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地域のつむぎ手の家づくり|施主もつくり手もワクワクするリノベーション 住宅価格高騰のなかで生活者の具体的な選択肢に <vol.45/まつけんのリフォーム(松代建設工業):長野県長野市>

【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。

今回の<地域のつむぎ手>は・・・


松代建設工業(長野県長野市)のリノベーションブランド「まつけんのリフォーム」は、既存の建物の魅力を生かした、家族と住まいの“物語”をつむぐリノベーションをコンセプトとして打ち出し、2000万円前後のリノベを年間10棟程度、コンスタントに手がけています。リノベ事業を統括する同社住宅部ディレクターの黒岩卓郎さんは「ウッドショック以降、住宅の価格が高騰しているせいなのか、既存住宅のリノベを検討する人からの問い合わせが急に増えている」と話します。

まつけんのリフォーム(松代建設工業)住宅部ディレクターの黒岩卓郎さん

「木材、建材・設備などの価格高騰や土地(住宅地)の不足、価格上昇といった要因によって新築住宅の価格がかなり上がっていて、それにより住宅取得検討者がコストを抑えるために今あるストックの利用(リノベ)を具体的に考えるようになっている」と黒岩さんは自社の例をもとに指摘します。

実際に同社へのリノベーションの依頼では「注文住宅の新築は(価格的に)ハードルが高く、建売を見て回ったが(デザインや性能などに)納得できず、それなら実家や空いている祖父母の家を生かして“自分たちらしくリデザインしよう”と考えた」というパターンが多くを占めるようになっているそうです。

既存の建物の魅力を生かし、家族の“物語”を次世代へとつむいでいくことをコンセプトに掲げるまつけんのリフォームのリノベ事例
20代の夫婦と子ども1人が暮らす住宅(上田市)。夫の祖母が暮らしていた家をリノベした


若手建築家とのコラボを標準化

まつけんのリフォームは、2015年のブランド設立時から若手建築家とのコラボを標準化し、既存の建物の魅力を生かしながら、家や家族の歴史、“物語”を次世代へと継承していくコンセプト重視のリノベーションを一貫してブランディングしてきました。そのブランディングの成果が、住宅の高額化によってストック活用が具体的な選択肢になりつつある市場と、意識すると身のまわりに実家や祖父母が暮らしていた空き家など何らかの利用可能なストックが見つかりやすいといった地域性と結び付いたのです。

そうして手がけるリノベ案件1棟あたりの価格は2000万円前後が中心です。昭和50~60年ごろに建てられた築40~50年程度の住宅が多いそうです。顧客に対するヒアリングの段階から、家づくりに対する志を共有している建築家と黒岩さんが共に臨みます。黒岩さんは「既存の家に対する施主の想いやそこで実現したい暮らし方を受け止めながら、建築家と一緒に施主がワクワクするような家づくり(リノベーション)のプランを提案できることがリノベの醍醐味。ビフォー・アフターで施主を驚かせたい」と笑顔で話します。

建築家とコラボするメリットについては「若い建築家のプランニングにおける発想力や提案力を得られると同時に施工性や耐久性、メンテナンス性を踏まえた納まりについては当社の技術力を生かすことができ、相乗効果でリノベのクオリティがアップする」と説明します。

豪雪地帯として知られる飯山市でリノベした住宅。30代の夫婦と子ども1人が暮らす


SNSメインでプロモーション

会社としては、着工戸数減少など新築市場縮小やそれに伴う競争の激化といった予測のもと、「市場としてのポテンシャルが高く、アイデアや設計力、技術力をより生かすことができ、オリジナリティも打ち出せるリノベを強化していこう」とブランドを設立しました。いまのところ実績や売り上げは、堅調に伸びているそうです。

リノベ事業の広報・プロモーションは、ホームページに加えてInstagramなどSNSがメインです。「当社が手がけるリノベの事例は“インスタ映え”する。自らも作業に加わりながら進めたリノベの様子を書き綴った施主のブログがメディアなどから注目された例もあった。こうした拡散性もリノベの魅力の1つ」と黒岩さんは語ります。

住宅取得価格の高騰によってリノベに関する問い合わせが増えているほかに、同社ではコロナ禍以降、「首都圏などからの移住世帯から軽井沢や安曇野での新築受注が増加している」とのこと。黒岩さんは「昨年に限って言えば新築受注の半数以上は移住世帯の案件でした」としながら、「この流れはリノベーションにも展開できる可能性を感じている。古民家活用なども含めて移住関連でもワクワクするようなリノベにチャレンジしたい」と、さらに意欲的にリノベに取り組んでいく構えです。


文:新建ハウジング編集部


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