見出し画像

【授業・研修のレシピ】 「教えられ上手」 8つのポイント

効率的で効果的,そして魅了ある教え方をするためには,「教え方のスキル」を身につけておく必要があります。そのため,この時期には,新入職者を迎える準備として「教え方研修」をいくつか開催しています。しかし,どれだけ教え方がうまい人でも,このような経験をしたことがあるのではないでしょうか。

  ・教えやすい人と教えにくい人がいる
  ・同じように教えても,相手によって伝わり方が違う
  ・教えてもらうことを当たり前だと思っている人がいる
  ・教え方が悪いなど,教える側の非難ばかりする人がいる

教えやすい人とは,教えることが楽しく教えがいを感じるような相手です。一方で,教えにくい人とは,教えていて楽しくない相手です。その場合,相手のスキルは上達しないし,教える側は自分の教え方に原因があるのではないかと考えて,教えることへの自信やモチベーションが低下してしまいます。「仕事をしながら教えるなんで無理…」という声が聞こえてきそうですね。

なぜこのような事態が起こるのか。それは,新入職者など教えられる人が「教えられ上手」ではないからなんです。そこで,今回は「教えられ上手」になるためのポイントについてご紹介したいと思います。

教えられ上手になるためのポイント

教えられ上手のポイントは8つあります。

図1

教えられることを仕事と捉える
教えられ上手になるためには,教えてもらうことを「仕事」として捉えるとよいでしょう。新入職者の中には,仕事を始めて間もないのに,業務内容の「好き・嫌い」,指導者や職場環境の「合う・合わない」を言う人がいます。しかしこれらは,スキルが不十分,かつ,自信がないため「嫌い」「合わない」と感じるだけなんです。じっくり教えてもらえる期間はほんの数年しかありません。教えられる立場のうちにその立場を利用して,先輩たちから知識やスキルをどんどん吸収するようにしましょう。

明るい表情・反応
いつもにこやかな人には,気軽に声をかけられます。そう,教えられ上手な人は,いつも「明るい表情」なんです。反対に,暗い表情の人には声をかけづらく,話しかけるのも億劫になります。心の状態(感情)は表面に出やすいので,常に表情を意識するとよいでしょう。また,声をかけたときの「反応」も重要です。すばやく反応してくれる人には,どんどん声をかけたくなるものです。明るい表情とすばやい反応で,教えてもらうチャンスをどんどん増やすようにします。

素直さ・率直さ
学校では「教えてください」と言わなくても,先生が自動的に教えてくれます。しかし仕事の場合,そうはいきません。もし,業務のスキルが不足しているのに一人で実践したら,失敗して自信を失うだけです。わからないことがあるときには,素直に「わかりません」と言い,率直に「教えていただけますか?」と伝えましょう。職場で早く一人前になりたいと思うのであれば,わからないことをわからないままにしない,教えてほしいと頼む率直さが必要になります。

旺盛な好奇心
何に対しても好奇心を持てるのは強みです。先輩たちは,自分の話に興味を持ってくれると嬉しくなり,どんどん教えたくなります。基本的な知識や技術にとどまらず,部署の風習や時事ネタなども教えたくなるでしょう。好奇心旺盛な人にはどんどん情報が集まってきます。積極的に「見学してみたい」「実践してみたい」と興味を示すことによって,教えてもらうチャンスはさらに増えるでしょう。

こまめにメモをとりその場で確認
教えてもらっているときに,何もメモをとらない人がいます。これでは,教えてもらっているという真剣さは全く伝わりません。メモをとることは「いま教えてもらっている貴重な時間を無駄にしない」「教えてもらったことをすべて吸収する」という真剣さのあらわれなのです。メモとったら,「いま教えてもらったことは〇〇といいうことですね」とその場で確認しましょう。そうすることで,自分自身の理解度が確認できるとともに,真剣さも伝わります。

教えてもらった直後に自主練習
とくに「技術」は簡単には身につきません。同じことを繰り返し実践することで身につくものがほとんどです。こうした中,教えてもらったことを “教えてもらいっぱなし” で練習をしない,そのうえ,同じことを何度も聞く人がいます。これでは,教える側も “教えたくない” という気持ちになってしまいます。教えてもらったことは「忘れないうちに繰り返し練習する」のが原則です。練習することを習慣にしている人は,確実にスキルが身につくため,実践で失敗しません。また,こうした努力は必ず先輩に伝わります。練習すればするほど,教えてもらう機会も増えるでしょう。

実践したことを報告・感謝を伝える
教えてもらったことを実践したら,教えてくれた人に報告するようにします。同時に「あなたのおかげで〇〇できるようになりました」と感謝の気持ちを伝えましょう。これは,教えてくれた人に対する報酬になります。教えた側は「教えてよかった」と実感することができ,「また教えたい」という気持ちにもなります。周囲に感謝の気持ちを伝えれば伝えるほど,教えられるチャンスもどんどんと増えていきます。

簡単に傷ついたり泣いたりしない・気持ちを切り替える
とくに対人援助の仕事の場合,必要に応じて厳しい指摘をされることがあります。このとき「傷ついた」「泣く」という姿勢をみせても,成長できるわけではありません。教えられるチャンスが減るだけです。厳しい指摘も「自分自身を守ってくれるために言ってくれている」と捉えるようにしましょう。助言は一旦受け入れて,気持ちを切り替えることが,次のステップへ進む早道になります。

教えられ下手よりも「教えられ上手」のほうが,教えてもらうチャンスは多くなります。新しい職場で新しい仲間と仕事をはじめる方々の参考になれば幸いです。

次回は「教えられ上手の育て方」のワークをご紹介します。

参考文献
杉浦真由美(2019)伝わる・身につく ナースのための教える技術 メディカ出版
向後千春・吉田尚記(2017)アドラー式「しない」子育て 白泉社
伊藤大輔ほか(著)・鈴木伸一(編)対人援助と心のケアに活かす心理学 有斐閣

教える技術

アドラー

ダウンロード


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?