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「初心」とは忘れるもの・・・

初心、という言葉があります。初心を忘れずに・・・という時に使います。つまり、初心というものは、つい忘れてしまうものだ、ということ。

入学した時、よし、頑張るぞ、と多かれ少なかれ思うでしょう、
入社した時も、この会社で自分を力を精一杯出して働くぞ〜と思ったのではありませんか?
結婚した時もこの人と幸せになる、幸せな家庭を作っていこうと
子供が生まれた時、どうかこの子が幸せな人生を歩めますように、と

1年、2年、5年、10年と過ぎて・・・
もうわかりますよね。
初心はどこへやら。でも実はそれって、当たり前のことなんです。
思いというのは時間とともに褪せてゆくものです。感情もそうです。思いやその時の感情を維持したければ、それなりの工夫が必要です。

理想を感じられない学校のシステムに、尊敬できない上司に、でっぷり太って見事にハゲてきた夫に、働きもせず悪いことばかりしている息子に、今のその状況の奥底に、初心を持った時の自分の思いと相手の本当の姿を想像してみること、ありありとイメージしてみる力が必要です。

あ、そう言えば、たいてい良い思いの「初心」はすぐ忘れるのに、痛い目にあったこと、嫌だった出来事、煮えくり返るような怒りについては、なかなか忘れない人多いでしょう? 不思議ですよね、嫌なことも普通は時とともに薄れていく、色褪せてゆくのが当たり前なのに、私たちは、何度もその場面を再現し、ありありとイメージし、何度もその時の相手の姿や、自分の姿をリフレインし、そしてその時の嫌だった感情を再現強化しているわけです。

なぜ、その努力を「初心」の方へ活用しないの? 不思議ですよね〜。


人をサポートすることが仕事の私は、クライアントに初めて会った時のことをしっかり刻むようにしています。クライアントごとのノートには最初のページ、この人がどんな未来を描くのか、どんな叶えたい人生を掴むのか、どんなふうに成長していくのか、それを応援したい、という思いを言葉にして書き記しています。

3ヶ月、半年過ぎて振り返ると、自分の中の「応援したい」という初心にいつも帰ることができます。

また、クライアントじゃないけれど、友人に対しても。長く付き合ってきた友人と、例えば食事をする時、会う少し前に必ずやっていることがあります。
車で待ち合わせ場所へ移動する時、車の中で、電車なら、電車の中で、今から会う友人と、一番最初に出会った日のことを思い出すのです。だいたいいつ頃、どこで、どんなきっかけで話をしたのか、その時、私はどんな気持ちで相手を見ていたのか。そしてそれから、次に会ったのはいつで、どんな話をして、それから、それから、と今日までの付き合いの流れを、ざっと頭の中で思い浮かべます。

すると、本当に不思議なんですが、こんな思いが湧いてきます。
最初はゼロだったよなぁ、何もなかった、そのまま一回きりの出会いで終わっても良かったのかもしれないのに、今日までよく続いたよなぁ、どちらからとなく歩み寄って、たまにはムッとしたこともあったけど、でもまた笑い合って…… すると、本当に自然と「ありがたいなぁ」という思いになる自分に気づきます。


さて、相手ばかりじゃなく、自分に対しても同じです。
目が悪くなってきたり、少し動くと腰が痛くなったり、髪にツヤがなくなったり、物忘れがひどくなったり、そんなふうに老化していく今の自分の姿の中に、自分が生きてきた歴史やその中で得てきた、たくさんのもの、自分が作ってきたもの、人に与えてきた言葉、つながりや、ふれあい、そんなたくさんの豊かなものを、自分のシワひとつから感じることができるかどうか・・・これって、工夫と想像力ですね。でもそれさえあれば、年老いた自分の顔のシワさえ、豊かさだと見ることができ、心の平安を感じることができます。

え、言い訳っぽい、って?(笑)


さて、あなたは初心を忘れないため、どんな工夫をしていますか?

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