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ポジとネガ


「恋が終わってく瞬間」を味わったことがあるだろうか。


「その人」は、確かに私を愛してくれた。

私も確かに夢中で愛した。

なぜ、終わってしまったのか。

その理由は明白だ。

「その人」が嘘をついていたからだ。


ある日突然、「その人」からコンタクトがきた。

とても丁寧な文章はすぐに私を魅了した。

心のこもった言葉は乾いた私の心を隅々まで潤わせた。

「人を愛する」ということを久しぶりに思い出させてくれた。

「信じる」ということを何年かぶりに味わせてくれた。

そんな自分に心が浮き立った。

またこんな思いを味わえるなんて思いもしなかった。


その手の温もりは見失った優しさを呼び戻してくれた。

その真剣な瞳はもう一度落ちてもいいと思わせてくれた。

その言葉はとうの昔に置いてきた「希望」という二文字を目の前に連れてきた。


こんなに美しい景色を見られるなんて思ってもいなかった。

こんなに甘い時を持てるなんて思ってもいなかった。



それがある日突然、全部消え去った。


わからない、なにも。

なにも考えられない時間だけが永遠に続くかと絶望した。

生きてるのか死んでるのかわからない時間。


なぜこんな思いをしてるんだろう。

なにが起こってるんだろう。

ただ、このまま「その人」が私の前から消え去ってしまうことの恐怖で押しつぶされそうだった。

どうにかして留まっていて欲しかった。

どんな理由であれ、私の前から消えてほしくなかった。


それでも時間は残酷に過ぎていった。

日に日に現実だと受け止める自分の冷静さを恨んだ。

それでも仕事に行き、お腹が空いていなくても無理やり食べる自分を恥じた。


生きられるじゃないか。

「その人」」がいなくたって、私は生きようとしているじゃないか。

だったら大丈夫だろ?涙は一時の心のわがままだ。

浸ってるだけだろ?日常は滞りなく進んでるじゃないか。


こんな想いの果てにあるものはなんなんだ。

一体なにが待ってるんだ。

私はこの先どうやって立ち直っていくんだろう。

その姿を見てみたい。


ため息の先に辿り着ける場所へ、

しっかりと自分の足で立っている私を見てやろう。


そこには一層強くなっている私がいるはずだ。

もう一度人を信じてみようと思える自分が。


だから「その人」を赦すと決めた。

その嘘は「その人」の問題であって私には関係のないことだ。

私はただ「その人」を愛しただけ。ただそれだけ。


「その人」の嘘は私の問題ではない。

だから私にはなにも影響はない。

ただ、愛した。それだけが真実。それだけ。


人は出逢い、そして離れる。

その間にどんな関係性が生まれ、失われても誰のせいでもなく。ただ起きてくることを受け入れるだけだ。

それだけでいい。それしか他に選ぶ道はないのだから。


私が先に忘れよう。

あれから1年が経った。

私は今日も元気に生きている。



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