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千と千尋のホイアン

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2014.04.12(続き)

いま気づいたけれど、この旅行記、なんで毎回「(続き)」から始まって、次の日の途中で終わっているのだろう。1回をちょうど1日分にすれば気持ちいいのに。そしてもう旅行から半年以上経っているのに、まだ目的地に着いていないという体たらく。

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ダナンは、大理石の産地らしく、ハン川という川沿いに大理石像がいっぱい並んでいた。……と、いきなり滑稽な写真でお茶を濁しているのは、ダナンは本当に通過程度で、何もしていないからだ。

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ふと目を上げると、黄金の龍をかたどった橋がある。夜になると、ライトアップされ、週に2回くらい火を噴くらしい。橋が火を……。無駄にでかくて、馬鹿馬鹿しくて、いいね。

ひとしきり街を歩いて、バス停に向かった。ダナンからホイアンまではバスで1時間くらい。ダナン=ホイアン間を五行山経由で周回するローカルバスらしい。バス代が18,000ドン(約90円)らしいことは調べがついていたのだけれど、手持ちに50,000ドン札しかない。
(水でも買って崩すか……)と、おばちゃんがやっている屋台の売店へ。水を手に取って、おばちゃんに50,000ドン札と一緒に渡したら「こんなにいらないよ」と、財布を覗き込まれ、細かい札を逆に持っていかれてしまった。
こ、こんなはずでは……。

この旅行中、学んだことは「明るいおばちゃんに悪い人はいない」だ。いや、正確に言うと「明るいおばちゃんになら騙されてもそんなに嫌な気持ちがしない」か。
調子のいい男性に騙されると普通に悔しい(例:ボラーレ・ホーチミン)。若い女性に騙されると、こちらにまったく下心がなかったとも言い切れないから、忸怩たる思いが残る。その点、同年代より上の明るいおばちゃんはいい。明るいから楽しいし、騙されても「たくましい!」と、素直に感嘆できる。
このあと、何人かのおばちゃんとのエピソードが出てくるけれど、それは「おばちゃんに声をかけられたら、乗ってみる」を実践していたからだ。

あと、iPhoneのTouch IDは、暑い国で歩き回りながら使うのには向かないことも学んだ。手のひらが汗ばむと全然指紋を認識しない。旅行中、何度も自作の短歌を思い出した。

お前まで拒絶するのか iPhoneが俺の指紋を認識しない(仁尾智)

話が逸れた。

結局、お札を崩すために、ダナン大聖堂(写真)前のカフェでベトナムコーヒーをすすりながら、バスを待つ。最初からそうしておけばよかった。

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1時間くらいぼんやりしていたら、それらしいバスが来た。

バスの後ろの方に乗車口があり、乗務員らしき男性が「ホイアン?」と叫ぶ。「そうそう!」と答えながら、停まらないバスに飛び乗る。アクティブか!

しばらくするとその乗務員の男性が、バス代を徴収しに来た。

「30,000ドン」

(いやいやいやいや、18,000ドンだろ?)
実は、公共バスなのに乗務員が結構ふっかけたりするらしいことも知っていた。日本に置き換えてみると、京都の市バスで車掌さんがぼったくる感じだろうか。それは、なかなか懲戒免職だな、と思う。少し抵抗してみることにした。

「嘘だね」と18,000ドンだけ渡すと、首を振りながら突き返してくる。

「30,000ドン!」

こうして得た小銭が毎日のタバコとかビールとかに変わるのだろうか。そうこうしているうちに今度は欧米人の女性が乗ってきた。乗務員は、ひとまず僕を保留にして、欧米人の女性に近づいて、言った。

「50,000ドン」

値上がりした! 女性は疑うこともなく50,000ドンを支払った。そして乗務員は僕の元に戻ってきて「30,000ドン! 払えないのなら降りろよ」的なゼスチャーをし始めた。渋々30,000ドンを支払った。差額12,000ドン(約60円)の攻防。

窓の外を眺めていると、制服だろうか、白いアオザイを着た女学生がたくさんいて、よい。埃っぽい田舎町を、途中で通学の子供とか行商のおばあちゃんとかを拾いながら走ること1時間。ホイアンに到着。

まずは2時間歩いて、目的のホテルへ。もう2時間歩くくらいは慣れっこだ。

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無駄にきれいなのは、以前書いた通り「ちゃんとホイアンにたどり着くための自分なりの知恵」。決して贅沢がしたかったわけではない。

ホテルに着くと、何はなくとも洗濯である。
シャワーはお湯の調節が異様にシビアで、少し動かすだけでヤケドできるほど熱くなったり、Wi-Fiが異様に弱くて、部屋の外に出ないとネットに繋げなかったり、と色々問題はありながらも「洗濯ができて、眠れればいいよ」と、おおらかな気持ちで受け入れる。

洗濯を終えて、ついでにシャワーも浴びたところで、世界遺産の街ホイアンに繰り出す。

ホイアンの街の第一印象は「欧米人が抱いている(と、僕が思っている)『オリエンタル』をそのまま形にしたような街だな。あまりにもそのまま過ぎて(東洋人の僕には)映画のセットみたいに見えてしまうな」だった。もしかしたら、ちょっと刺激が足りないかも、と思った。

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ホイアンには名物料理が3つある。
「ホワイトローズ」、「カオラウ」、「揚げワンタン」。特に目的のない旅行だが、この3つは必ず食べようと思っていた。食堂に入って「カオラウ」と「ホワイトローズ」とビールを注文。

ホーチミンなど南部では「333」が有名だけれど、中部では「Tiger Beer」が飲まれているようだった。シンガポールのビールらしい。ちなみにベトナムの人は「ティガー」と呼んでいるように聞こえたけれど、定かではない。

出てきた。これがカオラウという麺料理。うどんのような麺にモヤシや豚肉、揚げたライスペーパーが乗っている。濃いめのタレがかかっていて、麺に絡めながら食べるのだ。

旨い。甘辛いタレが麺に合う。あと、揚げたライスペーパーが噛み心地というか、食感のアクセントになっていて、すごくいい。全然異国の食べ物な感じがしない(一説には、カオラウは日本の伊勢うどんがルーツではないか、と言われているらしい。なんとなく納得してしまう味)。

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続いて、「ホワイトローズ」が出てきた。白いバラ。麗しい名前だけれど、平たく言えば「海老ワンタン」だ。身も蓋もない。味は……海老ワンタンだった。身も蓋も2回目もない味だった。

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お腹も満たされたので、街を散策。漢字やベトナム文字、ローマ字が入り混じり、欧米人が溢れ、英語やベトナム語が飛び交う。暗くなってくると、ホイアン名物のランタンが灯り、なんだか「千と千尋の神隠し」のテーマパークみたいだな、と思った。

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ホテルに戻ると、フロントの女の子に「Are You Japanese ?」と聞かれた。「Yes」と答えると、「おかえりなさい」と日本語で言われて、思わず「おー、すごいすごい」と普通の反応をしてしまった。ベトナム語で「ただいま」って言えればよかったのに。

明日は「何もしないこと」をしに、近くのクアダイビーチに行く予定。

Vol.11に続く→


そんなそんな。