叫びたい頭と叫べない心 1
僕は子供の頃から、唐突に体の一部や空間が異様に大きくなったり小さくなったりすることが多々あった。
『そいつ』はいつ起こるか分からない。寝ている時や遊んでいる時、何かものを持っている時。それは突然僕に襲いかかってくる。
「あ、来たな」
と、思ったら最後。自分の意思では全くどうすることも出来ない。あとは、もう『そいつ』が立ち去ってくれるのを待つしかない。
幼い頃に、初めて起こった時は何が何だか分からなかった。
目が覚めると目の前に天井があることもあった。それはまた違うのだろうが、そのような経験を幼い頃からしていた。
辛くはない。体が痛むことはない。ただ、いつ起こるか分からない『そいつ』に幼心ながら恐怖心を持っていたのは記憶に残っている。
そして『そいつ』は、大きくなった今でも、回数こそ減ったがまだある。
恐怖心は無くなった。でもその代わりに『そいつ』は
「いつまでこれは僕について回るのだろう」
という、不安を置いていった。
嫌なやつだ。いつまでも陰から僕のことを狙っている。
この前本当に久しぶりにカラオケに行った。
楽しく歌っていると、
「あ……あぁ」
マイクを持つ手が小さくなっていく。
すかさず逆の手で落ちそうになるマイクをカバーする。
『そいつ』は僕の気分を気にしない。
落ち込んでいる時も、悲しい時も僕がどんな状況でも、虎視眈々と隙を狙ってくる。本当に厄介なやつだ。
僕は『そいつ』の事を人に言えなかった。
意味のわからない事を言う変なやつと思われたくなかったらだ。
そして、自分しか分からないものなので、説明が出来なかった。
幼い頃は後者が理由だったが、大きくなると前者が凄く嫌だった。
少し前まで言いたいけど言い出せなかった。
でも今は少しずつこの症状の話を人にも言えるようになったし、
ネットが普及し簡単に調べ物や世間の反応を見れる世の中になり、この症状が珍しいものではないことが分かり安心した。
だから少しだけだが、経験を徐々に人に言えるようになった。
これを書いているのもその1つだ。
何か記録に残したらいいのではないかと思い、書いている。
少しでも自分に役に立てばいいと思い、書いている。
それがどんな結果になろうが
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