見出し画像

【村上春樹】物語は、人の意識がうまく読み取れない心の領域に光を当ててくれる

物語は、僕らの意識がうまく読み取れない心の領域に、光を当ててくれます。言葉にならない僕らの心を、フィクションという形に変え、比喩的に浮かび上がらせる。それが、僕ら小説家がやろうとしていることです。[4月1日付:産経新記事(web版)より引用]

今年4月1日に村上春樹氏が早稲田大学の入学式で新入生に捧げた祝辞の一部です。

「それは例えばこういうことなんだよ」というのが小説の役割。回りくどいため、小説は直接的には社会の役に立たない。でも小説がなかったら、社会は健やかに前には進めない。

なぜか。

それは社会にも「心」があるから。

意識や論理だけではすくいきれないもの、すくい残されてしまうもの。そういうものをしっかり、ゆっくりすくい取っていくのが、小説の、文学の役割です。心と意識の隙間を埋めていくのが小説です。[4月1日付:産経新記事(web版)より引用]

小説というのは1000年以上にわたり様々なかたち、様々な場所で、まるで松明のように人から人へ受け継がれてきた。村上春樹氏は、新入生の中に、その松明を受けついでくれる人がいたらとても嬉しいと言い、最後はお祝いの言葉でスピーチを締めくくっています。

大きく頷くしかない、見事なスピーチ。心の底からその通りだと思いました。

普段意識してない心の部分に光を当ててくれるから、感動したり、救われたり、笑顔を取り戻したり、新しい発見があったり…

今でも時々思い出して、ゆっくり再読したくなるスピーチです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?