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かすがいだらけ

おたがいに猫優先のこの家に子はないけれどかすがいだらけ

20代後半から数年間、社長と2人きりという環境で働いていた。1日中狭い事務所で2人、パソコンに向かって黙々と仕事をしていた。
社長の机と僕の机は向かい合わせでも横並びでもなく、なぜか前後に並んでいて、しかも社長の机は僕の後ろにあった。
社長が背後で「あれ……?」とつぶやけば、それは確実に僕が何かをしでかしたということになる。
背中全体が耳になっていたような数年間だった。

誰かもう1人いれば、もう少し長続きしたのかもしれない、と思わないでもない。

2人きりには、まぎれがない。まぎれがないから、逃げ場がない。逃げ場がないから、息苦しい。夫婦の間で子がかすがいとなるのは、きっと息苦しくなる前に「まぎれ」というか「どさくさ」を生み出すからだ。
子はいないから推測でしかないけれども、我が家には結婚当初から猫がいた。猫はまぎれもなく「まぎれ」であり、「どさくさ」であり、「かすがい」だった、と思う。
当初は1匹しかいなかったかすがいが、今はどういうわけか9匹にまで増えている。

こうなってくると、もうどさくさしかない中を、どうにかこうにか生きている感じで、息苦しくなる暇もない。

まったく幸せもいいところだ。

今朝も、そのかすがい様のありがたい吐瀉物を踏んだ。(猫はけっこうカジュアルに吐く)

まったく幸せもいいところだ。

そんなそんな。