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30歳サラリーマンが選ぶ読書大賞2022

『たくさん本を読んでて偉いね』

そう言われることがありますが、これには若干の違和感を覚えます。
私としてはどこまでいっても読書は娯楽のつもりです。

月4〜5冊ほど本を読み、SNSに感想を書いていると、友人からオススメの本を聞かれる機会も増えました。
すすめる本は、その人その時によって様々ですが、今年読んだ44冊の中で、自分がこれおもろい!と思った本を紹介したいと思います。

ただ冒頭に書いたように私にとっての読書は娯楽です。
もし『教養を得るために読書をしたい』『読書を通じて自己啓発したい』という方にとっては期待はずれな内容かもしれません。
ビジネス書を選出する感じのタイトルをつけておいてズルいのは自覚してます。

ただそういった方にこそ、オススメしたい本もありますので、どうかお付き合いください。


①若林正恭『ナナメの夕暮れ』

オードリー若林さんのエッセイです。

若林さんが元々は人見知り芸人の代表的な存在だったことなど、今の10代の人達は知らないのではと思ったりします。
それぐらいバラエティ番組でMCを務める今の姿が印象的です。

若林さんが書く文章って、人見知り・自意識過剰といった自分の中にあるネガティヴな感情を痛快なまでに吐き出していて、それがすごくおもろくて好きなんです。

でも『ナナメの夕暮れ』では、世間に受け入れられ、アイデンティティになりつつあった人見知りなどの要素を捨て去り、そこから変わっていく様子を書き出しています。
そしてその姿さえも笑いに変えられるからこの人は本当にカッコいいと思います!

南海キャンディーズ山ちゃん(山里亮太)と組んでいるユニット『たりないふたり』をご存じでしょうか?

即興漫才ライブの中で山ちゃんが女性タレントを皮肉った時に『お前まだそんなこと言ってんの?』とツッコんでいました。
このワードにこそ、若林さんの変化が如実に表れている気がします。

私も流行りに乗っかることやオシャレなカフェでMacBookを開く人をちょっと斜めに見ていた時期があります。でもそれってただの自己防衛で一周回ってダサいことに気付かされました。

本の中にも他人への否定的な視線はいずれ自分に返ってきて人生の楽しみを奪うと書いていましたが、まさにそんな感じです。

この本を読んでから、それまでナナメに見ていた行為をど真ん中で自分もやるようになった気がします。

この1冊だけでも充分面白いんですが、『社会人大学人見知り学部 卒業見込』という過去の著書も合わせて読むとその変化を感じ取りやすいかもしれません。

この本の好きなフレーズ

  • 趣味は絶望に対するセーフティーネット

  • 自意識を守るために誰かが楽しんでる姿や挑戦を冷笑していたらあっという間に時間は過ぎる。

  • 歳をとったら世界を肯定する姿を晒す。

こんな人にオススメ

  • お笑い好き(リトルトゥース)

  • 自分を人見知りと認識する人

  • 周囲からの見られ方が気になってしまう人

  • スタバでグランデを注文することに抵抗がある人


②浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』

次に就職活動のグループディスカッションで展開していくミステリー小説です。


最終選考に勝ち残った6人の就活生。
彼らに課せられたのは数日間にわたってチームで取り組む課題。そして選考最終日にグループディスカッションを行い、うまくいけば全員合格するはず…だったんですが。

急遽、テーマが変更。
6人の中で1番採用に相応しいのは誰かを話し合い、結論立てた1人が採用になるという無慈悲なテーマに。そしてディスカッション当日、何者かが置いたある封筒が就活生6人を更に追い込んでいきます。

私も就職活動を経験したので、グループディスカッションにおける就活生のフェイクな感じがすごくリアルで共感できるんですよね。

また作者である浅倉秋成さんは『俺ではない炎上』の時にも感じたんですが、物語の前半と後半で人の印象をガラッと変えてくるのを得意としてるんじゃないかと疑っちゃいます。この手法はいい意味でズルいです。

『六人の嘘つきな大学生』を読んでいると人の本質を見極めて人を評価したり採用することの激ムズさを実感します。

こんな人にオススメ

  • 会社の人事担当者や評価者

  • 就活生や就活を経験した人

  • ミステリーやどんでん返しが好きな人


③アルボムッレ・スマナサーラ『怒らないこと』

怒りに対する認識が大きく変わった1冊です。

怒りってほとんどの人が抱いたことのある感情だと思います。

しかしこの本を読んで
怒りは身体に猛毒が入ったのと一緒。
怒る人は幸せの大泥棒。
"物"ではなく"幸福"という点では泥棒よりタチが悪い。

という考え方を知ってから、自分が怒ることはほとんどなくなりました。(元々怒るタイプでもない気もしますが)
究極のアンガーマネジメント本だと思います。

そして逆に怒ってくる人に対する見方も変わりました。

明石家さんまさんが
"怒る人は自分が偉いと勘違いしてる人だ"
とコメントしていましたが、まさにその考え方です。
そして自分に入った猛毒を除去できない心の弱い人だと認識できるようになりました。
怒る人はある意味可愛そうな人なのです。

この本の好きなフレーズ

  • 私は完全だ、正しいと考えるから人は怒ってしまう。釈迦でもないのに。

  • 言葉は不完全、伝わる保証などない

  • 立場ではなく、行動が正しいかどうか

  • 怒りは身体に猛毒が入ったのと一緒

こんな人にオススメ

  • 怒りのコントロールに悩む人

  • 怒りをぶつけられ凹む機会が多い人


④ビル・パーキンス『DIE WITH ZERO』

最近、お金の増やし方を教えてくれる本が書店に多く並びます。
一方で『DIE WITH ZERO』はお金の使い方を考させられる本です。


割引現在価値という言葉があります。
これは今使える100万円と30年後に使える100万円が同じ価値ではないことを示します。

たしかに老後の不安からがむしゃらに働き、お金を貯め込んでも60歳になった時には体力が減っている分、旅行など使える選択肢が減っているかもしれません。

経験を先延ばしすることの代償の大きさを想像したことで、今まで漠然と考えていたバケットリスト(やりたいこと)をいつやるのか?とタイムバケットとして考えるようになりました。

そして親が健康なうちにスポーツを楽しんだり、今身近にいる仲間とのゴルフコンペを企画し出資したりと私自身の思い出にお金と時間を使ったここ1年でした。

だからといって将来のことは考えずに、今をハッピーに生きようという現実逃避的な考え方ではありません。
ただ漠然と将来に不安を抱えがちな現代社会において、金なんかのせいで余計な不安を抱えてはいけないと気づかせてくれるこの本の希少性は高いように思いました。

この本の好きなフレーズ

  • 金の不安にかられて働くことは恐怖の奴隷

  • 金ではなく、健康と時間を重視する生き方

  • 人は終わりを意識すると幸福度が上がる

  • 人生で1番大切なのは思い出を作ること

こんな人にオススメ

  • 将来への不安から投資や貯金をする人

  • やりたいことリストを見直したい人

  • 人生1回ということを忘れている人


⑤佐久間宣行『ずるい仕事術』

テレビプロデューサーや作家として活躍する佐久間さんの1冊です。

"ずるい"という単語がついているので、賢く手を抜きながら仕事をこなす術が記載されているのではと誤解が生じそうですが、まったく逆です。

仕事に対しては全力を注ぎつつ、決して自分を消耗させないことや営利企業に勤めながら自分のやりたいことをやっていく考え方をここでは"ずるい"と表現しているように思います。


すごい熱量で仕事に打ち込みながら、それを楽しんでいる姿が印象的な佐久間さんなので説得力があるんですよね、会社や自分を俯瞰できているかんじも。
こういうバランス感覚で働ける人に憧れるし、自分もそうありたいなと感じた1冊でした。

あるテレビ局(テレ東以外)では若手社員が辞めたいと申し出た時にこの本が手渡され、読み終わった時に思い直したというエピソードもあるそうです。
それも十分うなずける内容になっています。

この本の好きなフレーズ

  • 会社という箱が全てという人間関係は避ける

  • 仕事の話を一回もしない友達を大切にする

  • 仕事における自分の得意不得意を知っていく

こんな人にオススメ

  • バラエティ番組が好きな人

  • 仕事がしんどくて楽しめない人

  • 今の仕事を辞めたいと考えている人

  • 企画書の作り方に悩む人


⑥レジー『ファスト教養』

教養に対する認知が大きく広がった1冊です。

今やファストフード感覚で手っ取り早く教養を身につけられるコンテンツが転がる時代です。(YouTubeや聞く読書など)
書店にも『教養のための〇〇』といった本がたくさん並びます。

その背景にはビジネスパーソンの変化の激しい時代に取り残されたくないという焦燥感が関係しているとこの本は指摘し、その風潮に警鐘を鳴らしています。

そして教養はビジネス(お金)のためではなく、人生を豊かにするためであり、ビジネスに求められるコスパやスピード感とは相性が悪いものであると教えてくれます。

個人的にこの本を読んで感動した部分があります。

私がこれまで読んだ中でも指折りのお気に入り本に山口周さんの『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』があります。
同書はビジネスにおける論理的思考には限界があるからアートに触れる事で発想を広げ、ひらめきを養うべきというメッセージが発せられています。(あくまでもざっくりとした私の要約です。)

ファスト教養ではこの本を取り上げ、ビジネスのためという論理的な動機でアートに触れようとすることの矛盾を指摘しています。
完全にやられたと思いました。

そしてもう一つ、この本の好きなところは
映画『花束みたいな恋をした』を取り上げたファスト教養的な指摘です。
この映画では主人公の麦くんと絹ちゃんが学生から社会人になる過程ですれ違っていく様がリアルに描かれています。
そしてデート中に立ち寄った本屋で麦くんが前田裕二さんの『人生の勝算』を手に取ったシーンは2人のすれ違いの象徴として切なくなった人は多いはず。私もその1人です。

社会人となり、結果が求められる麦くんに対するむなしさ。そしてむなしさの理由をファスト教養的視点でものの見事に言語化されていたのが最高でした。


冒頭の文章にも通ずるように"読書=賢くなる"みたいな見られ方があまり好きじゃない私にとって『ファスト教養』は共感できる部分が多く、それでいて好きな本への逆説的な視点、好きな映画の象徴的シーンの言語化。
推さずにはいられない1冊です。

この本の好きなフレーズ

  • 役に立つ立たないに関係なく学びの楽しさを味わうこと

  • 文字から像までに時間的なラグがある。そこで想像力と思考力が働く。それが本であるべき理由。

こんな人にオススメ

  • 手っ取り早く教養を得たいと考える人

  • 花束みたいな恋をしたに切なさを感じた人

  • あっちゃんのYouTube大学のチャンネル登録者


おわりに

キリ良く5冊を紹介しようと思っていましたが、絞りきれず6冊を紹介しました。それぐらい今年読んだこの6冊は自信を持って推せます!

そして今年読んだ本は44冊。
ファスト教養ではないですが、本を沢山読むことに意味はないと思うからこそ、節目の50冊にこだわらず、結果的に48〜49冊と超中途半端な数で着地できたらなと思っていたりします。

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