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合理的配慮(就労支援編)〜「意思の表明」の難しさ〜

このマガジンは、業界に入って間もない新人さん向け。
障害福祉のあれこれを取り上げていきます。


障害者差別解消法に書かれている「合理的配慮」。
就労支援の場面では、働くご本人と職場との間でよく使われます。


今回は、合理的配慮の意味と難しさについて書いてみたいと思います。


▼合理的配慮とは・・・

権利条約第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。
法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等及び事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)を行うことを求めている。
引用:障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針「合理的配慮の基本的な考え方」(内閣府HP)


ここでのポイントは、障害のある人から「意思の表明」があることで、配慮事項の話し合いが始まるということ。
表明しないと配慮してもらえないとも言い換えられるように思います。


難しいポイントのひとつに、障害のある人から配慮してほしいこと(意思)を表明するのは簡単なことではないということがあります。


例えばですが、知的障害や発達障害がある人はコミュニケーションがうまくとれなかったり、精神障害のある人なら意思を表明することに強くプレッシャーを感じたりと、表明することへのハードルの高さが合理的配慮を難しくしています。


また、合理的配慮では「話し合いながら合意形成する」ってことを目指していて、職場に対しては「過重な負担」を求めていません。

簡単に表現すると、「お互い話し合いながら納得できる点を見つけていきましょう」ってゆう感じで、「話し合う」ということも障害のある人にとっては高いハードルのひとつになります。


働く人(労働者)は、雇用主や職場の上司に対して自分の配慮事項(弱みとなるようなこと)を改めて伝えるだけでも緊張するものですし、言い出しにくいものです。

定期的に面談があるような職場ならそのときに配慮事項を伝えることもできそうですが、上司が忙しくてなかなか会えないなら伝えにくいでしょうし、わざわざ時間を作ってもらって面談してもらうというのもかえって相談しにくいです。


合理的配慮のポイントを簡単に整理すると、以下のようになります。

・意思の表明をすることで話し合いがスタートする
・障害のある人と職場の双方で「話し合い」を続ける
・職場は過重な負担のない程度に配慮事項を検討する
・お互いが納得できる点で「合意形成」を目指す


改めて考えてみると、障害のある人が職場と対等に話し合っていくには、とても難易度が高いことのように思います。

それに、障害のある人が自分のことをある程度「自己理解」していることで、配慮事項をうまく伝えられそうですが、自分のことを客観視しにく障害特性のある人も多いため、これもまた難易度が高いように思います。


今回の就労支援編としては、就労支援員やジョブコーチなどが障害のある人と職場の間に入って、橋渡しをしたりお互いの意見を調整したりすることが合理的配慮におけるポイントだと思います。

合理的配慮の内容は、どこまで配慮するかなどの線引きが難しいため、第三者も入った形のほうが話しやすいでしょうし、話し合いに対してすぐに結論を出すことなく「継続的に話し合う」ことで合理的配慮が少しずつ理想の形になるように思います。




できるだけ簡単に書きたいと思っていましたが、難しくなってしまいました。
合理的配慮は難しいですね…。

でも、大切な視点なので、これからも現場での支援を通して考えていきたいと思います。


*追伸*

障がい者雇用企業向けのコラム「ミルマガジン」でも、同じようなことを書いています。
ご参考になればうれしいです。


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