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余生

2023.06.12

きょうは、冷蔵庫にきょうまでに使いたい挽き肉があるとのことだった。

僕「麻婆茄子?」
妻「ナスは豚バラと使うから」
僕「じゃあ、オムレツ?」
妻「オムレツはこの前食べた」
僕「……」
妻「(しぶしぶみたいに)肉じゃがを挽き肉で作る?」
僕「いや、作るけど、そんなに食べたいわけじゃないって感じじゃん!」
妻「え、じゃあ、なんかある?」
僕「……ハンバーグ?」
妻「え? ハンバーグなんて作ってくれんの?」
僕「まあ、たまには」
妻「じゃあ、ハンバーグで」

……ということで、ハンバーグを作った。

ちょっとパン粉と玉ねぎが多すぎたのか、柔らかすぎた気がするけれど、まだ本調子じゃない妻には柔らかいくらいでもよかろう。

ハンバーグ、面倒くさそうだと思っていたけれど、別にそんなでもなかったな……。

猫びより発売日

すがすがしいほどの自著PRの回です。このような原稿を許容してくれる編集部と、イラストを描いてくれた小泉さよさんに感謝。

つくたべ

やったー。

勝ち組

このところの実感として、こう思っている。あんまり「やり残したこと」とか「死ぬまでに必ずやりたいこと」みたいなのが思い浮かばなくなっている。
だからといって、すごく厭世的になっていたり、積極的に死にたい、みたいなことじゃくて、もっと前向き? というかフラットな感じ。
もしかして、こういうのを「余生」というのではないだろうか。
死ぬときは最後にスイカを食べて、「おいしかったし、おもしろかった」と言って死ねるといいな。

昔作った短歌。

長い長い余生の途中 高3の夏に敗退してからずっと

……という短歌の正式な表記を確認するために、ぐぐったら、こんなエッセイが出てきたので、全文転記します。

長い余生

長い長い余生の途中 高3の夏に敗退してからずっと (仁尾智)連作「Cager -籠の人-」より

 部屋を片付けていて、ポケットアルバムを発見したら、眺めはじめてしまうのが人というものだろう。その中に汗だくのユニフォーム姿で写っている集合写真を見つけた。
 高校3年生のとき、バスケットボールの最後の大会で負けた直後の写真だ。負けた後とは思えないほどさっぱりした顔の僕がそこにいる。

 高校の頃まで、かなりまじめにバスケットボールをしていたことは、何度か書いた。
 僕の高校のバスケット部は、「バスケットをやりたいと思った人間が自然に集まった作為のない部」だった。他の私学やスポーツ推薦的な制度のある学校と比べると、とても牧歌的で、仮に甲子園なんかに出たら応援されてしまうタイプの学校だった。バスケットだから甲子園には出ないのだけれど。
 そんな不熱心な学校にしては、僕らの代は粒ぞろいで意外と強かった。
 強かったけれど、県の上位にはそれこそスポーツ推薦で集められて、ウチのチームよりレギュラーの平均身長が10cm以上高いようなチームが何チームもあった。普通に考えればそういうチームにかなうはずはなく、僕だってそこまで夢見がちではなかった。バスケットは、点数が多く入る分、番狂わせが起きにくいスポーツだ。強いチームは順当に勝つ。少なくとも僕はそう理解していた。つまり1番になれないことなど分かりながらやっていた。たぶん勝ち負け以前にバスケットボールそのものがおもしろかったのだろうと思う。

 最後の夏の大会。実力的に勝ち目のない学校とベスト8をかけて戦った。(僕らの時代は、1試合が前後半の20分ハーフだった。)
 前半、ジリジリと離され10点差辺りをウロウロとしていた。僕らはタイムアウトのたびに「前半を何とか1ケタ差で乗り切ろう。後半絶対に追いつけるから」と、自分たちを鼓舞し続けた。
 そして、予定通り8点のビハインドで前半を終えた。僕たちは「OK、OK。最後よく1ケタ差まで追いついたよ。これで後半、まだ戦えるよ」と、まるでリードしているかのようなテンションだった。

 そして後半がはじまった。後半も前半と同じような展開が続いた。

 ピー!
 試合が終わり、審判が笛を吹く。
 スコアはちょうど16点差。なんということはない。僕らは前半と同じだけの点差を後半にもつけられ、順当に負けた。つまり相手チームとの正確な実力差が「20分につき8点分」だったということだ。
 負けた瞬間、まったく悔しくなかった。
 それどころか前半で言っていた「1ケタ差で乗り切ろう。そうすれば絶対追いつけるから」などという根拠のない自信が妙に恥ずかしかった。きっちり16点差だったことが、余計に滑稽だった。
 順当だな、と思い、むしろすがすがしかった。

 写真の中では、やりきった顔をした僕が笑っている。
 なんとなく写真をクシャクシャに丸めてしまいたい衝動に駆られながら、アルバムをしまった。

窓猫

これは、昨晩飲んでいるときに妻から送られてきた、お隣の窓辺の写真。窓辺に猫が乗れる台を作ってあげているらしく、台は見えていたんだけど猫が乗っているのは見たことがなくて、昨晩初めて姿を見せてくれて「乗ってた!」というコメントともに送られてきた。この黒猫は「オルガ」だね。

……で、きょう、僕が、こちら側の窓の雨戸を閉めようとしたら、ちょこんと同じ黒猫が座っていた。こちらに気づいて、じっと見ている。

ああ、お隣の窓に猫がいるって、めっちゃいいな……と思った。すごく和む。とにかく保護できて、本当によかったよ……。


そんなそんな。