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地域のつむぎ手の家づくり|青森の暮らしを楽しもう! 人を育て、クリエイティブな価値を発信 <vol.25/ユネストホーム:青森県青森市>

【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。

今回の<地域のつむぎ手>は・・・

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青森県青森市のユネストホームは「LOCAL LIVINGローカルリビング」を自社のフィロソフィー(哲学)として掲げ、単なる家づくりではなく「青森の暮らしを楽しむ」ことを顧客や地域の人たちに伝えています。

社長の櫻田明寛さん
は、価値観やライフスタイルが多様化する時代の中で「暮らしに関わるクリエイティブな価値を発信できる人材がいる会社」が、これからの新しい工務店のあり方ではないかと考えています。

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社長の櫻田明寛さん

櫻田さんは「年々発展する都市的な機能の恩恵も享受しながら、豊かな自然が身近にある地方は、実は楽しい暮らしを実現できる大きなポテンシャルを秘めている。にもかかわらず、地方(青森)の人たちは自分たちが置かれている環境を少しネガティブにとらえ過ぎている傾向がある」と指摘します。

「われわれ(工務店)が、厚い雪に囲まれる長い冬さえも家族が暮らしを楽しむ要素として取り入れるような豊かなライフスタイルを顕在化し、それを顧客だけでなく地域全体に発信しながら、“もっと暮らしを楽しもうよ”という地域の人たちのモチベーションを引き出していきたい」と力を込めます。

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家具ショップで住空間をイメージ

同社が「青森の暮らしを楽しむ」ことを具体的に発信する拠点が、いずれも青森市内にあるインテリアショップ「Ustyleユースタイル」と薪ストーブ販売店「FIVESファイブス」です。

Ustyleは、広大なスペースに北欧の家具やドイツ製のキッチン・食洗機などが生活(住宅)の空間をイメージできるような形で置かれており、カフェや打ち合わせスペースも備えています。

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インテリアショップ「Ustyleユースタイル」店内

FIVESも同様で、単に薪ストーブを展示するだけでなく、アウトドア用品なども取りそろえながら、冬が長く雪が身近にある青森ならではの暮らしの楽しみ方を提案しています。

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薪ストーブ販売店「FIVESファイブス」店内

「モノ(家具や薪ストーブ)売りではお客様の暮らしを本質的に変えることは難しい。かといって工務店本来の仕事である家づくりや空間づくりは“伝え方”のハードルが高い」と櫻田さん。その両方の課題を同時にクリアできる場が、この2つの店舗なのです。

「ミーレの食洗機を買いに来たお客様が本当はキッチン全体を変えたい、家具を買い替えたいお客様が本当はリビングの空間を変えたいと望んでいて、お店でコミュニケーションするうちにリフォームに発展する事例も多いです」と櫻田さんは説明します。櫻田さんが思い描く通り、モノ売りの場ではなく、暮らしや住まいをお客様と一緒に考え、実現する場所になっていることが分かります。

プロデューサーが顧客の暮らしを“制作”

そのように顧客と一緒に考えながら、顧客にモノだけではない提案ができるのは、同社が工務店としての機能を備えていることに加え、コミュニケーションスキルの高い人材がそろっているからです。櫻田さんは、品ぞろえより、人材育成を最重要視して店づくりを進めてきました。それが現在の家具・薪ストーブの販売(店舗)と家づくり(工務店)が強力なシナジーを生むベースになっているのです。

同社では、建築部門と店舗のスタッフを分けていません。実は、店舗で接客に当たるのは「制作部」という同社独特の事業部に所属し、住宅事業の営業やプランニングも担うプロデューサーやデザイナー、コーディネーターと呼ばれるスタッフたちです。まさに“一本の映画”を制作するかのようなスタンスで「顧客の暮らしの制作」に臨みます。櫻田さんは「多様なライフスタイルにあわせて、さまざまなクリエイティブな価値を提供できるクリエーター集団こそが、これからの工務店のあり方ではないでしょうか」と持論を語ります。

もちろん、クリエーター集団として提供するハードとしての住宅のデザイン性やクオリティ(性能)には「当たり前の前提条件」として自信を持っています。無垢の木材など経年によって味わいを増す天然の素材を用いながら、付加断熱やトリプルガラスのサッシを標準仕様にHEAT20・G2*という高性能住宅を提供しています。

*「HEAT20」(ひーとにじゅう/一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会)が出している断熱グレード(レベル)で、高断熱住宅のものさしとして参考にできる。性能によってG1・G2・G3という3段階のグレード基準があり、G3が最高水準のグレード。
性能の解説はこちら▼
住まい×健康の専門家が解説!高断熱住宅で暮らすメリット
断熱性能ってなに? 断熱性能の基本と性能値の読み方

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地元を良くする工務店がかっこいい

櫻田さんは「地場産業である工務店の存在意義は良い人材を育て地域に増やすこと」と言い切ります。

「育った人材が独立してもいい。切磋琢磨して互いにより良い暮らしや住まいを提案できれば、地域の暮らしがもっと良くなり、暮らしを楽しむ人が増えていくはずです。それはつまり、われわれ(地域工務店)の未来の市場が広がっていくことにほかなりません。地元を食い物にするより、地元を良くする工務店の方がかっこいいですよね」(櫻田さん)。

文:新建ハウジング編集部
写真:ユネストホーム提供

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