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【授業・研修のレシピ】 導入で “ハッとする” 体験を取り入れる
授業(研修)を企画しよう!と思っても,実際にはどのような方法でどれくらいの時間をかければよいのかわからないということがあるのではないでしょうか?
授業では,限られた時間の中で,講義,グループワーク,ロールプレイ,フィードバックなどを行います。どの順番で行い,それぞれにどのくらいの時間を割り当てるのかということが重要となります。そこで,授業を組み立てるときには,ロバート・ガニエの「9教授事象」のモデルを使うと便利です。これは9つのステップで授業を組み立てるというものです。
授業を組み立てる9つのステップ
①学生の注意を引く
「みなさん,ちょっとこれに注目してください」
②授業の目標を知らせる
「これができるようになることが今日の目標です」
③すでに学んだことを思い出させる
「前回の授業でこれについて学びましたね」
④新しい学習内容を提示する
「今日の新しい内容はこれです」
⑤授業の進め方を説明する
「この方法で授業を行います」
⑥演習をする
「では,実際にやってみましょう」
⑦フィードバックする
「うまくできましたか?どこが難しかったですか?」
⑧授業の効果を評価する
「授業で学んだことを確認してみましょう」
⑨学習したことを実践場面でも活かせるように促す
「今回の授業で学んだことは,どのような場面で活かせますか?」
最初のステップ①では,まず学習者の注意を引きます。授業では本題に目を向けがちですが,ここが結構重要なのです。学生の注意を引くために,身近なものや奇抜なものを提示するところから始めるとよいでしょう。
導入で“ハッとする”体験を取り入れる
医学生に対する「身体診察」の授業を例にご紹介します。
みなさん,病院や健康診断で,医師に診察を受けたことがあるのではないでしょうか。身体診察の場面では,視覚,聴覚,触覚,嗅覚,味覚といった五感をフルに活用する必要があります。とくに視覚(視診),聴覚(聴診),触覚(触診)は,診察するうえで欠かせません。
ですので,身体診察の授業では,五感をいかに使うかということを教える必要があります。なんだか難しそうですよね・・・
そこで,最初のステップでは,身近な物を使って学生の注意を引きます。
グループに2つのカップ麺を用意します。そして「みなさん,同性同名の『どん兵衛さん』です。診察してください」と言います。たいていの学生は『え?』『なんで?』『なにが違うの??」と戸惑うでしょう。
実はこの2つのどん兵衛,見た目はほぼ変わらないのですが,「東日本」と「西日本」で販売されているどん兵衛なのです。
まず,学生は『どこか違うのかな・・・』とパッケージをじっくり見始めます。そこで教員は「あっ,視診が始まりましたね」と伝えます。
『製造年月日が違う』「どん兵衛さんの生年月日ですね」
『製造番号も違う』「それは,カルテ番号でしょうか」
『あっ,ナトリウムの量が違う!』「血液データにあたりますね」
『よく見たら出汁も違う』「サバはアレルギー情報ってところでしょうか」
次に,手にもってみたりするでしょう。そこで「それは触診ですね」と声をかけます。大きさを比較してみたり,触り心地に違いがないか確かめます。
さらに,振って音を確かめたりするでしょう。そこで「聴診が始まりましたね」と伝えます。中身が見られないわけですから,音を聴いて判断しようとするのです。
『食べたら違うのかな』『お湯を入れてみてもいいですか』なんて声も聞こえてきます。さすがに授業なので嗅覚は試してみることはできませんが,いかに五感を使うかということを楽しみながら実践できたようです。
“ハッとする体験” は記憶に残りやすい
授業でどれだけ「観察は重要ですよ」「ちゃんとみてくださいね」と言ったとしても,「よくみる」ということがいかに重要なのか理解できなければ実践することはできません。このようなときには,やってほしいと思うこと(覚えてほしいこと)について “ハッとする体験” をしてもらいます。「面白かった」「びっくりした」といった感情は,体験とあいまって記憶に残りやすくなるのです。
さっそく,その日の食堂では「さっきのどん兵衛…」「種類があるって知ってた?」「よーくみないとわからなかったね」などと話している声が聞こえてきました。臨床の場面でカップ麺の観察をすることはありませんが,「五感を使う」とはどういうことなのかを学ぶきっかけにはなったようですね。
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