マンション管理士の雲行き
最近知人から、マンション管理士って意外に難しい国家資格なんだね、何でなの?と言われたので、今日はそんな、隠れ国家資格であるマンション管理士という資格について少しご説明しよう。
マンション管理士は、管理組合の運営に掛かる問題にアドバイスをしたり、居住者間の利害関係調整や、大規模修繕の計画立案など、マンション運営におけるコンサルタント的な役割を担う。
マンション管理士資格の試験は合格率が毎年およそ8~9%という狭き門だ。
しかし、その資格内容は単なる「名称独占」であり、マンション管理士にしかできない業務というものはこれまでなかった。
その上、“食えない資格”として名高く、人気もない。
そんなマンション管理士だが、2022年度から始まる「管理計画認定制度」で、初めて独占業務が生まれた。
それが、「管理計画認定手続支援サービス」における「事前確認」の業務だ。
国により「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」が出されたことで、自治体は「マンション管理適正化推進計画」を作成し、「管理計画認定制度」をスタートさせている。
この、自治体による「管理計画認定」のために、管理組合は“管理の状況”を自治体に届け出る必要がある。
「事前確認」とは、マンションの「管理計画」が国の基準に適合しているかを、自治体による審査に先立って、事前講習を修了したマンション管理士が実施できる制度だ。
マンションから報告された内容を自体職員が一つ一つ確認することは現実的でないため、マンション管理士にその報告書類の事前確認をする資格を与えたのだ。
神戸市などでは、この「事前確認」なしでは管理組合からの「管理状況報告」を受け付けない自治体もある。
せっかくできた独占業務というのに、登録済マンション管理士のおよそ10%程度しか、事前確認のための講習を受けていない。
それもそのはず、この “事前確認業務” は単に数字をチェックして、判定するだけの業務なのだ。なんなら、エクセル関数で判定できそうだ。
マンション管理士の本来の仕事は、所有者間の利害関係が複雑に絡んだ、マンションという共有物の管理に知恵と工夫を発揮する仕事だと思う。
住まい方や、世代も異なる各所有者の「利害を調整しつつ、将来を見越したアドバイス」を行うという人間らしい業務が、マンション管理士の仕事だとわたしは考えている。
容易にITに置き換わる仕事を独占させてくれても仕方がないな・・・と,
多くのマンション管理士がため息をついていることだろう。
曇り空は一向に晴れる気配はない。