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就労支援とフィードバック

就労支援では、職業評価、職場実習、就職活動など様々な場面で利用者の人が自身の取り組みについて評価を受けることがあります。「〜〜の作業はとてもうまくできていましたね」「報告するときは、次から〜〜と言いましょうか」「応募書類の文章は、〜〜に修正したほうがよいですね」など、支援者が利用者の人に評価点をフィードバックすることは、就労支援のなかではよくある場面かと思います。

フィードバックと特性理解

今回はフィードバックがテーマ。Google検索すると「口頭や文章などで行う指摘のこと」とでてきます。フィードバックを受けた人は自身を振り返り、次からどんなふうに行動すればよいかを自分で考える力が身に付くとも言えます。これがフィードバックの目的ですが、果たしてこのとおりの就労支援ができているでしょうか。

いつものように発達障害の特性から考えてみると、想像力に特性があるために自分自身を客観視することは苦手だったりします。心の理論の問題や独特な解釈の仕方なども影響して、自分へのフィードバックを相手の意図したとおりに理解できないこともあるかもしれません。
また、対人コミュニケーションの特性もあって、人との関係性を築くのが難しい一面もあり、誰からフィードバックを受けるかによってご本人の捉え方や様子が変わってくることもあるように思います。

「説得」「提案」「納得」

これは、僕の個人的な意見ですが、就労支援の場面で行われるフィードバックは上記の3つの視点で考えるとわかりやすいように思います。

まず、フィードバックでよくありがちなのは、「説得」です。例えば、職業訓練の場面でよくない行動をする利用者の人がいた場合、「次から〜〜してください」と半ば強引に支援者側の意見を押し付けることがあります。この際、理由を添えずに結論のみ伝えることは、端的なフィードバックである一方で、結果的に説得をより強めているようにも思います。
また、提案は、説得よりは力の緩んだ関わり方ですが、説得同様に支援者側の意見にある程度従ってもらう空気感があります。ただ、提案はいくつかの選択肢があると、利用者の人も考えてから選ぶことができ、選択肢を加えてから自己決定までに時間的余裕があることで、説得よりは押し付けられたと感じることは少ないようにも思います。

最後は、納得です。これは、利用者の人の「納得感」を大事にしようって話になります。
先ほどの説得と提案は、支援者側の意見を伝える側面が強めにあります。提案より説得のほうがはっきり伝えているために、発達障害の人が曖昧なことを理解しにくい分、わかりやすいこともあるかもしれません。ただ、説得は、支援者側の意見を押し付ける側面も持ち合わせています。
ここでは、説得や提案に良し悪しをつけることではなく、ご本人が「納得感」をもっているかどうかに着目することに意味があるとしています。支援者側からフィードバックしたいことがあるとすれば、利用者の人に伝わってこそ意味のあることですので、フィードバックが納得感のある中で自身を振り返るきっかけとなり、次の行動に結びつくことに繋がれば、「フィードバックは成功」となるように思います。

誰からフィードバックを受けたいか

フィードバックを難しくしているところは、支援者側の態度や振る舞いも関係していそうです。就労支援はどうしても就職を意識してしまうため、社会に出る前に身につけてほしいことを支援者目線で伝えてしまうことは多く、利用者の人のできない理由(もしくは背景)を後回しにしてしまってる傾向にあります。

就労移行支援は有期限サービスですが、フィードバックを焦ってはいけないんだと思います。説得や提案の裏に「有期限」をどうしても意識してしまうために、支援者側が本人をコントロールしがちですが、そこは理由や背景も探りながら、本人とともに振り返り、次への行動は協働で考えるくらいがちょうど良い気がします。

きっと、利用者の方も、「誰からフィードバックを受けたいか」は考えておられるように思います。支援者側は焦らずに、ご本人の事情やペースを尊重して、「穏やかな関わり」を第一に、ゆっくりとフィードバックすることがおすすめなように思います。


毎月ある今日の自主ゼミは、「フィードバックってなんだ?」がテーマです。フィードバックを特性に応じて構造化の支援や専門的支援を行う前に、支援者側がご本人の立場にたって考えることが何よりも大切なように思い、今日はそんな話をしてみます!

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