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ボラーレ・ホーチミン!

※「ボラーレ」はイタリア語で「飛ぶ」の意味。

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2014.4.7

出発の日の朝は、とまどっていた。

ホーチミンへは17:25成田空港発ANAの便で飛ぶことになっていた。ネットで予約して、もろもろできる手続きはすべて事前に済ませたはずだ。はずだけれど、何時までに空港へ行けばいいのかよくわからない。ANAのサイト(写真参照)を確認するも、「オンラインチェックイン」と「オートチェックイン機能」とはどう違うのか、「搭乗券」とは何を指すのか、「保安検査場」は行けばわかるのか、など恐ろしく謎だらけである。
あまりのわからなさに「駅で切符の買いかたにとまどうお年寄りの後ろに並ぶことがあっても、苦く思ったりしない」と誓う。

預ける手荷物がなければ、「ご出発30分前まで」となっている。そんな直前でいいのか……。心配だから一応1時間前には着いておこう。いや待て待て、預ける手荷物はないつもりだけれど、何かの拍子に「これは機内持ち込みはできません」とか言われるかもしれない。そうすると「受託手荷物のある方」に該当するのではないか。だったら「ご出発60分前まで」が必須であろう。……ということは、一応その30分前、つまり1時間30分前に着いておく必要があるのではないか。考えた末「2時間30分前に着けば、大丈夫だろう」と結論付けた。
15:00に空港に着き、「ANA」のロゴが掲げてあるカウンターを目指し、パスポートとe-チケットの控えを見せたら、あっけないくらい簡単に搭乗口へ。「備えあれば憂いなし」と「案ずるより産むが易し」は、どちらが正しいのか。2時間30分前が妥当だったかどうかは、今もわからない。30分前でも大丈夫だったのかもしれない。でもきっと、次回も2時間30分前に行くだろう。もう、それでいいや、と思う。

空港は、いい。
みんな少しずつ浮き足立っていて、昂揚感がある。それまでは心配の方が大きかったのに、空港では、これから自分がどう振るまうのか、楽しみになっていた。あきらめがつく、というか、肝が据わるというか(自分で決めて行くのに、なぜ罰ゲーム的な心持ちなのか)。空港には、そういう作用がある。

ホーチミンのタンソンニャット国際空港までは、6時間15分。日本との時差が-2時間なので、21:40に到着する予定だ。機内では、邦画2本と「水曜どうでしょう」の「原付ベトナム縦断1800キロ」を観て過ごした。ホーチミン行きの機内で「水曜どうでしょう」を用意しているなんて、なかなか粋ではないか。初めて観た「水曜どうでしょう」の感想は、「あれ? もしかしてベトナムって、思っているよりハード?」だった。
再び怖気づき始めた頃、着陸態勢に入るアナウンスが流れた。

ルール上「街の移動は徒歩」なのだけれど、空港から宿のある中心街までは、7~8キロある。街の様子もわからず、ましてや夜。怖気づいたこともあって、いきなりルールを曲げて、タクシーを使うことにした。……が、ベトナムのタクシーは、なかなか一筋縄ではいかない。
事前の情報収集によると、中心街までは12~15万ドンが相場らしい(ベトナムドンはケタが大きくてわからなくなりがち。「0」を3つ取って、5をかけると円換算になる。120,000ドン=120×5円=600円程度。150,000ドン=150×5=750円程度)。
「マイリンタクシー」と「ビナサンタクシー」の2社は比較的安全だが、それ以外のタクシーでは、ぼったくりに注意とも書かれていた。しかも、この2社の車体デザインに似せて、客をおびき寄せるタクシーもあるらしい。完全に昆虫などの「擬態」である。

空港の出口を出ると、人だかりと埃っぽい熱気に迎えられた。

「マイリン」と「ビナサン」を探して、タクシー乗り場へ向かったけれど、見当たらない。すると空港の案内役らしき人が近づいてきた。誘導された乗り場には、「サイゴンエア」という会社のタクシーが。「マイリン」でも「ビナサン」でもないけれど「サイゴンエア」という名は、いかにも空港公認っぽいではないか。運転手が「Fifteen OK ?」と話しかけてきた。15万ドンならば相場の範囲内だ。よし、乗ろう。あらかじめ準備しておいたホテル名と住所のメモを渡して、タクシーに乗り込んだ。
夜のホーチミンは、思っていた以上に騒がしかった。騒がしいのは、バイクのクラクションと、運転手のおしゃべりだ。聞き取りにくい英語で上機嫌に話す運転手だけれど、しばらくして気がついた。メーターが動いていない。最初に15万ドンで話がついているから、定額で走るつもりだろうか。割と気が気じゃない。
信号待ちのとき、15万ドンを手にしながら「How much ?  This OK ?」(いくらですか? これで大丈夫? のつもり)と聞いてみた。運転手は、後ろを振り返りながら「No ! 15$」(違うよ! 15ドルだよ)と言う。15ドルというと日本円で1,500円……ということは相場の倍ではないか!(いま考えてみると、15万ドンであれば「one hundred and fifty thousand」と言うはずだから、運転手は「(相場の倍で)了承済み」と思っていたのだろう。上機嫌なのも頷ける)

あれだけ予習していたのに、ぼられた。「備えあっても憂いあり」が正しいのか。

初日は寝るだけなので、安いカプセルホテル(1泊700円:写真参照)を予約していた。いきなりぼられたショックを「まあ、日本なら1,500円くらいかかる距離だったから」というよくわからない理屈で立て直しながら、床に就いた。

まさに「ボラーレ・ホーチミン!」だ。

Vol.03に続く→

そんなそんな。