感情[インスタントフィクションその19]

統計学を教える教授の話はいつだっておもしろい。一見すれば答えに思えるようなものでさえ、それが実は自身がそうであると信じたいものでしかないと教えてくれる。
「無作為に選ばれたアンケート結果を考えます。ゲームを毎日2時間以上すると答えた人のなかでおよそ6割の人が眼鏡やコンタクトレンズを利用していると答えました。さて、視力の低下はゲームによるものと考えられるだろうか。」
ゲームを多くする人はそれだけ目を酷使するんだから、それが原因になっているに決まっている。だから答えは考えられるしかないだろう。そうやってみんなが答えに辿り着いた頃合いにいつも教授は問題に追記する。
「アンケート結果すべての回答者のおよそ8割が眼鏡、コンタクトレンズの利用者でした。さて、視力の低下はゲームによるものと考えられるだろうか。」
友人たちは皆それを聞いて後出しでずるいと憤慨する。本当にずるいのだろうか。もし理屈を考えず、本当の意味で数字を信じるならば、足りないものがあることに気づけるはずではないだろうか。私は私が思っている以上に感情的なのかも知れない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?