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刑法の基礎の基礎についてまとめてみた。

この記事は、各種試験(司法試験や予備試験、ロースクール入試、学部定期試験等)のために刑法を勉強し始める人に、その第一歩として読んでもらいたいものだ。

ざっくり言うと、刑法は犯罪の成否(とその処罰)について考える科目だ。

で、重要なのが、犯罪の定義(重要だけど暗記しなくて大丈夫)。

犯罪は、構成要件(Tb)に該当し、違法(R)で有責(S)な行為を言うとされている。

つまり、構成要件該当性、違法性、有責性全てを満たしてはじめて犯罪と言えるのだ。

逆に言うと、このうちどれか一つでも欠ければ犯罪は成立しない。

これらを考えるのが刑法(場合によってはこれらに加え、上述の通り量刑、刑の重さについても考えさせられる)。

で、構成要件該当性、違法性、有責性の順で全て必ず検討する。

構成要件該当性では、各条文に定められた行為が、問題となる事案で認められるか考える。

その際、主体、客体、実行行為、結果、因果関係、故意過失を中心に考える。

違法性と有責性については、それぞれについての阻却事由が無いかどうかを考える。

例えば違法性阻却事由としては正当防衛(刑法(以下略)36条1項)、責任阻却事由としては刑事未成年(41条)等がある。


…こんな感じで難しく書いても分かりにくいと思うので、殺人罪の事例をモデルに考えてみよう。


<事例>
AはVの腹部を複数回ナイフで突き刺し、Vを失血死させた。

<検討>
まず、構成要件該当性から考えていこう。

刑法199条には「人を殺した者」と書いてあるから、Aが「人を殺した」といえるかどうかが問題となる。

今回は主体、客体については特に問題にならない。

実行行為とは、構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為をいう(要暗記!)。

AのVの腹部を複数回ナイフで突き刺すという行為は、重要な臓器が集まった人体の枢要部に対するものである。

また、かかる行為はナイフという極めて殺傷能力の高い武器を用いてなされたものだ。

したがって、かかる行為はVの死亡という構成要件的結果発生の現実的危険性を有するといえ、殺人罪の実行行為性を有する。

Vは死亡している(結果が発生している)。

かかる死亡結果はAの上述の行為によるものであり、因果関係も認められる。

故意に欠くところも無い。

よって、構成要件該当性が認められる。

違法性阻却事由、責任阻却事由も存しない。

よってAのかかる行為に殺人罪が成立する。


こんな感じで犯罪の成否を検討するのが刑法。

<事例>のような、誰が見ても殺人とわかるような行為についても、刑法学として考えると上述のようにそれなりに考えるべき事がある。

刑法の基礎の基礎としては、ざっとこんな感じ。

最後に、これから刑法を本格的に勉強する上で気を付けて欲しい事。

必ず、どんな事案でも構成要件、違法性、有責性の順で全て検討する!
(もちろん問題文で具体的な指示があればそれに従うこと。)

論点学習のときには、自分が今どの部分を学んでいるか意識する!
(例えば、『不真正不作為犯の成否』という論点であれば、構成要件該当性の中の実行行為についての話である事を忘れないようにする。)


それでは、刑法勉強の健闘を祈ります。

コメント等あればお願いします(もちろん質問もOK!)。

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