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ナースのための“教える技術” 研修の改善に役立つ理論(1)

これまで「研修の設計に役立つ理論」として,ロバート・ガニエの“9教授事象”についてご紹介してきました。しかしながら,研修の企画・運営は簡単なものではありません。研修が終わったあとで「ああすればよかった」「こうすればよかった」と思うことがありますよね。せっかく頑張って企画したのに,研修生の反応が違ったり,時間配分がうまくいかなかったり…。
でも,どこがよくなかったのか,いま一つ理由がわからないということもあるのではないでしょうか?

実践した研修を振り返り,改善していくときには,全体をみることが必要です。しかし,その研修を部分ごとに見直すことで,より効果的な振り返りをすることができます。

コースの要素

研修コースは,次の6つの要素があります。

ニーズ:個人が何らかの技能を習得したいと思うこと,あるいは組織がある個人に何らかの技能を習得させたいと考えていることを示します。ですから,ニーズがなければコースの設計は始まりません。コースを設計するときには,まず,ニーズを把握して分析することが必要になります。
ゴール:このコースの終着点を示します。このコースを受けたときに,どのような技能が,どれくらいのレベルで習得されているかという指標になります。
リソース:講義資料やスライド,ビデオ教材,パソコンなど研修生が学習するときに使用する資源になります。
活動:研修生がコースの中で行うあらゆる活動を示します。たとえば,「講義を聴いてメモをとる」「あるトピックについてグループワークを行う」「ロールプレイを行う」「レポートを書く」「スライドを使ってプレゼンテーションを行う」などです。
フィードバック:グループワークやロールプレイなどにおいて,ほかの参加者から受け取る反応になります。また,提出されたレポートに対して,講師から返されるコメントもフィードバックにあたります。
評価:このコースを受けることによって,習得すべき技能がどれくらい身についたかを測定します。直接的には個人の評価になるのですが,これがそのままコースの有効性を確認する指標にもなります。

「ロケットモデル」で研修全体の改善を図る

研修コースをモデル化したものとして,研修設計の「ロケットモデル」があります。

ロケットモデルのエンジンに当たる部分が,研修生のニーズであり,このニーズがコース全体の推進源になります。そして,ロケットの先頭にくるのがゴールです。ゴールに向かって研修コースの中の一つひとつのインストラクションが進んでいきます。胴体部分は,学習者が行う活動です。そして,翼がリソースフィードバックになります。

ロケットのパーツは,一つひとつ独立しています。その上で,全部が組み合わさり一つのコースを構成しています。したがって,パーツのどこか一ヶ所が欠けただけでも,このロケットはうまく飛ぶことができません。ニーズをあいまいにしたままゴールを設定すると,コースは迷走するし,リソースと講義だけを提供して学習者の活動やフィードバックがなければ,一方通行の研修になってしまいます。

これまで実践した研修,これから企画・運営する研修に当てはめてみて,飛べそうなロケットになっているでしょうか?
次回は実践例も踏まえて,研修の振り返りについてお伝えしていきます。

参考文献
向後千春(2015)上手な教え方の教科書ー入門インストラクショナルデザイン.技術評論社

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