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ひと目で興味を引くような上手いタイトルが思いつかない超短編集 その1

ハロー、ワールド

 ハロー、ワールド。
 お天道様が顔を出し鳥たちが歌いだすと同時に俺は布団を出る。そして世界に向かって挨拶をする。
 え? 今は朝だって? そんなことぐらい、俺でも知っているさ。
 俺が朝でも夜でもハローを使うのは理由があるんだ。そうだな、暇なら聞いてってくれ。
 ある日、俺は古のインターネットの海を泳ぎ、データの断片をサルベージしていたんだ。すると、古の先人達によって作られたであろう碑文を見つけたんだ。俺は興奮を抑えつけながらそれを読んだ。
 そこにはただ一言、こう書かれていたんだ。"Hello,world”と。
 つまり、世界に挨拶をしていたのさ。昔はこの世界は緑が溢れて綺麗だったしい。そんな世界に敬意を表していたんだろう。
 だから俺は、世界に敬意を持っていた先人達に敬意を示すため、今日も「ハロー、ワールド」から始めるのさ。

お米太郎の夢

 お米太郎は無洗米ながら、ふっくらとしてツヤツヤに炊かれて美味しく頂かれたいと思っていた。
 しかし、彼が入った袋を買ったのはズボラな人間だった。
 お米太郎は願った。せめて、水加減だけはきっちりしてくれと。
 その願いが通じたのか、珍しく人間は水の分量をしっかりと図った。
 炊飯器に入っていたお米太郎は嬉しさのあまり、炊かれる前から立ち上がった。隣りにいた先輩がお米太郎をいさめた。お米太郎はごめんなさいと謝ると、期待に胸を膨らませつつ、おとなしく下の方へ潜っていった。
 炊飯器の電源が入った。
 お米太郎は暗くて熱い炊飯器の中、段々と身体が水を吸って大きくなっていくのを感じた。
 1時間ほどそれが続いた後、ピーピーと大きな音がして炊飯器が止まった。
 蓋が開いた。お米太郎は、眩しさで眩む目をなんとか開けて、周りに視線を向けた。するとそこにはふっくらとしてツヤツヤに炊かれたお米たちがいた。
 やったのだ。お米太郎は、熱望していたとおり、ふっくらツヤツヤに炊き上げられたのだ。
 後は食べられるだけだ。お米太郎は待った。
 巨大なしゃもじが振るわれ、徐々に減っていく炊飯器内のお米。内釜の隅で小さくなりながらお米太郎は待った。
 そしてとうとう、お米太郎がしゃもじにすくわれる番……は来なかった。
 炊きたての白米を茶碗によそい終わった人間は、まだ節々にお米がこびりついている――唖然としているお米太郎も隅にへばりついたままだ――内釜を流しに置き、中に水を溜めた。
 お米太郎は確かにふっくらつやつやに炊けた。しかし、食べられることはない。お米太郎は泣いた。涙は内釜内に溜まっていく水と混ざって消えた。

目玉焼きの歌

 フライパンに油を引いて、強火で熱して温める。
 油がジュクジュク歌いだしたらいい頃合い。
 ホットなステージの上にゆっくりと卵を割り落とす。その精密さはまさにゴルゴ13。
 ジュワァ。
 熱に浮かされ卵は踊る。いや、踊らない。どしっと地に足つけて構えてる。
 裏面に焼きあとが付いてきたら中火にチェンジ。
 蒸し焼きにするかそのままじっくり焼くか。
 今日は時間に余裕があるし、じっくり焼くことにしよう。
 だんだん固くなる白身を見ながらシンキング。コメかトースト。難問関門。
 普段はご飯に味噌汁それに漬物。焼き魚があれば文句なしだけれど、グリルはないのさ悲しみさ。
 よし、決めた。トーストだ。そうすると味噌汁ではなくてポタージュスープがいいだろう。
 食パンは6枚切り。オーブントースターに入れてチン。
 半熟と完熟の境まで焼き上がった目玉焼きをトーストに慎重に乗せる。ここで失敗しては全てが水の泡。
 ゆっくりゆっくり。緊張しつつも、しっかりとクリア。
 そして全体にパラパラと塩コショウをふりかけてご賞味あれ。食べるのは自分なんですけどね。
 おっと、忘れてはいけない、黄身に穴を開けて醤油をポタポタポタ。完成! 勝った! これが必勝黄金パターンだ!
 ということで、今日のお昼は目玉焼きトーストとポタージュスープ。食後にコーシーを飲んで終わり。ごちそうさまでした。

あとがき
 ふと、はるか昔に読んだ"クリック~佐藤雅彦超短編集"を思い出したので、自分でも超短編を書いてみました。
 こういう散文も書いてて楽しいですね。何かを思いついたらとりあえず書いていって、3つ4つ溜まったら投稿していこうかなと思います。
 あとExcelでうまく絵を書くすべも並行して学んでいこうかなと。
 最後まで読んでくださってありがとうございました。

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