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勝手に10選〜夕焼けが似合うイカした曲(後編)〜


(前記)

張り切って後編に移る。


・夕暮れ

1995年に発表されたJUDY AND MARY(以下:ジュディマリ)によるシングル"ドキドキ"のカップリング曲だ。

ジュディマリと言えば、疾走感と軽快さを兼ね備えたロックンロールに、ボーカルのYUKIさんのとてもキュートで張りのあるボーカルと、YUKIさんが手掛けるキャッチーで素敵な歌詞、そして主として作曲を担当し、そのテクニックも型にはまらない、カッティングが踊りまくる、しかしバンドのグルーヴをしっかり保つ、ギターのTAKUYAさんが中心となり、男女問わず若者のハートを鷲掴みしたバンドである。

そんなジュディマリの曲の中では良い意味で異質な存在であり、ジュディマリのポテンシャルの深さを感じさせてくれる実に美しく、キュートなバラードが本曲である。

この曲は作詞作曲ともにTAKUYAさんが手掛けている。

実に素敵な3拍子のバラードだ。
特に演奏面ではTAKUYAさんのガットギターが冴えに冴え渡る。

前奏は実に美しくテンポの聴いたピックを用いた単音弾きの実に素晴らしいギターリフで始まり、全編を通してこのギターリフがこの曲の持つアトモスフィアを形成させる重要なマテリアルを担っている。
本編では、ガットギターのピッキングがまるで舞い踊るかの様に曲に神秘的な彩りを司る。

歌詞は、シンプルかつ抽象的で実にロマンティックな歌詞で、YUKIさんがキュートに歌うと幼少期に聴いたオルゴールの様に煌びやかに胸をときめかせてくれる。

素敵な絵本の中に潜り込めた様な実に素敵で煌めくラブソングなのだ。



・ダンデライオン

1998年にブランキー・ジェット・シティによりシングルとして発表された曲だ。

浅井健一さん(以下ベンジー)曰く、ブランキー史上最もマイルドな曲、との事である。

実に清々しく疾走感に満ちていているが、ブランキーとしてのグルーヴをしっかりと感じることの出来る実に素晴らしいロックである。

曲の構成は前奏、Aメロ、サビ、感想、ラストのミドルエイトから構成される。
イントロはベンジーの弾き語りから始まる。
"愛が終わる時 涙がこぼれたら"からのフレーズがクイっと胸に刺さる。

前奏、間奏は実に煌びやかで美しく切なさも少々トッピングした様な素晴らしいギターリフが冴えに冴える。
テクニカルなギターソロは無く、このリフが随所に使われる事で、この曲の持つ世界観に安定をもたらしている。

曲の構成はAメロ、サビ、間奏と繰り返しとラストのサビ2からなる。

Aメロはとても伸びやかなイメージが心地よく、サビに入ると疾走感と美しさと切なさがミックスされ突き抜ける感じが心地よく、見事な緩急となっている。

歌詞はベンジー曰く、タイアップがあったので思う様に書けなかった、とは言うものの逆にそれがメタファーも含めてポジティブかつストレートな歌詞となっており、実に気持ちが良い。

回想シーンで唯一"夕焼け"から始まるパートがあるのだが、実に情景と表現が美しく印象的なパートであり、思えば曲調も夕焼けによく調和する。

ラストのサビ2の勢いとストレートにポジティブなフレーズが心を否が応でも高揚させてくれる。
全編を通して実に気持ちの良いロックだ。

ブランキーの生み出したミドルテンポのロックにおける間違い無い傑作の1つなのだ。



・夕陽ヶ丘のサンセット

2001年に奥田民生さんの発表したシングル"The STANDARD"のカップリング曲だ。

シングル"The STANDARD"が民生さんが元来色々な意味で苦手とするバラード(大名曲であるが)出会った為が、その鬱憤を晴らすかの様な明るく軽快で疾走感に溢れるロックである。

シンガーソングライターとして、ギタリストとして、ボーカリストとして、曲のレンジも幅広いが、唯一無二の奥田民生さんの世界観を確固として確立し、日本におけるロックシーンに欠かせない存在である。
で、あるが意外にも珍しい事実がある。

"イージュー・ライダー"、"さすらい"など、これからも日本における音楽史で歌い継がれるであろう奥田民生の楽曲であるが、シングル、アルバムを含めてオリコンなどのヒットチャートで1位を取った事が無いのである。

ソロデビューシングル"愛のために"はミリオンセラーとなったがそれでも2位なのである。
しかも、再結成前の初期ユニコーンでも1位は無く、再結成後にアルバムのみ初の1位を獲得するのだ。

要するにオリコンなどのチャートでは、その楽曲の本質的な事が見えず、流行りだったり、時代のノリであったり、もっと言ってしまえば1位を獲得している楽曲なのに、今や誰も歌い継ぐ者もいなく、埋もれてしまった楽曲など星の数程あるであろう。
要は、その時のチャートという概念はきっかけ、参考程度であり、1位イコール名曲とは近くもあれば、程遠い事も多いのかも知れない。

そんな奥田民生さんの実に気持ちが良く、気分が高揚するロックだ。
歌詞は抽象的であるが、丘、というものを人生における以前に見ていた夢みたいな事をメタファーとして表現し、あの丘に登ろうじゃないか、というサビの突き上がるメロディラインが実にポジティブで、心地よい歌詞が気持ちの良いロックと見事に融合した名曲である。



・始まりのサンセット

2017年に斉藤和義さんの配信限定のシングルとして発表され、2018年に発表されたアルバム"Toys Blood Music"に収録された曲だ。

シンガーソングライターとして、また多彩な楽器を駆使して素敵な楽曲を世に送り出し、エレキギターを持たせればイカしたロックンローラー、アコースティックギターを持たせればイカした歌うたいである斉藤和義さんだ。

ジャケットの夕陽がやけに美しく燦々と輝いているが、この写真は斉藤和義さん自身が撮影したものである。

重厚感のあるストリングスから曲が始まり、徐々にドラムとアコースティックギターが融合し更に重厚感を増し、良い意味で容赦の無いストリングスがビートルズを連想させる。

Aメロが始まる。アコースティックギターを主軸に、これはこの曲の魅力でもあるが、ワードを詰め込みすぎていない、丁度良いボーカルが心地良い。
Bメロも控えめにサビへの橋渡しの役割を見事に果たしている。

サビが実に気持ち良い。
素晴らしい点は、サビの頭を"Ah"だけにする事によって、行間を読む様な、一旦思考をリセットする様な絶妙なアクセントとなってエレキギターとストリングスによる、音の深さと、メロディラインの美しさが見事に調和している。

間奏のストリングスも再び重厚感を持ち合わせて更に曲を盛り上げる。

歌詞は、これ以上はない程にストレートでシンプルでポジティブで、素直に真っ直ぐに胸に突き刺さる素晴らしい歌詞だ。

ストレートでポジティブな歌詞と美しく重厚感を兼ね備えたオケが融合した名曲である。


・黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を

2020年にあいみょんによって発表されたアルバム"おいしいパスタがあると聞いて"に収録され、オープニングを飾る曲だ。

あいみょんは実に400曲以上もの曲をストックしているが、アルバムを作る際には基本的に全ての曲を聴いて、今の自身に響いたり、今歌いたい曲をピックアップしており、結果的に、このアルバムでは、その2、3年前という比較的に最近制作された曲から、このアルバムの中にピックアップされた、という。

あいみょんはこの曲を"意思表示に近い"という。

"愛は全てを解決しない
金があれば何でもできるかもしれない"
という、どきりとするフレーズから曲は始まる。実に的を得ていて、いくら愛があっても解決しない事、起こってしまう事はあり、金があれば何でもできるかもしれない、という事は、しれない、だけで、出来ない可能性はある、という事だ。

余裕がある人はカッコいいけれど、余裕が無い方が燃えたり、高いものに目は眩むけど、安っぽいものを最後まで信じてみたり、あいみょんが培ってきた、あいみょんを育ててきた反抗みたいな事が、今も変わらない事を再確認し、黄昏にバカ話をしていた頃と変わらない自分に、もっと刺激を、もっとカオスを、との反抗精神が変わらない、という事も確認した意思表示に思われる素晴らしい歌詞である。

アコースティックギターを主軸にウクレレやアコーディオンなどのアンプラグドな楽器が多様され、途中からエレキギターも入り、陽気で軽快なサウンドと歌詞が見事に融合して、聴く者に自身の意思を示しながら、聴く者の胸に何かを間接的に問い掛ける様な、実に素晴らしい楽曲である。



(後記)

今回、夕焼けをテーマに曲を勝手に10選した感想は、なんだか人は夕焼けを見ると素直になれたり、ポジティブになれたりする、という印象が強く、ミディアムテンポのバラードが多い事も実感した。
心に冷静さや平穏や素直さを与えてくれる存在が夕陽なのかも知れない。

kendrix様、リクエストをありがとうございました。

読んでくださった方々へ
ありがとうごさいました。





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