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ナースのための“教える技術” 研修の設計に役立つ理論(1)
看護師は,キャリアアップをするために学び続けていく必要があります。そのため,多くの病院では,看護部の教育委員会などが中心となって,集合教育の企画・運営をしているのではないでしょうか。このような中,研修を受ける看護師のレベルはさまざまであり,ニーズに応じた研修を企画・運営しなければなりません。
しかし,一生懸命考えて研修を企画したのに,こんな経験をしたことはありませんか?
・研修生の反応がいま一つだった
・講義中に居眠りをしている研修生がいる
・グループワークが促進せず,思うような意見が出せなかった
・研修の内容が現場で活かされていない
また,せっかく時間をつくって研修を受けたのに,こんな経験をしたことはありませんか?
・学びたいと思っていた内容と違っていて,期待はずれだった
・退屈でつまらない研修でがっかりした
・効果的なグループワークができず,消化不良に終わった
・現場で役に立たない
このような時,「インストラクショナルデザイン」の理論を活用するとよいでしょう。インストラクショナルデザインとは「うまく教えるための科学と技術」と言われています。すなわち,インストラクショナルデザインの枠組みを使えば,どんな人が教えてもうまく教えることができるのです。
ガニエの「9教授事象」で研修を組み立てる
研修を企画しよう!と思っても,実際にはどのような方法でどれくらいの時間をかければよいのかわからないということがあるのではないでしょうか?
研修では,限られた時間の中で,講義,グループワーク,ロールプレイ,フィードバックなどを行います。どの順番で行い,それぞれにどのくらいの時間を割り当てるのかということが重要となります。そこで,研修を組み立てるときには,ロバート・ガニエの「9教授事象」のモデルを使うと便利です。これは9つのステップで研修を組み立てるというものです。
研修を組み立てる9つのステップ
①研修生の注意を引く
「みなさん,ちょっとこれに注目してください」
②研修の目標を知らせる
「これができるようになることが今日の目標です」
③すでに学んだことを思い出させる
「前回の研修でこれについて学びましたね」
④新しい学習内容を提示する
「今日の新しい内容はこれです」
⑤研修の進め方を説明する
「この方法で研修を行います」
⑥演習をする
「では,実際にやってみましょう」
⑦フィードバックする
「うまくできましたか?どこが難しかったですか?」
⑧研修の効果を評価する
「研修で学んだことを確認してみましょう」
⑨学習したことを実践場面でも活かせるように促す
「今回の研修で学んだことは,どのような場面で活かせますか?」
研修生の注意を引く導入例
フィジカルアセスメントの研修の導入として「セブンイレブンの看板で,イレブンの文字はどのように書いてありますか?」と研修生に問いかけます。日々,いろんなところで見かけるにもかかわらず,案外看板にどのように書いてあるのか知らないことが多いものです。
そのため,ほとんどの研修生が「全部アルファベットの大文字」と答えるでしょう。しかし,正解は「ELEVEn」で「n」だけ小文字なのです。
つまり,いくらよく見かけていても『視覚』で見ているだけでは細かいところに気づかないことがよくあるということです。「視覚をじっくり観察する『視診』に変えて患者を視ることがフィジカルアセスメントの基本である」ことを説明します。
このように,身近なものと研修の内容を関連づけたり,ハッとするような体験をさせたりすることで,研修生の注目を集めることができます。
『視覚』と『視診』の違いについてハッとしていただけましたでしょうか。研修生の注意を引く導入は,研修だけではなく部署の勉強会にも応用できます。
次回も引き続き,ガニエの「9教授事象」に基づいた研修の実践例についてご紹介していきます。
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