Cat in the Flow
雨の日だった。彼がそのぐしょ濡れた段ボールを見つけたのは、うらぶれた地下鉄駅の階段をのぼってすぐの、ぼうぼうの灌木の下だった。傘をさすと強い風に煽られて留め具がばたばた鳴った。冷たい雨と混ざった風が彼の長い前髪を凶暴に濡らした。
その段ボールは微かに鳴いていた。いや、鳴いていたというのは多少恣意的な捉え方かもしれない。その段ボールからは何かが軋んだような微かな音が、キシキシと途切れ途切れに聞こえていた。彼は傘の柄を肩と首の間に引っ掛けると、そのぐしょ濡れのカタマリを持ち上