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アウトドアルームのある家 高気密・高断熱の先へ

工事中の住宅が完成し無事引き渡し出来ました。2021年7月にお声掛け頂いたので、ほぼ2年かかりましたが、Sデザインファームとしては重要な転換点となった住宅だと思っています。色々な紆余曲折がありましたが僕らとしては「高気密・高断熱の先へ」というテーマで取り組みました。何度かブログやnoteでも書いていますが昨今の環境問題を鑑みると建築におけるエネルギー問題は益々重要になってきています。意識のある工務店のみならず低価格帯のハウスメーカーですら断熱等級6や7を目指している状況です。ここに多くの建築家が入りきれていない事への危機感とチャンスを感じています。断熱や太陽光を載せるぐらいならば、そのお金で(クライアントのお金でありますが)自分のデザインを実現したい・・・ではダメでその両方が実現するのがこれからの時代で建物を作る建築家の責務だと思います(若手建築家の皆さんに言いますが実はチャンスです)一方でこの取り組みを指導サポートしてくれる方からは「でも茨の道だよ」と言われていましたが、本当にそうだと実感しています。何が茨の道か?それは施工監理が今まで以上に重要となるからです。UA値を高めるために断熱材を厚めにして図面を書くことは簡単です。それが所定の性能を発揮する・・・これがこの取り組みが成功するかどうかの本質なのですが、それが本当に大変です。目に見えない物理現象を想像しながら、どこで何が起こるのか?それを想像しながら今までのやり方と対峙する。「鹿内さん最後は工務店作りたくなるよ」と言われましたが、なんとなく分かります。でもここまでは通常の「高気密・高断熱」だと思っており、建築家だから出来る「高気密・高断熱」を提案できるのでは?とも考えています。正直、高断熱・高気密住宅を設計していると、西日など一部の外的要因が忌み嫌う物であったり、窓を閉め切る事がエネルギー効率に繋がるなど正しい事ではありながらも、本当にこれだけで良いのかな・・・と矛盾も感じてしまう事もあります。温度や陽光の移ろいなど自然の変化も人が暮らす上で重要な要素であると考えており、ならば「暑い、寒いなど自然環境も感じる部屋」を作ってしまおうと先日引き渡した住宅では考えました。住戸の南側にはアウトドアルームと呼ばれる屋外の部屋を作っています。この空間は屋外ではありますが、室内的要素を随所に散りばめた内部のような空間となっています。構造で必要な横倒しの梁は室内から連続し、長押のような雰囲気を生み出しています。庭側上部には防火設備を兼ねたサッシがありますが、下部はサッシを設置せず開放的な構成としています。天井にはペンダント照明を吊り下げるなど、屋外と屋内が混じりあったような中途半端な状態にしています。
これらの構成要素がある事で「室内にいる」という無意識の感覚が生み出され、屋外ではありますがホッとするような気持ちになります。このホッとする気持ちがアウトドアルームでの滞在時間の長さに繋がると考えています。
長く滞在すればするほど、普段生活していた時には気が付かなかった自然が見せる「心おどるような瞬間」に出会えると思います。それは高断熱・高気密とは異なる視点で「自然の尊さ、環境の持続性」を住み手が考える事につながると思います。子供や孫の世代にきちんとした地球環境を残せるか?デザイナーが考える重要な責務だと思います。

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