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地域のつむぎ手の家づくり|地域と共に生きる、信州に根ざした家づくり<vol.39/美し信州建設:長野県上田市>

【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。

今回の<地域のつむぎ手>は…

1976年創業の美し信州建設は、木曽檜をはじめ長野県産の遠山杉、信州唐松、赤松といった地場の木材を生かし、職人の手仕事による木の家づくりが特徴です。2015年に代表取締役社長に就任した中嶋大介社長は、創業者の父が掲げた「協働と和」の精神を継承し、地域に根ざした家づくりを手がけています。

創業者の父が掲げた「協働と和」の精神で地域に根ざし、
職人と共に家づくりを行う同社社長の中嶋大介さん(*)

地元の木材を生かすためには、職人の存在が欠かせません。創業当時から職人の確保と育成に力を注いできた同社は、多くの職人がパートナーとして在籍しています。パートナーたちはベテラン職人が集う「信匠会」、若手中心の「翔和会」を運営し、社員と共に技術の向上や講習、イベント、地域でのボランティア活動などを行っています。

性能と意匠を兼ね備えた100年続く住まいを

世代を超えて住み継ぐ「100年の家」づくりを掲げ、上質な木材を使用するだけでなく、耐震性や断熱性など住宅性能の高い住まいづくりにも取り組んでいます。長きにわたって構築してきた木の家づくりに、更なる意匠・快適性をと考えていた中嶋社長は、2021年に建築家・伊礼智さんとコラボして自邸を建築。南には畑が広がり、遠く蓼科山を望むのどかな風景の中にしっとりと佇む住まいで、風景が抜ける南東がリビングになりました。HEAT20・G2 の断熱性能と耐震等級3、全館空調換気給湯システム「OMX」を搭載し、機能性とデザイン性を兼ね備えています。

吹き抜けのダイニングと奥は杉小幅板風羽目板天井のリビング。
空間をほどよく区切り、様々な居場所を確保(*)
やすらぎを感じる障子の明かり。
地域になじむ日本の家屋のよさが伝わる(*)

その他にもたくさんの住まいをラインナップしており、家族が集まり、信州の自然を感じ、世代を超えて住み継いでいくフルオーダーの「100年の家」や小さくても豊かな暮らしを目指した「i-works project」、セミオーダーの「木造ドミノハウス」、自然エネルギーを効率よく取り入れる「OMソーラーの家」や「エアサイクルの家」などに対応しています。

豊かな自然に融合する住まい。玄関まわりには黒のガルバリウム鋼板を用いて、
白壁とのコントラストが美しい
開口部には障子を建て込み、和の落ち着きを感じさせるLDK。
リビングの一部を吹抜けにすることにより、開放感を創出

地域に貢献し、人とのつながりを大切にする

地域に生きる会社として、23年にわたって毎週木曜日に早朝清掃活動を行っています。本社の周辺のほか、各現場でも職人さんたちが仕事前の30分間を清掃の時間にあてているそう。また、お引渡後も会社とオーナーのつながりを大切にするため、「里楽の会」を運営。季節ごとにイベントを開催したり、またオーナー同士でつながれるいくつかのサークルもあり、移住されてきた人もここで交流することで仲間ができ、より早く地域になじむことができます。2カ月に1回発行されるという「里楽の会」の会報誌も現在150号。建て主の声やイベント情報、不動産情報など、OB施主にとって有益な情報を届けています。他にも様々な「ふれあい企画」でオーナーの皆様と顔を合わせ、長いお付き合いをされているといいます。ここ数年コロナ禍において中止になっていますが、昨年は農事体験用に育てていたジャガイモを、地域の社会福祉協議会を通じて食堂などに寄付したそうです。

地域貢献のひとつとして行っている早朝清掃活動の様子
毎年行われている「ふれあい夏祭り」。
ここ数年はコロナ禍で中止になっているが、地域の住民やOB施主との
つながりを大切にしたイベントを開催している
オーナー同士の交流ができるサークルがいくつかあり、
薪ストーブサークルでは薪づくりを共同で行っている

雄大な山々のつらなり、その山裾に広がる豊かな田園など、自然豊かな信州に移住やセカンドハウスを検討する方も増えてきています。そんな人々にも地元ならではの提案ができることも強みのひとつ。地域に根ざして、そして職人(パートナー)と共に良質な木の家をつくり続けている同社。このかけがえのない存在である職人たちとよい関係を築き続け、職人の育成をはじめ、この日本伝統の匠の技を次世代へ伝えていくことも、地域工務店の責務なのではと中嶋社長は話します。

文:「和モダン」編集部
写真:西川公朗(*)、美し信州建設提供

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