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観劇記録 ゆうめい「あかあか」2022.5.31、6.1

今回は、先日観劇した、ゆうめいの「あかあか」について記す。

あらすじとセリフを一部引用するが、セリフの出典は劇場で販売されていた、ゆうめい「あかあか」上演台本(合同会社ゆうめい発行)、あらすじは公式サイトの記述からである。また、ネタバレを一部含むので、三重で観る予定の方は注意されたい。

まず、私とゆうめいの出会いについて記す。名前自体は、割と前から、ハッキリは覚えていないが、数年前から知っていた。少なくとも「姿」の初演の時には知っていた。この時は、根本宗子の「墓場、女子高生」(←山中さん出てたね)と時期が被ってたので、ノーマークだった。初めて観たのは、昨年の「姿」の再演(芸劇シアターイースト)。森谷ふみさんと山中志歩さんの両名が出演されるということで、楽しみにしていた。2回観劇していて、1回目は、映画や演劇の衣装をやっている女性(←森谷さんは誰だかわかる)。2回目は、当時大学生の女性。2人とも、凝った舞台美術や優れた戯曲、役者の好演に感心していた。

昨年末の「娘」(下北のスズナリ)も同じメンバーと観劇した。こちらもスズナリの構造を上手く利用していて、衣装やってる女性は特に興味深く観ていたようだ。

出会いはこの辺にして、私の今まで(2本観た時点)の「ゆうめい」評なのだが「一見、特定の家族のミクロな話を描いているようなのだが、巧妙に隠されてはいるものの、実際はマクロな視点でも描かれており、誰でも共感し得る普遍性を得ている」というものであった。今回、「あかあか」を観劇してどの様にその評が変わったかも記す。

まず、あらすじから。
池田靖、池田亮父子は、持て余した池田一末氏(靖の父、亮の祖父)の遺品を整理する中で、一末氏の作品が一度だけイスラエルで売れた記録に突き当たる。
絵画の行方とその意味を探り、死から生、繋ぐことの意義などに向き合った作品。

キャストは

五島ケンノ介(池田靖)
池田 亮
田中祐希
深井順子(FUKAIPRODUCE羽衣)
北村まりこ(柿喰う客)
佐野 剛(江古田のガールズ)
黒澤多生(青年団)
山中志歩(青年団)
古賀友樹

である。私は、江古田のガールズのファンでもある(元団員の増岡裕子氏とご縁があり、観るようになった)ので、佐野氏の出演はかなり好意的に受け止めた。また、北村まりこ氏も、観たことはなかったが、評判の良い役者であるので、期待していた。

ここからは感想。まず、前二作に比べて、より私的な内容であった。「姿」も「娘」も、私的な内容をベースにしつつ、どの家族にもあるものを含んでいたが「あかあか」はあまりその面を感じなかった。その分、池田家が中身濃く描かれていた。また、前二作は女性達(母系)に主眼が置かれていたが、今回は男性(父系)に主眼が置かれていて、違いを興味深く観ていた。あと、「あかあか」というタイトルが実に巧妙であると感じた。池田一末氏の作品に多く用いられた「赤」、「紅」。別名を意味する「a.k.a」。個人を送る儀式の一部である湯灌の儀で身を清める際に落とす「垢」。そして、劇中での言及や上演台本の解説にも記載はないが、革命を指向した共産主義者である「赤軍」の「アカ」。色んなものにかかっていて、池田亮氏の戯曲の巧みさを感じた。ちなみに私は「山中志歩推し」なので気付いたが、そうでない人はヤバい姉ちゃんとしか感じずに、赤軍=アカはスルーしかねないなとも思った。「アカ」という共産主義者の蔑称にかけたのは、「裏設定なのかもしれない」とも感じた。面白い姉ちゃんといえば、北村まりこ氏の好演も光った。あまり出番はなかったのだが、五場でのエウリアン(ギャラリーに連れ込み、絵を強引に販売してくる女性)の演技は見事であった。「おー、ボーイズ!何してる〜?」から始まり、台本にはない某アニメからの引用(5/31のソワレと6/1のマチネでは、内容が違ったのも良い)や、台本よりも強烈なセリフ(「ガキ」→「キモガキ」)の置き換えなど、一気にファンになった感ある。「柿喰う客」の公演も観に行きたい。あと、これも言及しなければならないのは、五島ケンノ介a.k.a池田靖氏だろう。演技自体が、格段に安定してきているし、本人の言葉なのか池田亮氏が書いたセリフなのか、敢えてハッキリしない、諸々の言葉に心打たれた。あ、山中さんね、挙動不審からの爆発、今回も面白かった。

最後に。2つ述べる。まず、私は父親を数年前に失っている。なので、池田父子の共演(バズりネタも加味すると競演とも言えるか)は、いつも羨ましく観ている。特に今回は感じ入るものが多かった。これからの共演にも期待したい。次に絵の話を少し。私は高校の頃、美術部であった。と言っても、観るのは大好きだが、描く方はまるでセンスがない。なので、専ら鑑賞してはレポートを出すという活動をしていた。そんな中で、校舎が建て替わり、新校舎への引っ越しが決まった。引越しの支度をする中で、顧問でもある美術の非常勤講師の先生が、一部の絵(過去の生徒や部員の作品)を処分する際に興味深いことを述べていたのを思い出した。「絵はね。描いた人の魂が込められている。処分するにも、譲るにも、絵に最大限敬意を払わないといけない。」と。五島ケンノ介a.k.a池田靖氏は、本人の言葉として、終盤に「絵を捨てる時に考えます。父は、母や私を恨まないだろうか。価値が理解できない私に落胆するのではないか。理解できる子に育って育ってもらいたかったのではないか。」という。一末氏と同じ美術の教員だった靖氏は、父への敬意、今も作品の中に「あかあか」と輝く父の魂への敬意から、普通の人よりも尚更悩んでいるに違いない、と私は感じた。

面白かったです。ゆうめいと私を繋げてくれた、森谷ふみさん、山中志歩さんへ、改めて感謝の気持ちを持ちながら、「あかあか」の観劇記録を終えたいと思う。

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