパンダ。すぐにみんなに言ったのさ。
ポンタの音は、大きいだけで、ちっともきれいな音じゃない!ポンキチの音はバラバラで、音も小さくきれいじゃない!ポンスケの音、きれいなだけで、音は小さく、単純だ!
ポンタ、ポンキチ、ポンスケのタヌキ三匹、ぷんぷくぷん!
キツネみたいな顔をして!すぐにあっちへ行っちゃった!
タヌキの三匹だけじゃない。思い出したら、たくさんいたよ。ぷんぷん怒っていっちゃったシロクマパンダのお友達。
競争してたイノシシたちも、きれいな声のカナリア姉妹も、みんなパンダが怒らせて、それからみんないっちゃった。
ヘン!ヘン!ヘンだ!いいもんね!パンダが歩き出す。ぷんぷん怒って歩き出す。
フンフンフンと歩きすぎ、初めての森に迷い込んだ。
「オ~イ!誰かいるのかい!」
大きな声で叫んでも、ぜんぜん誰も見あたらない。シロクロパンダは悲しくなって、ゆっくり空を見上げてみたよ。
森にはさまるわずかな空の、小さな青がにじんでみえた。
「オ~イ!誰かいるのかい!」
「オ~イ!誰かいるのかい!」
ふるえる声でいったとき、小さな気配がただよった。
「おーおーおー」と低い音、姿はぜんぜんみえません。
「オ~イ!誰かいるのかい!」
「オ~イ!誰かいるのかい!」
「おーおーおー」と低い音。
「ア~!」とパンダが声上げた。
「そこにいるなら、さっさと言って!」
シロクロパンダは大声だした。
「おーおーおー」と低い音。
それでも、ぜんぜん動かない。
それもそのはず、正真正銘「ナマケモノ」
「おーおーおー」の声の主、正真正銘「ナマケモノ」
泣いてるパンダを見下ろして、それでも、ちっとも動かない。
周りの木々と同じ色、森に紛れたナマケモノ。
「ネー!ネー!ネー!ネー!ナマケモノ!独りでさびしくないのかい?」
シロクロパンダは泣き止んで、興味津々上を見た。
「動作の遅い僕だから、みんなといたら、疲れるの!」
おーおーおーのナマケモノ、のんびりゆっくり答えたよ。
「ネー!ネー!ネー!ネー!ナマケモノ!僕にも、マネができるかな?」
「できるものなら、やってみな。じっとしているだけだから」
シロクロパンダは泣き止んで、木の上登り、じっとした。
おーおーおーのナマケモノ、パンダがとなりに上っても、ぜんぜん、ちっとも動かない。
「ネー!ネー!ネー!ネー!ナマケモノ!」
パンダが、いくら喋っても、おーおーおーのナマケモノ、ぜんぜんちっともしゃべらない。
「ぼくには、とてもできないや!」
シロクロパンダは逃げ出した。
「何にもしてないみたいでも、僕らは僕らで頑張ってるのさ」
おーおーおーのナマケモノ、フフフとゆっくり笑ったよ。
おーおーおーのナマケモノ、それからゆっくりこう言った。
「ちゃんと頑張っていたならば、きっと、そうだよとみんなが言うよ!頑張らないでいったなら、全然何にもわかってないと、みんながみんなにげちゃうよ」
おーおーおーのナマケモノ、フフフとゆっくり笑ったよ。
おーおーおーのナマケモノ、フフフとゆっくり笑ったよ。
パンダコロコロ、シロクロパンダ。あっち、キョロキョロ。こっち、キョロキョロ。
僕の頑張ってることってなんだろう?
精一杯に頑張ったなら、僕も人気者になれるかな?
パンダコロコロ、シロクロパンダ。あっち、キョロキョロ。こっち、キョロキョロ。
めずらしいこと、だ~いすき!
ふか~い森のずっと奥、ころころ太ったま~るいパンダ!
シロクロパンダは人気者!森一番の人気者!
そうなるように僕だって!
精一杯に頑張ろう!
おしまい。

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