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中国 政協と2人の学者②

「あの有名な賈慶国(か・けいこく)先生が、ああいうことを言ったのには驚きましたね」

先日、とある中国通と「今回の中国全人代(全国人民代表大会)をどうみるか」について意見を交わした際、先方から言われたことです。
その「ああいうこと」に関して、少し掘り下げます。


習近平政権下では異例の苦言

結論から入ります。
北京大学の賈慶国教授が、習近平政権による統制強化の「武器」のひとつである反スパイ法、とりわけ昨年7月の反スパイ法強化に関して、SNS(WeChat)上で、こうモノ申したのです。

一些涉外法律出台后,实施细则还没有出来,导致一些困惑。如最近出台的反间谍法,还没有实施细则出台,明确收集什么信息和如何收集信息才不构成违法,导致外部误解。

https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_26585056

「一部の渉外法律が出されても施行の細則がまだなく、困惑を引き起こしている。例えば最近出された反スパイ法も実施の細則がなく、どういう内容の情報をどう集めれば違法ではないのか明確でなく、外部の誤解を招いている」

毛沢東時代を思い起こさせるほど言論統制が強まっている今の中国において、こうした意見表明が社会的立場のある人から発せられるのは異例です。

賈慶国教授(北京大学HPより)

私の知り合いが「驚きました」と言ったのも、賈慶国教授による指摘の内容というより、指導部に注文をつけたこと自体が驚きだったというわけです。平たくいえば、「身の安全は大丈夫であろうか」という心配が込められています。

中国に留学生が来なくなっている

賈慶国教授が反スパイ法に苦言を呈した背景には、中国に来る留学生の数が大幅に減っていることへの危機感があります。

教授は、「近年、外国人学生、とくに先進国から中国に留学してくる学生が激減している」として、例えばアメリカからの留学生は10年前のピーク時は1万5000人だったのが、2023年には350人へと9割以上も少なくなったと指摘しました。また、韓国からも2017年に比べて78%も減ったと説明。

この間、新型コロナウイルス禍が起きたのは確かではあるものの、賈慶国教授は「それだけでは説明がつかない」として、他の要因として▼中国経済が停滞してきたために中国で就職することが難しくなったことや、▼学術論文の審査で「中国的な政治的正しさ」が求められてしまって外国人学生が不利になるケースがあることと並び、反スパイ法の弊害を挙げたのです。

中国のことを研究したいと考える外国の学生がいても、「研究のために現地でいろいろと情報を集めると、スパイの疑いをかけられて拘束されるのでは?」という不安を引き起こしているというわけですね。

以前も書きましたが、実際問題、外国企業の駐在員が「反スパイ法」に抵触したとして拘束・起訴され、何年も拘置所で過ごす羽目になるケースが後を絶たないのです。外国の学生が留学に二の足を踏むのは無理もありません。

「グローバル・スタンダード」を知るがゆえに

さて、人物紹介を後回しにしてここまで書きましたが、勇気ある発言をした賈慶国教授とはどのような人なのでしょうか。

専門分野は国際政治で、主に米中関係や台湾、それに日中関係などについて活発に研究・発信をしています。アメリカのコーネル大で博士号を取得して、バーモント大やカリフォルニア大サンディエゴ校、それにオーストラリアのシドニー大などで教壇に立ちました。
ややリベラル寄りとされるブルッキングス研究所で客員研究員として北東アジアの政策を研究したことも。

アメリカをはじめとする西側の流儀というか、「グローバル・スタンダード」を十二分に理解している研究者です。

余談ですが、「グローバル・スタンダード」という言葉、これ、和製英語です。英語ネイティブの人に使っても、おそらく通じません。

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