ぼくのサナトリウム(未完)
1.
ラキはいつも友達と居る。ラキの席は窓際の一番前で、彼女はそこで友達の金髪を弄っている。その子の髪は何度もブリーチされていて、化学繊維でできたカーペットみたいにガサガサして見える。金髪の女の子とラキの間の机の上には、化学の教科書とノートが開かれている。小さな丸い文字で書かれた化学式。シンプルで見やすいノート。色ペンは2色だけ。
俺の友達が俺の机に向かって来る。
「なあ、数学のテストどうだった?俺一問やらかしちゃったんだよ、分かってたのになぁ。」
顔も向けずにバカだなと答え、俺は横目でラキの姿を追い続ける。彼女はどこか動物のように、友達とじゃれあっている。ラキの髪は黒くてつるつるした髪は、プラスチックの作りものみたいに見える。
「やっぱり計算ミスって無くならないよな。やっぱりちっちゃい頃くもんにでも行っとけばよかったかな」
俺の友達はいつもこんな調子で話をする。こいつを見ていると「均質」という言葉が思い浮かぶ。育ちがいいなと思う。この学校の人間はみんな育ちが良い。
俺は化学のノートをパラパラとめくる。ギリギリ読める程度に崩して書かれた、化学式が並ぶノート。俺は前の授業で習ったその式の意味を一つずつ思い出す。化学もだんだん難しくなってた、とクラスメイトは言う。俺は別にそうは思わない。
最後の化学式のイオンの個数を検証していた時に、教室の扉の側まで歩いてきたラキに声をかけられた。
「数学、どうだった?私全然できなかったよ、三角関数苦手だなあ」
俺はそこそこできたよ、と答える。俺がラキと会話するのはテストの後くらいだ。どういうわけか、ラキとはいつも目を合わせられない。
「そこそこって何?勉強得意でしょう?」
「まあ、結構できたよ」
僕の返事を聞いて、ラキは笑う。なんでも知ってるんだからね、とでも言いたげな笑い方だ。その笑顔を見て、嘘だ、と思う。やっぱりあいつはどうしようもない馬鹿なんだと心の中で呟いてみる。ダメだな。
ラキは癖のない黒髪を揺らして、教室から出て行った。ゆれるプラスチック。嘘をついているように反射される、光。
ラキの居なくなった教室は嘘で満ちているように見える。みんな、何の話をしているのだろう。俺はずっと彼らの口から出るものに名前をつけようと奮闘しているのだが、上手い言い回しが見つからない。弁証法ではない何か、敵意がないと言う意思表示、知性の野生的な運用、ガラクタの交換、ことば遊び…。もっとも、俺も友達とじゃれ合うのは好きだった。ただ今は、嘘に加担したい気分ではない。
俺はリュックのポケットを開けて、茶色い薬の小瓶を取り出す。ズボンのポケットにそれを突っ込み、トイレに向かう。ラキの背中を追い越さないように、ゆっくりと歩く。本当はトイレの個室になんて入るところは見られたくはないのだが、奥の個室に入って鍵を閉める。
便座には座らず、白い小さい錠剤を適当に手のひらに出して唾で飲み込む。この薬は、小さいのが気に入っている。喉を通過した瞬間に吐き気を催すが、そんなに早く作用する筈は無いので、ただの錯覚だ。俺の身体はすぐに吐き出せと訴えている。しかし俺はその警告を無視して、一回流水ボタンを押してから個室を出た。
I.
今日も寒いわねえ、と言いながら日立さんが部屋に入ってくる。盆には醤油を垂らした粥と、茹でたほうれん草が載っている。
「調子はどう?一から十で言うと?」
「三ですね」
あらそう、やっぱりこの季節はね、と言って、彼女は僕の隣のベッドのシーツを治す。
「先崎さんは9時くらいに来る予定だから。仲良くね」
僕は軽く頷く。日立さんはじゃあねと言ってバタバタと出て行った。僕はぼんやりした頭でバタンと閉められた扉を見つめた。扉や壁はくすんだ緑色している。やさしい毒みたいな色だ。僕は、どれだけの時間この色を見つめてきたのだろうか。既にこの色は僕の身体の一部になってしまったのではないかとさえ思う。
先崎さんという人がこのサナトリウムに入ってくると知ったのは先週のことだ。病が慢性期に入り、ここに来ることになったらしい。特に歳や性別は聞かされていない。
何かを食べる気はしなかったが、無理やり粥を一口啜った。日立さんに何かを言われるのが怖かったからだ。
ここ最近、あまり食事に手をつけていない。殆ど減らない膳を片付ける時、日立さんは悲しむような、ちょっと責めるような眼をする。日立さんにその眼をされると、僕は胸が苦しくなる。
時計は9時5分を回った。まだ日立さんも、先崎さんらしき人も現れない。僕はふと、この時計は正確なのかと不安になった。もしこの時計が早かったり遅れたりしていたら、それは僕にとっては一大事だ。僕は、この掛時計の他に時計を持っていないのだ。一定に流れる時間は、外界と僕を繋ぐもの唯一のものである。時間が流れる方向は一定で、僕たちはそれに向かって一緒に進んでいると思っていた。僕は掛時計を見つめる。秒針はカチカチと秒を写しとっている。僕の信念の上では。今まで僕が過ごしていた時間は間違っていたのだろうか。僕は時間にさえ外界と分断され、閉じ込められていたというのか。
失礼します、と朗らかな声が聞こえ、日立さんが現れた。9時12分。日立さんの背中に隠れるように、初老の男性が立っている。
「この方が先崎さんです。今日からよろしくね」
先崎さんはゆっくりと頭を下げた。白髪混じりの短髪。病衣はきっちりと着られている。腰の横には、律儀なリボン結びが作られている。
「これからお世話になります、先崎です。よろしくお願いします」
はっきりとした声で言った後、もう一度深くお辞儀をした。よく目が合う。濁った黄色い眼をしている。僕もこんな眼をしているのだろうか。
先崎さんは、ここに来てから殆どの時間、窓の外を眺めていた。このサナトリウムは白樺の森に囲まれている。もっとも、窓際のベッドは僕のものだから、先崎さんの視線はいったん僕を通過して窓に到達する。それがなにかと落ち着かなくて、僕も釣られて白い白樺の枝を見やる。白樺は、いつでも雪に紛れてしんと立っている。まるで、世界の何にも興味がないといったふうに。
来る日も来る日も、先崎さんはお腹に手を載せて、白樺を眺めていた。先崎さんは左腕に腕時計をしていた。茶色い布のバンドに、クリーム色の文字盤。耳を澄ますと秒針を打つ音が聞こえる。僕はその時計の示す時刻が掛時計とぴったり合っているのかを確認したかった。なんとなく、先崎さんの時間と、僕の時間が少しもずれていなければいいなと思った
2.
目の前に腎臓がある。くすんだ赤茶色の塊にピンク色の縮れた管がへばりついている。時計の針は授業開始の45分を回ったが、チャイムは鳴らない。この学校に正確な時間を刻む時計はいくつあるのだろうか。
俺は暴力的な眠気に襲われている。あの薬はすぐに回る。瞼は組織の内側に鉛が仕込んであるかのように重く、体の末端の動きが異常に不自由に感じる。腕は重く、手ぶれ補正がかかっているペン先の動きのように、一定の速度より早く動かない。何やらじっとりとしていて重たいものが後頭部にのしかかっているように感じるが、身体の重さに反して頭の動きは嫌に明瞭だった。俺の脳みそは重い肉体に包まれている。その脳みそは、さらにもっと重要で本質的な何かを包んでいる。それらは完全に分離している。手を動かすたびに、細胞たちは自らは代替可能な殻であるとおずおずと理解する。魂と乗り物が分断されたようで少し清々しい気分だ。
チャイムが鳴る。約3分遅れ。先生がプリントを埋めてくださいねと言う。五つの空欄の横の、半割の腎臓といくつかの管が書かれた図には見覚えがある。おそらく前回習ったものなのだろうが、なぜだか書いてある内容が全く読み取れなかった。「の」とか「る」とか「脈」とか、文字が書いてあることは分かる。しかし、それらが示している意味を全く思い出せない。どうやら俺は文章を認識する能力を失っているらしい。一つ一つの文字に振られた意味が入った引き出しは、鍵がかかっていて開かない。文字は紙上のインクの染みとして視神経から中枢までを通り抜ける。冷や汗が流れる。まるで開かない扉を内側から爪で引っ掻き続ける獣のように、俺の眼は文字の形をなぞり続けている。俺は叫び声を上げそうになる。何かの衝動のようなものが喉元までせりあがってきて、それで俺は自分が動物であることに気がつく。
生物教室内の中にはシャープペンが動く音だけが響き渡っている。全身の穴から液体が出てくる妄想が、さっきから頭の端で再生されている。俺は、読めないプリントから目を逸らすために首を少し上に動かした(この動作にすら努力が必要だった)。生物教室は意外なほど静かだった。みんな静かにプリントに向かっている。ぼんやりと宙に視線を動かしている内に先生と目が合ってしまい、すぐに机に向き直った。異常に重い指先を動かして何か記入しようと試みたが、自分はそもそも文字をぜんぶ忘れてしまっているのだ。まともなことが書けるはずがない。
卓上には、様々な道具が入った銀色のトレーがある。ハサミ、黄色の棒、包丁、洗濯バサミ。全ては意味ありげに俺を見ている。俺はそれらと目が合って俯く。しかし、俯いた先でも記入し損ねたプリントとも目が合って、視線の行き場は失われる。
先生が腎臓を解体し始める。彼は草臥れた白衣を着ている。横から包丁を入れて、魚をおろすみたいに切り開く。血液は出ない。内部の構造体は白く枝のように分かれていた。ああいう構造はどこにでもある。なんというか、正しい構造だ。俺はきれいだ、と口に出したかった。
みんなが腎臓について話している。笑い声も聞こえる。俺の友達はこういう場面でくだらない冗談を言うのが好きだ。自分を大きく見せるための、どこか本能めいた、強張った明るい笑い声。
みんなが白い枝の中に黄色い棒を差し込む。俺はそれが我慢できなかった。白い枝が破壊されるのが怖かった。俺は腎臓から眼を逸らさない。あの美しいカタマリ。動物の血肉、生まれたばかりの細胞、千年生きた大樹。イメージが頭蓋の内側に注ぎ込まれてゆく。俺はそれに抵抗しない。
不意に、あの腎臓は俺のものなんじゃないかという気になってくる。そうでなければ、彼らが俺にあれを見せる意味なんでどこにあるのだろうか。人間は、腎臓は一つでも生きていけると聞いたことがある。きっとあの腎臓は俺のものなんだ。
いつのまにか心臓の鼓動が速くなっている。右の腰のあたりが疼く。残された方の腎臓が熱を持っている。
みんなの声が聞こえる。俺の頭は、ああみんなの声が聞こえるなあ、と、そんな馬鹿みたいなことを呟いている。俺が書き言葉を奪われて久しぶりにそれを発見したように、あいつらも早く自分の血肉を発見できればいいのになと思う。あっちの卓の腎臓は誰のものなんだろう。
腎臓の疼きが全身に波及していく。衝動(のようなもの)はさらに強さを増して渦となり、俺の身体を支配する。俺は喉元までせり上がった衝動を吐き出そうとして大きく息を吸い込んだ。腹に熱が集まり、その瞬間に胃が変に痙攣するのが分かった。胃や食道が震え、衝動は遂に俺の身体を出ようとしている。それに俺は少しの安堵を覚える。
自分から吹き出した液体がびちゃびちゃと音を立ている。俺の周りに居たクラスメイトは悲鳴を上げた。
視界の端にラキが映る。他のクラスメイトと同じように彼女は俺をじっと見ている。その顔からは何の感情も読み取れない。俺はそんなラキを見て、吐きそうだな、と思う。それで俺は初めて自分が嘔吐していたことに気がつく。衝動に指を絡める。悲鳴。いやだなぁ、と呟いて(きっとそれは声になっていなかった)、俺は眼を閉じた。
||.
先崎さんはさっきからぼんやりと宙を見つめている。白樺を見つめるのは辞めたらしい。彼の視線の先には緑色の壁があるが、彼の眼はおそらくその濁った緑色を認識していないのだろう。濁った眼にはおそらくこの世のものではない何かが映っている。僕は知っている。
先崎さんが不意に僕の方を向く。宙を彷徨っていた視線の照準が、突然僕のふたつの眼に合わせられる。こんなふうに突然、病人が幻想から現実に落下する瞬間を僕は知っていた。彼ははっきりと僕の目を見ている。
「こんな森の奥に人を閉じ込めて、狂っているとは思いませんか」
明瞭な口ぶりだ。眼球にははっきりと僕が写っている。
「だから私は、明日、ここから出て行くんです。前の施設は両親が死んだので出て行くことになりましたが、その後すぐに兄は私をここに閉じ込めました。私は23歳からずっと、病院や施設で暮らしているんです。狂っているとは思いませんか?だから私は、明日ここから出て行くんです。兄は私を役立たずの動物だと思っているんです。だから私、明日ここから出て行くんです」
彼の口調はどこまでも平坦だ。僕は、狂っているのは僕たち自身なんだから仕方がないじゃないかと思うが、何も言わないことにした。彼は均質な喋り方をする。きっと僕も、こんな喋り方をしているのだろう。
「ここはほんとうに森の奥にあるけれども、施錠はほかの施設よりも緩いんです。この建物を出て仕舞えば、あとは大丈夫です。私は勘がいいんです。あなたも一緒に来ませんか?」
朝起きると、隣のベッドは空になっていた。ベッドは先崎さんが来る前の時のように、きっちりと整えられている。僕は先崎さんの病衣の腰の横の、神経質なリボン結びを思い出した。
6時50分。きっと間も無く日立さんが来る。施設に気づかれれば、すぐに捜索が始まるだろう。そうなれば、先崎さんは職員か警察にあっけなく保護されてしまう。いや、もしかしたらその前に遭難しているかもしれない。あまり遠くに行っていないといいけれど、と思う。
7時00分。日立さんが扉を開けて入ってきた。彼女は空のベッドを見てハッとする。
「先崎さんは!?」
僕は、知らないです、と答える。朝起きたらこうだったんです、どうしたんでしょうね、と。
数秒の沈黙。僕の声はやっぱり先崎さんの声に似ている気がする。
日立さんは何も言わずに出て行った。こういうことには慣れているのか、あまり取り乱している様子はない。それとも日立さんが冷静すぎるだけなのか。
僕はふと、先崎さんに時計を見せて貰っていないことに気がついた。先崎さんの時計と掛時計の時計の時間はきちんと合っていたのだろうか。僕は、先崎さんと僕の間に存在しているかもしれない、時間についての致命的な断層のことを考える。僕らはそこに滑落していく。かつて正気の世界から滑落し、ここに流れ着いたように。
3.
俺は保健室のベッドで目を覚ました。全身が汗でびっしょりと濡れている。
幸いあの薬は俺の胃の中で全て溶けてしまっていたらしい。吐瀉物に錠剤は混ざっていなかった。
保健室のベッドは薄いピンク色のカーテンに囲まれている。保健室の匂いがする。ぬるくて、俺たちが猿だった頃から知っているような匂い。母親の胎内はきっとこんな匂いがするんだろうな、と思う。
少しして、薄いピンク色のカーテンが開けられた。
「目が覚めた?気分はどう?」
養護教諭の先生が俺を覗き込んでいる。俺はまぁまぁです、と答える。
「解剖で気持ち悪くなっちゃったのかな?すぐに先生に言って良かったのに」
すみません、と言う。
「お家の人に迎えに来てもらう?電話しても良い?」
「こういうことは中学生の頃にもあったんです。だから大丈夫です。一人で帰れます」
親に電話なんかされたら、面倒なことになる。今日は少しやりすぎた。
本当に大丈夫?と何度も念を押す先生とは目を合わせずに、俺は手を閉じたり開いたりしてみる。まだ多少のラグを感じるが、なんとか身体を動かすことはできそうだ。
先生からリュックを受け取り、俺は学校を出た。空はいつのまにか薄らピンクに染まっている。そういえば、時間を確認するのを忘れていた。あれから何時間経ったのだろう。
いつもの道を通って駅へ向かう。車通りの少ない道路を選んで、そのまんなかを歩く。手足が重い。
空を見上げると、淡い夕方の青に、ピンク色の雲がぽつぽつと浮かんでいる。手足が重いなあと思う。歩道の脇には濡れてぐちゃぐちゃになった落ち葉が溜まっている。俺はラキのことを思い出す。吐瀉物にまみれた俺を見つめていた、あの目のことを思い出す。
地下鉄のホームは閑散としている。まだ会社帰りのサラリーマンたちの姿はなく、草臥れたジャンパーを着た老人が一人立っていた。彼の頭はほとんど禿げ上がり、頭頂に僅かに残っている白髪は、蒼白な光に照らされている。彼の灰いろの目は、歯医者の広告をぼんやりと映している。俺は虚を突かれたような気持ちになる。ああ、俺はその老人に自分の未来を見ているのだろう。
電車が温い風を運んでホームに到着する。俺は、老人と同じ車両に乗り込んだ。
|||.
窓が開いている。さっき日立さんが換気のために開けたのだ。僕の部屋は2階で、窓の外では薄暗い夕方の空気に白樺の幹がぼんやりと浮かび上がって見える。
僕は窓の下までベッドを押す。もう何年もベッドの上で生活してきた身体は、思うように動かない。ベッドをほんの数十センチ移動させるという、ただそれだけのことに全身の筋肉が悲鳴を上げている。
僕は窓枠に爪先をかける。スチールの窓枠はひんやりと冷たい。
両足をかけた瞬間、冷たい空気が全身に吹き付けてきた。その諭すような冷たさは、僕の中の何かを呼び起こそうとしている。ずっと前に失った何かを。僕は十数年かけてあらゆるものを失い続けてきたのだ。冷たさに呼応するように、膨大な幻肢痛が皮膚の内側を這い回っている。失ったものが惜しいだなんて思ったのは、いつぶりだろうか。
僕は思い切って身を乗り出す。先崎さんの腕時計と僕の掛時計は、きっと1秒たりともずれていないのだろうと確信する。落下とともに頬に冷たい風が吹き付ける。幻肢痛はより強くなり、首を絞められるような悲しみが(それは痛みではなく悲しみだった)襲ってくる。僕は何が悲しいのだろうか。
数分とも数秒ともとれる悲しい風を浴びた後、僕は雪に叩きつけられる。全身は鈍く痛み、雪は暴力的に冷たい。しかし、冷たさや痛みは不思議と不快ではなく、僕の身体はそれを一種の感覚としてしか認識しなかった。
僕は雪に手をついて起き上がる。病衣の結び目は解けているが、直さない。夕方の白樺の森は、長く生きた深海魚のように老成して見える。
僕はぽつぽつと立っている街灯を頼りに、先崎さんの足跡を探した。
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