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【創作詩】来たるべき死の為に

アルバムが戸棚の奥に
開かれもせず眠る日が
どれほど満ちていた事か

あの人がくれた些細なメモや
母が名前を入れたノートを
捨てられるようになった日に
私は“こども”を辞めました

夜を目指して静まる空に
月を追いかけ続ける星に
液晶の前で溺れる闇に
何も成せずに迎える朝に

見知った影が西日に揺れる
古びたポットを火にかけながら
私好みの味を知ってる
見知った影が西日を揺らす
暗いバルコニーで船を漕ぐ
私の ゆめの 隙間で

憎しみとは、忘れた頃に
善人の顔で迎えにくると
短い家路で貴方は言った

年明けに降る刹那の白や
音だけ届く大輪の光に
心踊らなくなることを
“大人になる”と呼びました

空を見上げて迎える夜に
星を隠して輝く月に
闇を切り裂く液晶の光に
朝に成れずに閉じた瞼に

1カートンで時間を買って
少ない貴方の口を塞いで
私、好みの味を知ってる
見慣れた部屋に紫煙が揺れる
暗いバルコニーの背が示す
私のゆめの 終わりを

鞄の中に合鍵が一つ余分に増えた

確かにこの部屋に
あるはずだったのに

見つけられないの

幸せとライターオイル

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