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定年後の夫とそのストレスについて

何度も書いているが、私の職場はシルバー層をターゲットにした服屋だ。

いや、もとい。別にターゲットにしているわけでは、ない。30年以上続いていると、顧客は自然と年を取り、シルバー層になったというだけのことで。もちろん、若い層の新規顧客を獲得するべく日々奮闘しているわけだが。

日頃、このシルバー層の顧客様を相手に色々な話をする。服を買いに来るというよりも、「近くに来たから寄ってみた」または「ちょっと休憩させて」「くたびれたからお茶飲ませて」という方が圧倒的に多い。ありがたいやらなんやら。

シルバー層はその相方であるご主人様についての愚痴がたいそう溜まっているご様子。よく聞くのが「定年後、夫がずっと家にいる」という深刻な問題についての愚痴。

朝、昼、晩と三食のおさんどんがたまらなくメンドクサイ。とにかくメンドクサイ。なんならその存在自体がメンドクサイ。

自分一人ならお昼なんて昨日の夕飯の残り物か、あんパンと牛乳などで簡単に済ませられるのに、ご主人様がいるとそうはいかない。

わざわざ作らなくてはいけないし、だいたいお昼の12:00に家にいなくてはいけない。これは主婦にとっては結構大変なことらしい。

午前中に済ませたい用事があってもお昼までに帰宅出来なければ、ご主人様が不機嫌になるという。午前中に受け取るために集まる、ご近所の生協仲間とのお喋りも、ちょっと時間が長いと後でわざとらしくイヤミを言われる。たまのおでかけで、習い事やお友達との観劇や買い物なども帰宅時間を逆算して帰りの電車やバスの時間を気にするから、心から寛げないし楽しめない。

そしてなにより、会話が無い…と。

うう~~ん、これは想像以上にストレスなことかも。何故そうなるのか?

シルバー層の方たちは、圧倒的に専業主婦が多い。そして旦那様は、戦後の日本の高度経済成長を支えた団塊の世代。入社以来、仕事一筋で定年まで勤め上げ、楽しみと言えば仕事仲間との飲み会や接待ゴルフ、いわゆる仕事の延長での遊びであって、自分自身の趣味なんて無い。だってそんな時間とお金の余裕なんて無かったんだから仕方ない。

定年退職までの何十年、趣味の時間やお金を返上して何千万もの住宅ローンや、子供達の教育費を払い続け、定年した途端に「趣味作れ」だの「友達作れ」と言ってもそりゃあ無理というもの。しかも今まで年功序列の社会の中での上下関係でしか人間関係を築いてこなかったので、今さら年齢関係なくフラットな関係なんてどうやって自分を保てばいいのか、位置付けが分からない。

よく男性は介護施設などのデイサービスを利用したがらないというけれど、まさしくそれはフラットな関係の状態がどうにも居心地悪いのではなかろうかと思う。

そう言えば、飲みに行ったbarやカウンター割烹などで、幾人かの初対面の男性客と話をすると、必ずや始まるのはマウンティング。どこの大学を出ただの、自分の勤める会社は丸の内だの霞ヶ関だの、国会議員の誰それを知っているだの、この前一緒に仕事をしたのは今をときめくIT長者の誰それだの…

どーーーーーーーでもええような自慢話が始まる。自分を少しでも大きく見せようと必死だ。特に女の前では。動物園の猿山のごとく、マウンティングが始まる。

あ、話が反れましたね。とにかく、定年後の男ってのは、主婦にとってはお荷物。目の上のたんこぶ。ストレスの根元らしい。

先日なんて、午前中に珍しく来店した主婦のH様は「ちょっと遊ばせてぇ~~っ❗」と言いながら飛び込んできた。いつも家にいるご主人様が今日は朝からゴルフでいないそうな。いつもいつも一緒にいて、食材の買い物にも必ずついてくるらしい。

「もうね、息抜きしたいのよ~~💦たまんないのよ~~💦」と、のたまわれた。

気の毒だ…。私にはムリだ…。絶対ムリだ…。

でも、H様いわく、「今までずっと長年、仕事一筋で頑張って働いてくれたからね、文句も言えないしね…。別に嫌じゃないのよ、優しい人だしね。でもね、ずーーーーっと、家にいるのよ。何処へ行くにも一緒にくっついてくるのよ。私には一人になる時間が全くないのよ…。」とうなだれた。

嫌いじゃないけど鬱陶しい。これこそが定年後の夫という存在なのだろうか…。

男性の皆様、お気をつけあれ。今はひたすら仕事一筋、それこそが家族のためだとお思いでしょうが、あなたが仕事をしている時間、奥様は家で一人の時間を「自分のペース」で生活していらっしゃる。この「自分のペース」というのは、主婦の終わりのない仕事を日々こなしていくには絶対的に必要なことなのだ。このペースを壊されると色んなところに支障がでてくる。

主婦の仕事には手順というものがある。朝起きて家族の朝食をつくり、家族を送り出して後片付けをして家事に取りかかる。子育て中は尚更、ペース配分が重要だ。買い物に行く、掃除洗濯、ご近所付き合いや親戚とのあれやこれや、子供のPTAや町内会の仕事、なんやらかんやら、とにかく終わりがない。それらをやりこなすにはペース配分がとても大切。そうやって何十年やってきたことを、夫の定年退職で一気に乱される。そして「助けてぇ~~💦息抜きさせて~~💦」と家の外へ助けを求めるのだ。

男性の皆様、趣味を持ちましょう。一人で楽しむ術を身に付けましょう。簡単な食事くらい、作れるようにしておきましょう。一生懸命、家族のために働いて働いて、勤め上げた末にその家族たちに疎まれることのないように。自分のお守りは自分で出来るようにしておきましょう。人生の終盤を幸せに暮らすために。家族との平穏を保つために。どうぞ宜しくお願い致します。貴方のためです!よ(*^^*)🎶

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