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「みんなで作る仁尾智手書き短歌集」(1)

2022.05.29 文学フリマ東京

【CATS】手のひらで掬うみたいに抱き上げた猫に救われてたのは僕だ

【LIFE】初めての待ち合わせだから目印にその場でいちばん浮かれています

【CATS】仕事場は仕事する場所 眠るのが仕事の猫にとっては寝場所

【CATS】猫の気は済んでいるのに僕の気が済まずにずっとなでて済まない

【CATS】「生きるのが下手」と言われて猫の手をたくさん借りてまだ生きている

【LIFE】死にたいと思うのは夜 死んだっていいと思うのはよく晴れた朝

【CATS】ケンタッキーフライドチキンを食べているときだけ猫が愛してくれる

【LIFE】嘘とまで言わないまでも人による印象がある 「手で切れます」は

【LIFE】うすうすは気づいてたけど数撃って当たるのは下手じゃない人だけだ

【CATS】写真には残せなかったあの猫の細さは僕の心細さだ

【CATS】九匹の猫というより九つの命とともに暮らしています

【CATS】ノラなのに人なつっこい おそらくは過去に名前で呼ばれてた猫

【CATS】猫からは何も学んではいけません みな猫ゆえのことだからです

【CATS】雨の日の猫を見てるとハメハメハ 「雨天休み」はたぶん正しい

【LIFE】思い出は全部甘いかほろ苦い 苦すぎるのは忘れるからだ

【CATS】入ってた袋のほうでじゃれる猫 僕の選んだおもちゃをよそに

【LIFE】読んだあと懐かしくなる『ドラえもん』自体がタイムマシンってことか

【LIFE】言い切れることなどなくてあいづちは「わかる」じゃなくて「わかる気がする」

【CATS】「いるだけでいい」ってきみは猫に言う 一度でいいから言われてみたい

【CATS】爪とぎは猫の仕事だ 一流は仕事の場所を選ばないのだ

【CATS】ヒゲのない猫などいないはずなのに「ヒゲ」と呼ばれる顔をした猫

【CATS】猫が寝て一番さまになる場所が妻のひざだと認めていない

【CATS】もう割と寝てばっかりの猫なのにときどき圧倒的に命だ

【LIFE】さくら咲く時期だけわかる この街は東京よりも九日寒い

【CATS】リビングを裸足で歩く 猫がいたらしい場所だけ生ぬるい床

【CATS】生前の猫の写真を眺めてる サイダーをまたサイダーで割る

【LIFE】笑っても泣いてもきょうで最後ならいずれにしてもあすは最初だ

【LIFE】ベストとは思わないけどこの辺で僕は自分と手を打っている

【LIFE】よけいではないほうのことをしたうえでよけいなことはしすぎるべきだ

【CATS】乳を押すしぐさで眠る 母親の乳をふくんだことのない猫

【LIFE】なんだっていいから自信が持ちたくて毛糸洗いをアクロンでする

【LIFE】そのすべを持つ人の手を借りていく 僕も誰かに手を貸しながら

【CATS】里親に猫を届けて行きよりもキャリーバッグが軽くて重い

【CATS】「出ないよりいいよ」と粗相した猫に(あるいは自分に)言い聞かせてる

【CATS】猫がしちゃいけないことのない家でしなくていいことばかりする猫

【LIFE】
この街で初めての春 薬局の角のあの木は桜と気づく

【CATS】猫はいるだけでいいからしつけない 仕方ないから叱らないこと

販売枚数と寄付報告

LIFE:18
CATS:26
計:44

1枚につき100円(4400円)を「かながわペットのいのち基金」に寄付しました。ご協力ありがとうございました。

完売まであと

270-44=226

そんなそんな。