昭和35年の取説

母のミシンは友人のお姉さんに引き取られていきました。
あとから思うと本当に不思議なタイミングでした。
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2016年10月31日

夕べも1時頃からずっと１時間ごとに起こされる。
トイレだったり、しんどいだったり。
やっぱり覚悟が足らんなぁと思う。

もう絶対に怒らない、
不愉快な顔もしないと決めたのに、
それでも「もう、勘弁してよ」って気持ちがわいてくる。

これもやっぱり修行やなぁと思う。
滝に打たれてると思ないとなぁ。
一人さんじゃないけれど、”ゆーこ滝”とでも命名して、
ああ、今日もいい滝だったな、くらいの気持ちでいること。

言うのは簡単だけど、本気でそう思えるには、まだまだ修行が足らん。

昨日はそれでもいいことがあった。
フェイスブックに母のミシンの画像を載せて、

譲ります、

と言ったら、
友人のお姉さんがほしいとのこと、
またロックミシンはMさんが欲しいとのことで、
どちらも即日、引き渡すことができた。

昨日朝から軽トラックに乗り、
母のミシンは次の主人のところへ行った。

ミシンの古い取説が出てきて、見ると昭和３５年、
とあるから私が５歳の時に購入したものだとわかる。
56年間、母と過ごしたミシンだった。

本当にご苦労様でした。
私以上に母のことをよく知っていたのは、
このミシンだったかもしれない。

「これが、たくさん仕事をしてくれた、
稼がせてくれた」
とミシンを見送る時、母は少し笑った。

今日は、その後ずっと「しんどい」を昼まで繰り返し、
とうとう午後イチでかかりつけのK内科へ行く。
血液検査の数値が肝機能が悪い。
こんなことは今まではなかった。

貧血とリンパ球が16％。でもCRPはとても低い。
それでM先生が
大きな病院で診てもらってほしい、ということで、
S病院を紹介される。

医院長に見てもらう。
人当たりの良い先生だったが、
母のしんどい原因はわからずじまい。

胸に水がたまっていることがCTで分かったくらい。
その原因がわからないので、
土曜日にもう一度、
詳しい血液検査の結果を聞きに行くことになった。

気休めかもだが、ニトロをもらい、
それ以上の頓服は？と聞くと、
精神安定剤と言われた。

やっぱり、と思う。
要するに眠剤ということだ。

施設も病院も、眠れずしんどいを繰り返す患者に、
結局、眠剤を与えるのみなんだろうな、と思う。

それなら、私が自分の手でそれを飲まそうと思う。
自分の体力の限界の時にそれを使い、
私がなんとかなる時はせっせと世話をして。

つまりは、施設に入れても
私が思うような介護はしてくれないということだ。
わかりきっていたこと。
ならやっぱり、
このままのスタイルでやっていくしかないなぁと。

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この数日後に、緊急入院となり、
母がこの家に帰ることは
もう二度となかったのでした。

この時に、今まであれほど執着していたミシンを
母が手放すと言い出したのは、
そして、喜んでもらってくださる方がいたのは、
後から思うと、本当に、絶妙のタイミングでした。

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