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ヒリつく感情の表出が好きだからアニメ『オーバーテイク!』が楽しい

どうにも敵わない目の上のたんこぶ。

自分だって努力を重ねていて、それなりに結果も出しており、評価だってされているのに、それでも敵わない「圧倒的No.1」。

そんな天才にぎりぎり手が届かない存在が、妬み、イラつき、自分の全存在をかけながら挑んで敗れる切なさが………しんどくて、つらくて、愉しい……ので、アニメ『オーバーテイク!』の3話が楽しかったです!!

『オーバーテイク!』は自動車レースにおける若手の登竜門であるフォーミュラ4(F4)を舞台とした物語。

私が悶えたのは、F4内で圧倒的強さを誇るチーム「ベルソリーゾ」のファーストドライバーとセカンドドライバーの衝突だ。

ファーストドライバーは常に表彰台の真ん中に立っている実力者。

顔も良く、愛想もいい。女性ファン多数。どちらかというとチャラい印象の人物。

しかし予選3位となってしまったレースでは、オーナーにその原因を問われると「すみません。ダウンフォースを強めにセッティングしたのがコースと上手くハマっていませんでした」とスパッと答え、知性も判断力も自己評価能力も言語化能力も高いことがうかがえる。

外で見る彼はふわふわした存在だが、チームテント内のピリッとした空気の中でもきちんと自分の仕事をこなしている。
伊達に実力の世界でカテゴリートップを張っているわけじゃない。

見た目や振る舞いは正直好みではないのだが、したたかで頭が良く、ちゃんと強いところはどうもときめく。

自動車競技のドライバーはスポンサーを集める力も必要らしい。そんなところも意識して愛想良く過ごしているとしたら、その全分野を高クオリティでカバーできている様に慄く。

ただのふにゃふにゃ男ではないのだ。

◾️◾️

で、そんなファーストドライバーに複雑な感情を抱いているのがセカンドドライバーだ。

わかりやすく嫌っているわけではない。助け合っている面もみられ、普段は平和に過ごしている。

ファーストドライバーもインタビューでは「僕が脇目もふらず走れるのはセカンドドライバーのフォローのおかげ」と話し、「俊くん(セカンドドライバー)て本当はもっと速いんだよ」とセカンドドライバーを認めている様子。

でも、いちドライバーとしてはやはり自分が一番になりたいのだろう。

セカンドドライバーはどうしてもファーストドライバーのフォローに回ることが多いし、チームとしても何かとファーストドライバーを優先するものだからだ。

少し調べたら現実世界のF1でも、ファーストドライバーとセカンドドライバーには色々しこりやトラブルがあるらしい。

なるほどな。

そんなセカンドドライバーの彼がファーストドライバーより予選順位が良く、「コースと今日のセッティングがあっている、調子もいい、だから前を走らせてほしい」と言い出すのが第3話だ。

しかし彼はオーナーから、良いけれども「ただし20分だ」「最初の20分で1位を抜けなければファーストドライバーを前に出せ」と言われてしまう。

条件付きの了承で、要するにファーストドライバーの牽引役だ。
そんなオーダーに彼の希望やプライドはずたずた。

そのまま挑んだレースで彼は予想通りチームの指示を破り………という展開なのだが、その想定内でありながらも観ていて心苦しく、青くさい、しかしながら共感もできる「人間くささ」があまりにも良くて悶えた。

彼は速く走れるのだろうし、努力もしているが、精神面や視野の広さ、判断力に不足がある。ファーストドライバーの器ではまだないのだろう。
その差が切なくて、身に沁みて。冷静な判断を下せるオーナーさんがこれまたかっこよくて。

「勝ちを目指す」ということのシビアさに興奮してしまうのだ。

◾️◾️

ライバルチームのバトルに興奮してしまったけれど、元々は「人を撮れなくなったフォトグラファー」が主人公とF4と出会い、「主人公を撮影できた」ところから始まる物語。

レース要素もありつつ、人間の出会いと変化、人生の苦しみや再生を描いている。

物語を進めるバランス感覚がとても良く、毎話観ていて楽しい。
我が家は夫がモータースポーツ好きなので、解説をきくと更に楽しめる。

私は「ダメだったり醜かったり自らをコントロールしきれない人間の弱さ」が表出した瞬間に「あぁなんて人間らしいんだ!」と昂ってしまう性質で、それでも気高い精神の持ち主が好きだ。
私自身は争いを避け「どうしても勝ちたい」と思えない傾向があるので、自分には無いものだからか、バチバチと真正面から衝突するようなヒリつく関係が好き。

そんな私のツボを押さえつつ、ちょうど良いしんどさとカタルシスが得られるのでおすすめです。

各種動画サイトでも配信されているのでぜひ観てください。

今期は『MFゴースト』(『頭文字D』の後継作で、自動車のEV化が進んだ時代に、化石燃料を使った自動車による公道でのカーレースバトルを描く)もあってモータースポーツ系アニメが個人的に熱い。

『MFゴースト』は公道で、『オーバーテイク!』はサーキットレース。同じ面も違う面もあり、どちらも人間関係の描き方も巧みだ。

私は運転免許も持っていないくらいなのに、熱く車を操る人たちに興奮してしまうのはなぜなんだろう。
やったことがなく、ルールに詳しいわけでなくても引き込まれる物語というのは素敵だ。

最後まで楽しみである。

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