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就労支援事業所内の人材育成を考えてみる

今日は、マネージャーや管理職向けのテーマでしょうか。人材育成を事業所内で考えるのは簡単なことではないですが、自分なりの経験から思うことを書いておこうと思います。

職員をアセスメントする

アセスメントはどちらかというと、支援者側の言葉であるように思います。以前、受講した研修会で登壇されていた特例子会社の社長さんも、「企業でアセスメントという言葉はあまり使わない」と仰っていました。たしかに、僕も部署内のスタッフをアセスメントするとは言わず、「評価」という視点で見ているように思います。

ここではあえて、アセスメントの言葉で書いてみます。アセスメントなので「その人のことをよく知るための作業」ってことになります。職員一人ひとりがどんな特徴があり、得意苦手がどうかとか、人柄や雰囲気など周りに与える影響がどうかなど、多面的にアセスメントすることがまずは大事であると思います。

職員一人ひとりに注目してみると、できることもできないことも当たり前ですが人それぞれそれです。新卒採用、キャリア採用やパート採用など、採用の経緯や今までの職歴も様々でしょうし、パートさんなら家族や子育ての状況もまた様々だと思います。

そう考えると、一人ひとりの価値観もまた様々なはずです。職員が自分なりに大事にしてること、この仕事のどこにやりがいを感じているか、どんなことをやってみたいかなど、アセスメント内容とともに本人ニーズも大事な視点であることをここではおさえておきたいと思います。

自己研鑽は必須とする

アセスメントで得た情報をもとに、職員一人ひとりを大事にすることは、人材育成やマネジメントの上では大事な視点です。ただ、大事にするだけではあまり意味はありません。仕事ですから、もちろん、役割期待に応える働きは伝えていく必要があると思います。

これは僕の持論ですが、「勉強しない人は支援が上手くならない」と思っています。勉強とは、大学で学び直すとか専門資格を取るといったことではなく、「学ぶことに貪欲であること」を職員一人ひとりが自分の価値観として大事にしてるかどうかがポイントであると思っています。

自己研鑽は、その人にとってやりやすい方法で、無理なく楽しめることが一番です。嫌々やっても意味はないし、学んだことも身につかないでしょうから、主体的に学び、楽しみながら学ぶことを習慣づけしてることに意味があるんだと思います。

僕の日課は、毎朝、部署内の職員向けにブログを書くことです。全体連絡と題しているので、連絡事項や情報提供に加えて、日々の支援で感じたことなどを思うままに書いています。その時、ブログには、「自己研鑽の必要性」を意図的に書き加えるようにしています。

「学ばないとおいていかれるかも…」
「障がいのある人も多様であるので、自分の学びも多様にしないと…」
「学ぶことが支援や関係性づくりに活かせて楽しい!」

職員の方には、学ぶことが必須であると少しはプレッシャーも感じてもらいながら、学ぶことが必要であると自分なりに気づいてもらい、その上で楽しんだ学びを習慣にしてもらいたいと思っています。

一応は、上司としてそんなメッセージを日々の中で伝え続けながら、一人ひとりの育成に期待し、その結果として中長期的にはチームも強くなり、マネジメントもしやすくなるように思います。

やりたいことは任せてみる

僕が所属する法人は、450名ほどの方が働いていて、正職員だけで見ると150名近くの人がおられます。手前味噌ですが、皆さんとても優秀です。やさしくて熱心な職員が多く、専門資格と知識を磨くことに一生懸命な人はとても多いです。それに、利用者ファーストで人権意識が高いこともまた、うちの良いところと思います。

余談はさておき、こうやって職員一人ひとりのことを考えると、専門資格を持っていることや利用者ファーストを大事にしてる様子から、「一人ひとりにやりたいことがある」ってことは忘れてはいけないなぁって思います。法人の幹部会議でもこれはよく話題になっていて、「やりたいことは任せたい」と思うのは、僕に限らず理事長や管理職の皆さんもいつもそうやって言ってくれます。

福祉の仕事は対人援助職とも表現できます。人相手の仕事であり、障がい、高齢、子どもなどの利用者の方々が相手となります。きっと、この仕事をする人の多くは、「相手の役に立ちたい」と思って資格を取り、この仕事を選び、働いているんだと思います。皆さんに聞くと「支援の現場が好き」「利用者の方と関わる時間が楽しい」と利用者ファーストで人権を大事にすることに何よりも一生懸命になっているはずです。

利用者の方の役に立ちたいと思う気持ちがあり、それに向けてやってみたいことがあるのなら、基本的にはそれらにチャレンジできるチームをつくるのがマネジメントの理想であるように思います。ただ、「アセスメント内容によってはやりたいことができない可能性を含んでる」ってときは、「任せてみる」の視点で任せながらもフォローすることがマネージャーの役割でもあります。

働くことは自己実現にもつながります。やりたいことが叶うことは、働く人にとって重要ですし、やりたいことが大きなことではなく些細なことやちょっとしたことでも、やらせてもらうことで職員の方も嬉しいと思います。任せるというよりは「任せてみる」の視点でやりたいことが実現できる環境づくりは、きっと人を成長させることにつながるんだと思います。

理念先行でマネジメントする

最後は「理念」の話。結局は、いつもこの話になってしまいます。今までずっと福祉の仕事しかしておらず、前職も今も、非営利組織(社会福祉法人)で働いているのもあって、まとめはどうしても「理念」に重きを置きたくなります。ご容赦ください。

多くの組織には、理念、ミッション、ビジョン、コアバリューなどの言葉があり、それらを定義づけて、組織内への浸透を図っているかと思います。うちの法人も同じくです。理念やミッションなどの言葉は、組織によって位置付けや使い方が少しずつ違っているかもしれないので、ここでは「理念」で表現を統一して話を進めたいと思います。

さて、本題に入ります。ここは、マネジメントの話が多めになります。

マネジメントをする上では、チーム内の合意形成を進めたり、時にはリーダーシップをとったり、職員間や利用者の方、外部の方との調整など、マネジメントに該当する内容は考えてみると幅広くあります。その際、マネージャーの多くは、答えのないことに迷い、時にはストレスを感じ、マネジメントの難しさを感じることはたくさんあるように思います。

僕のことで考えてみると、転職し、今の立場になり、10年近くになりました。部長職として色々悩むことはいまだにめちゃめちゃいっぱいあります。そんな時、テーマにある「理念」で考えてみると、悩む問題が意外とすんなり進むことは多かったりするものです。今になってようやく理解できる気もしますが、「理念に立ち戻る」ってことは人材育成やマネジメントを進めやすくしているのは事実でもあります。

前に述べた「自己研鑽」「やりたいことを任せてみる」においても、理念と照らし合わせて考えることが大事だったりします。

・組織や事業所は何のためにあるか
・誰に何を届けたいために事業をしてるか
・そのために職員一人ひとりは何をすれば良いか

などなど、理念から行動単位に言葉を変換していくと、マネジメントに関係することにも繋がりやすくなり、合意形成やリーダーシップ、様々な調整ごとも進めやすくなります。

就労支援の場面では、個別支援計画策定のケース会議、企業開拓や就活支援での企業とのやりとり、就職後の定着支援や生活支援など、支援の場面においても「理念」は必ず照らし合わせることができます。僕も、上記の場面で担当職員とともに参加する際は、理念や方針などを意図的に発言するようにしていて、自分たちの「組織らしさ」「理念や使命感」などは何度も言葉にすることで「理念先行のマネジメント」が成り立っていくように思います。

まとめるなら、「理念は何度も言葉にすべき」って思います。マネージャーや管理職が何度も言語化することで、言葉は伝染し、人から人へ、そしてチーム全体へと少しずつ浸透するんだと思います。その結果として、向かうべき方向性がチームで統一化され、マネジメントもうまく進むはずです。理念先行のマネジメントが中長期的にはチームに良い効果を与え、一人ひとりの成長が組織の成長へと繋がるように思います。

人材育成ってなんだろう

書き出すと、まとまりなくたくさん書いてしまいました。対人援助職の人材育成は奥が深いですね。でも、それがまた魅力でもあるように思います。

この仕事をする人は、一人ひとりが専門職ですから、働き方や活躍の仕方もそれぞれなので、育成や成長もそれぞれになるんだと思います。
(その分、マネジメントが難しいのかもしれないですね。)

ただ、どんな仕事でも同じですが、一人でできることには限りがあり、専門職といってもチームで働くことは大事な視点です。人材育成をチームで考えていくのなら、そのチームを誰かが上手くマネジメントする必要があって、人材育成がテーマといいながら、結局はマネジメントの視点が多くなったnoteになりました。

福祉を担う人の人材育成は、これからも自分にとっては大事なテーマになりそうです。引き続き、こうやって考えていこうと思います。

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