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知らぬが仏

猫が増え消臭グッズも増え続け普通の匂いがもうわからない

猫を飼っていて「とほほ……」と思う心のベストテン第1位は、「におい」だ。

結婚3年目に成り行きで田舎に一戸建てを購入した。当初は「無印良品的な」とか「シンプルでロハスでカンファタブルな」とか、そんな野望が確かにあった。猫は4匹しかいなかったし、まだ夢見がちな頃のことだから許してほしい。(そして、4匹を「しか」とか書いている時点で結構普通じゃないことも、もう気づかないでほしい)

正直、猫の獣臭さや排泄物のにおいは、まったく気にならない。9匹もいれば、ちょっとした動物園だ。におわないほうが不自然で薄気味悪い。

そんな寛容な僕にも、どうしても気になるにおいがある。「くう」と「なつめ」、「きり」が放つスプレー(尿マーキング)だ。これが通常の尿のにおいよりずっと強烈で、なかなかのとほほ……なのだ。

去勢をしても続いてしまうスプレーは、ストレスが原因ともいう。多頭飼いがストレスになっているのかもしれない、と考えると、それはもう猫のせいではなく、人間のせいだ。

人間のせいなので、スプレーをさせない努力は早々に放棄して、されたときの対処とされた後の処理に力を注いでいる。

されそうなところにはあらかじめ吸水シートを敷いたり、されてしまったところには強力な消臭スプレーを噴霧したり。本当に効いているのかよくわからない消臭器具の数々を購入しては、設置する日々……。消臭グッズには、少しうるさいですよ、僕は。あと、まったくもって無印良品的でもシンプルでもロハスでもカンファタブルでもない、つぎはぎだらけのガチャガチャした家ですよ、我が家は。

その甲斐もあって、だんだんにおいも気にならなくなっていった。

あきらめない心って大切だな、と思った。

……が、ある日、我が家を訪れた友人のしかめ面で「あ、単に鼻が慣れてしまっていただけなんだ」と思い知る。

「知らぬが仏」っていい言葉だな、と思った。

現在、我が家では「尿路結石でおしっこが出なくなるより、くさいほうがずっといい」という、猫のことなのに、なかなかの負け犬的結論で落ち着いている。

そんなそんな。