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【創作】春先、寒い夜。

もうだめだと、ベンチに座り
空を仰いだ私の目に突き刺さったのは、
こぼれ落ちてくる満天の煌めく星屑たちだった。
力なく見上げる空を覆いつくすそいつらは
まだ希望がある、そう囁く

深夜、終電。
1日の終わりの1番長い電車は4両編成。
寂れた駅にいるのは、
仄暗い唯一の光に誘引された虫と
疲労感と虚無を抱きしめた私くらいだ。

肺に冷ややかな空気が蔓延する。


「気持ち悪い」
恨めしく輝く散りばめられた光に吐き捨て
無人駅のホーム黄色い線の外側から
線路に向けて





憎悪を吐き出すかのようにゲロった。

つんとするアルコールを薄っすら口に残し
広がるゲロの味にもう酒に頼るのはやめる
そう誓い最後のゲロを吐いた。

ゲロの味につられて止まらない嗚咽に
うっすら涙を浮かべながら
塵が少なく綺麗に光る夜空より、
乱視と警笛をぐわんぐわんと鳴らす私の
眼球でみる夜空の方が断然綺麗だと
三重に見える自販機を眺めながら

思った。

帰りしなにあるコンビニで
酒の肴をかって帰ろう。

ベンチの背をポンポンと叩き
駅を後にした。


「右足をアルコールに突っ込んだ私」


※この話はフィクションです。
外でのゲロはやめましょう。

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