時間

ナースのための“教える技術” 効果的なOJTを実施するために知っておくとよい理論

一生懸命教えているのになかなかできるようにならない,いつになったら一人で任せられるようになるのだろう…と悩むことがあるのではないでしょうか。これから具体的な「教え方」についてご紹介する前に,指導者が知っておくとよい学習の法則についてお伝えします。

5,000時間仮説

私たちが,ピアノを弾けるようになったり,英語が話せるようになったり,テニスがうまくできるようになったりするには,大体どれくらいの時間がかかると思いますか。このような事柄ができるようになるためには,最低でも5,000時間が必要だと言われています。5,000時間というのは,1日8時間,週5日を訓練に費やしたとして,2年半で達成できる時間です。また,1日5時間,毎日練習すると,3年で5,000時間に達します。

10年修行の法則

別の研究者は「10年修行の法則」というものを提案しています。これは,どんなことでも10年間訓練を続ければ,一流になれるというものです。

一つひとつのことに熟達するために必要な時間が5,000時間,3年間だとすれば,さらにそれに磨きをかけて一流になるためには,10年の修行が必要だということになります。3年にしても10年にしても長い時間です。しかし,逆に考えれば,3年なり10年なりの時間をかけて訓練すれば,「誰でも」一つのことが熟達してできるようになるのです。そして,その手助けをするのが指導者の役割になります。

クリニカルラダー

看護師の場合,施設では「クリニカルラダーシステム」を取り入れて,看護職のキャリア開発を支援しているのではないでしょうか。クリニカルラダーの習熟度は,レベルⅠを新人ナース,レベルⅡを一人前ナース,レベルⅢを中堅ナース,レベルⅣをエキスパートナースと位置づけます。例えば,レベルⅡを取得して一人前のナースになるには,大体2年半〜3年かかります。


一人前になるには時間がかかる

教える時には「5,000時間仮説」「10年修行の法則」を念頭において,「今はまだまだだけど,3年経てば病棟で1人前にできるようになる」「10年経ったら,どこの部署へ行っても活躍できるはず」と考えるとよいでしょう。「石の上にも三年」ということわざがありますが,3年間という期間はあながち根拠のないものでもなさそうですね。

参考文献
1)D.A. ノーマン著,宮田達彦訳.認知心理学入門−学習と記憶−.誠信書房,1984.
2)Ericsson, KA(ed.). The road to excellence: the acquisition of expert performance in the arts and sciences, sports, and games. Lawrence Erlbaum, 1996.



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