オリンピックのキャスティングから学ぶタレントリスク診断のポイントとは?

こんばんは!デジタル・クライシス総合研究所です。

賛否両論がある中で開催された今回のオリンピック・パラリンピックですが、その結果はととても素晴らしい結果となりましたね。

ただ、今回のオリンピックで多くの批判が殺到してしまった
・小山田圭吾氏、絵本作家・のぶみ氏のいじめ問題
・小林賢太郎氏のホロコースト問題
などのキャスティング。

今回はこの事象から学べるキャスティングを行う際に重要なタレントリスク診断のポイントについてまとめていきたいと思います。

今回のオリンピックでは何が起きたのか

世界までも騒がせたオリンピックのキャスティング問題について、何が問題で炎上したのか、改めて振り返ってみましょう。

・小山田圭吾氏のいじめ問題
7月14日に東京オリンピック・パラリンピック開会式の作曲担当として発表された小山田圭吾氏が、過去にとある雑誌で障害者へのいじめを自慢していたとして大炎上。
同月16日に謝罪文を発表するものの炎上は収まらず、辞任することとなりました。
参照:https://news.yahoo.co.jp/byline/shinoharashuji/20210718-00248581

・絵本作家・のぶみ氏のいじめ問題
以前から過去の発言を問題視される声が度々上がっていた中、過去の“教師いじめ”のエピソードなどにより再炎上。
その後、7月20日に参加予定の関連プログラムHPから出演を辞退したことが発覚しました。
参照:https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2107/20/news143.html#l_nt_210720nobumi01.jpg

・小林賢太郎氏のホロコースト問題
1998年に発売されたビデオソフトの作中に、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)をネタにしたコントがあり、この映像がSNSで拡散。米国のユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が非難声明を発する事態にまで発展した後、東京オリンピック開会式前日の22日に開閉会式の演出を担当を解任されました。
参照:https://www.yomiuri.co.jp/olympic/2020/20210722-OYT1T50179

この問題について世論は?

問題に対し世論は以下のような反応をし、問題の主体である本人たちとともに組織委員まで批判が集中していました。

「こんな人格の人をキャスティングしてること自体最悪」
「オリンピック委員会と電通はお互い責任なすりつけあっていて選手に失礼」
「障害者をいじめていた人間がパラリンピックに関わるのか」

改めて振り返ってみても、やはりこのキャスティングは適切だったとは言えず、このような問題が起きてしまったことにより、本人たちのみならず、キャスティングを行った組織委員、そして海外からも批判を受けるような事態に陥ってしまったのです。

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参照:https://news.yahoo.co.jp/articles/138ce8876d7f1267c2f1a520b0cc7aa49deae54f

これらの事象を防ぐためには、事前調査を十分に行い、さらに問題が起きた場合の危機管理体制の構築が非常に重要となってきます。
では、その事前調査を行う場合はどのようなポイントを抑えて調査をする必要があるのでしょうか。

事前調査が重要?タレントリスク診断3つのポイントとは

実際に事前調査をしましょう!とはいえども、
それはわかっているけどどうやって調べるべき?どこまでやればいいの?などといろいろな疑問を生じる部分かと思います。
そもそも自社で全ての情報を探し出すことはかなり難しいものもありますが、以下内容・リスクについては、自社内でもしっかり検討・確認することが重要になります。
現場で活用できる方法として、今回は大きく3つのポイントを説明していきたいと思います。

①事前の炎上リスクは予測できる
起用人材がSNSやブログなどをしていれば過去の投稿内容や、メディアに出演にしていれば過去の発言内容などを調査し、将来的に問題視されるような投稿・発言をしていないか、またはその投稿内容や言動から情報漏えいの危険性や問題行動の発生リスクなどの予測を行うことで、炎上リスクを予測し、起用の検討をすることが重要です。

例えば今回のオリンピックキャスティング問題で
「小山田圭吾 2ちゃんねる」で検索をした場合、以下のような検索結果が確認されます。


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今すでに注目されている情報でもあるため、このような結果になるのはもちろんですが、検索結果の中に2004年や2009年のサイトも確認できるため、しっかりと調査を行っていればこのようなリスクを事前に把握できた可能性は極めて高いと考えられます。

また、ただ起用タレントの名前だけで検索するのではなく、SNSの媒体名や今回のように2ちゃんねる5ちゃんねるなどのサイト名、他にも、炎上事件、所属先名などのワードを含めた調査をすることも、問題を発見するには重要になってきます。

②起用基準と合致している?基準の再確認を!
各プロモーションやイベント、番組への起用を考える際、その内容・主旨に沿ったキャスティングを行うということも非常に重要です。
キャスティング次第ではその番組やイベントだけでなく、プロモーションやイベントを行う企業のブランドイメージまで左右してしまう可能性があり、
企業のブランドイメージの低下や、イベントやプロモーションなどへの批判をできるだけ避けるためにも、起用基準の再確認を徹底しましょう。

そして、今回のオリンピックにおける大会ビジョンは以下のような内容になっており、特に「多様性と調和」という基本コンセプトに相応しくない。などの声が確認されています。

「多様性がでかいテーマにあるオリンピックに関わるんなら、自身の過去の言動について何にも触れずにスルーってのは虫が良すぎんか?とは思う。」
「大会ビジョン「多様性と調和」を掲げながらこの判断は明らかな人選ミスだと思います。」

画像4

参照:https://olympics.com/tokyo-2020/ja/games/games-vision/


他にも、2016年に話題に上がったタレントの詐称問題。
このとき世間を騒がせたショーンK氏は、学歴詐称を受けタレント活動を休止しましたが、実はそれ以外にも経歴を詐称していたというタレントや政治家は多くいるのが実情です。

note記事修正したい

参照:https://www.oricon.co.jp/special/48811/

このような情報はなかなか明るみに出ないものの、学歴や職歴などに詐称がないか、反社会的勢力などの団体と繋がりが無いかなども改めて調査をし、各起用基準に合致しているか、起用決定前には再確認の徹底をおすすめします。

③過去事件を把握して将来のリスクを予測をする
①と同様に将来的なリスクを予測するためには、ネットの調査はもちろんのこと、その起用人材の過去の犯罪歴や事件を正しく把握することも重要になってきます。また、それだけでなく、SNSやテレビなどの言動から今後の犯罪リスクについて予測することも必要で、これらの情報から将来のリスクを総合的に判断することが重要なのです。

今回のオリンピックにおいては特に犯罪などにつながっていないものの、
例えば小山田圭吾氏のいじめ問題に関する発言からその人物の思想が推察され、今後事件に巻き込まれる可能性すら考えられる事象だったのではと思います。

また、ネットなどでは「犯罪だ」という声すら聞こえる状況であり、事前調査をしっかり行ってさえすれば、小山田氏だけでなく、キャスティングを行った組織委員、ましてやオリンピックまでもが批判の対象になるということが予測できたのではないでしょうか。それだけでなく、実際何か起こってしまっても対応策を事前に考えられれば、大会開始直前の辞任・辞退騒動は発生しなかったのではないでしょうか。

ここまでで3つのポイントについて説明いたしましたが、これらから事前調査を行った上で起用するかしないかの最終判断をすることと、起用する場合の将来的なリスクの予想とそのリスク対策までを行うことが重要だということがわかります。

実践編!実際にリスク調査を行う手順とは?

①検索エンジンで起用人材を調査
まず初めに、ネット上に公開されている情報の中にリスクとなるものがないかを調査するため、検索エンジンを使って起用人材を調査していきましょう。
この検索を行う際のポイントとしては、前章にも記載したようにただ起用人材の名前を調査するだけでなく、「SNSサイト名」「事件」「炎上」という文字を掛け合わせて検索をしたり、メールアドレスを知っているのであれば「メールアドレスの文字列」なども検索するをすることでネット上に公開されている情報からリスクがないかを調査します。

②SNSアカウントの有無を調査
①の調査で出てこなかったとしても、各媒体の検索機能で調査を行った場合に発見される可能性もあります。
まずは起用人材名を記入し検索を行い、その後、メールアドレスなどの@より左の文字列を記入し検索を行いましょう。

同姓同名のアカウントが複数出てくる場合もあるため、その場合はプロフィールやプロフィール写真で起用人材に該当するアカウントか否か調査する必要があります。
それでもアカウントの判断がつかない場合は、実際の投稿内容まで調査し、生年月日や経歴、投稿されてる写真や、他ユーザーとのやり取りなどから、起用人材に当てはまるアカウントかどうか判断する必要があります。

③SNSアカウントの投稿内容を調査
もし①、②の調査でSNSアカウントが発見できた場合、アカウントから過去の投稿内容を確認し、リスクを調査しましょう。

投稿数があまりに多いと全ての投稿確認が難しい場合もあります。
その場合、Twitterであればメディアのみに絞ってから投稿を確認したり、
演算子(from:ユーザー名)(to:ユーザー名)を活用し該当する投稿のみ調査
を行うなどの対応や、過去◯年分を調査すると決めて確認を行うということも有効です。

そして、この調査を行う際の重要な観点としては5つあります。

1. 攻撃性の高さ
他人への攻撃的な返信や、悪口を投稿していないか・言葉遣いの荒さ
2. 自己顕示欲の高さ
自撮り、自慢話が多くないか・見栄っ張りの傾向がないか
3. 影響力の高さ
有名人でありフォロワー以外にも影響力が及ぶかどうか
4. 信頼性の高さ
ステマへの関与・モラルに反した投稿をしていないか
5. リテラシーの高さ
人混みでの撮影時に他者の映り込みに配慮しているか・犯罪自慢をしていないか・個人情報流出の恐れのある投稿を行っていないか

この5つの観点からSNSの調査を行い、各項目それぞれをA.B.Cなどレベル分けをして分析を行うことで、実際に起用する際のリスク予測が可能になります。

特に昨今の場合は、著名人の起用のみならず、Youtuberやインスタグラマーを起用し広告を打ち出す企業も増えているため、今後のリスクを回避、もしくは対策を立てたいのであればここの調査は必須事項です。

実際に、あるインスタグラマーの裏アカウントを発見し攻撃性の高さが確認されたり、投稿画像へ酒類の映り込みがあり当時の年齢との照らし合わせで未成年飲酒が発覚したり、友人とのやりとりで過去の勤務先が発覚したりなどの事象も起きているため、自社内で調査を行う際はこの5つの観点を意識し調査をおこなうことが重要です。

また、ここでの調査結果はあくまでも起用可否を判断するための一つの要素であり、ここで問題があったから絶対起用してはいけないということではありません。最終的には各企業の判断であり、リスクを分析し、対応策を講じることで問題発生を避けられることもケースもあります。

まとめ

今回オリンピックでのキャスティング問題を例に解説をさせていただきましたが、このように事前調査の重要性や、これらをおこなうことで防げたかもしれない事例があったということから、自社で調査をする際にはこのnoteの情報を役立てていただけますと幸いです。

また、今回のキャスティング問題では開会式直前の辞任や辞退などから、現場がバタバタしたことは容易に想像ができるかと思います。
現場や運営に混乱を招かず、時間や手間、想定外の損害を被らないためにも、何かを創り上げる際の事前調査、チェック体制の構築をおすすめいたします。

次回以降にはCMや広告などの「クリエイティブチェック」のポイントについてもご紹介していきたいと思います。
今回のキャスティングにおいても重要な部分なのですが、そのCMや広告、起用タレントは今の世の中に受け入れられるかどうか、なども調査する必要があり、そのポイントについてお伝えしてまいりますので、是非そちらもご覧になっていただけますと幸いです。

また、弊研究所では企業の広報担当者などに向けて、最新の炎上傾向を調査・分析し、お知らせしています。
月に1回炎上研究レポートの配信と、会員企業向けの炎上事例勉強会をケーススタディとして活かすことで、自社のリスク対策をより強固なものにできるかと思いますので、もしご興味をお持ちいただけた方がいらっしゃいましたら、HPのお問い合わせやフォームからお気軽にご連絡をいただけますと幸いです。

会員プラン(法人のみ)について:https://dcri-digitalcrisis.com/member/
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最後までご覧いただきありがとうございました。




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